ますます酷くなるトランプの「裸の王様」化
カーニーに具体的な構想がある訳ではないだろうが、上記の国名に下線を付したのは、BRICSの加盟国もしくはパートナー国の8カ国。また太字にしたのは、G20のG7以外の10カ国で、すでにミドルパワーが共同して米国の狂乱粗暴行為による被害を防ぎ、米国抜きでも国際社会の運営を協議する場はあちこちに生まれている。
他方トランプは「裸の王様」ぶりをますます亢進させ、ガザの完全停戦と戦後復興を取り仕切る「平和協議会」を作り自ら「拒否権を持つ永世議長」に収まって、加盟希望国は10億ドルの拠出金を持って来るよう要求した。
この趣旨のよく分からない団体に馳せ参じる国は少なく、今のところイスラエルと中東及び周辺のイスラム国8カ国のほかハンガリー、ベラルーシ、インドネシアなどに留まり、欧州諸国は様子見をしている。
カナダのシャンパーニュ財務相は「万が一、カナダが参加するとしても、1つだけ確かなのは、カナダは10億ドルを支払わないということだ」」と述べた。
結局これは、米国の覇権が崩壊した後、国連はじめどこの国際機関でも米国の思うがままに振る舞える場がなくなったため、自分で勝手に自由になる団体をデッチ上げてお山の大将になり、そこだけはまだ米国の「ミニ覇権」が通用する遊び場にしようということなのだろう。
こうして世界は、崩れゆく米国覇権の残骸が飛び散って来るのを避けながら、カーニーの言うような米国抜きのミドルパワーのフラットな連合による問題解決の仕組みを作り上げていくのだろう。そのようにして、戦後80年の世界を貫いてきた「覇権主義」と「多国間主義」との原理的な抗争は後者の勝利となる最終局面へと向かっていくのである。
トランプの横でピョンピョンの日本の首相
世界の潮流はそういうことになっていて、日本もこれまでの惰性のままに壊れゆく米国覇権を永遠のものであるかに幻覚しながらそれにしがみついておめおめと生きていくのか、それとも毅然として対米自主を実行して真の独立国家としてアジアと世界の信用を回復し、いずれGDPで世界6位から12位程度に落ちていくまさに中堅国家として独自の生き方を見せていくのか、その大きな選択が問われている。
しかしその時に高市早苗首相は、10月のトランプ来日の際にトランプと共に横須賀基地の米空母を訪れ、トランプの横でピョンピョン飛び上がりながら満面の笑顔で手を振って兵士たちの拍手を浴びた。
属国の支配人代理といった卑しさ丸出しのそんな姿を晒しておいて、今度はいきなり解散で、「私が総理でいいのか皆様に決めていただく」と言うのだから、彼女にとっての選択は米国の覇権主義と共に心中していく道しかないと決めているのだろう。
そうかと言って「中道改革連合」も対米従属では同じで、15年安保法制は違憲でない、辺野古基地建設も推進、という具合に右へ右へと流れていくから、結局、日本には自立した中堅国家としての生き方の選択肢を示し、カーニーの呼びかけに応えて新しい世界秩序づくりに参画していこうとする政治勢力は存在しないということになるだろう。
現今の最も大事な戦略的選択問題が話題にもならず、消費税の下げ方・なくし方を各党が競っているような選挙では、この国は衰えるばかりである。
そうならない手立てはないのか。それを考える素材としてカーニー演説全文を以下に掲げる――(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年1月26日号より一部抜粋・文中敬称略。「カーニー演説全文」を含む続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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