高市早苗はなぜ「圧勝」できたのか?厳寒の衆院選が示した“有権者の本音”

 

総選挙の裏で動いていた「高市トレード」という大変な事態

以降は、この巨大な勝利と議席が一つの基準となります。この議席を維持できるような政治をしなければ、多くの議員は次回総選挙では落選します。そして、中道無党派層の票は他に流れるでしょう。つまり、保守票から白紙委任を取り付けたから中道政治ができるだけでなく、実際に中道票にも支えられてしまった以上は中道政治をする宿命に立ったということにもなります。

この点については、別途詳しく議論したいので簡単に済ませますが、

「大勝したがゆえに、憲法改正の手続きを進める環境はできたが、同じく大勝したがゆえに憲法改正を焦る理由もないし、大勝したがゆえに急いで進めることはできなくなった」

「大勝したがゆえに、保守票を恐れる必要はなくなり、靖国参拝は堂々と見送れるようになった」

「大勝したがゆえに、トランプ政権と協調して対中関係改善に進めるかもしれない」

ということは指摘できると思います。既に憲法については「少しでも早く国民投票が行われる環境をつくっていけるよう粘り強く取り組む覚悟」という言い方で「やらない」としています。靖国についても「環境を整えるために努力している」「同盟国、周辺諸国にもちゃんと理解を得る」としています。これも「行かない」という意味です。

更には靖国に関して「互いに国のために亡くなった方々に敬意をささげる環境をつくるのが私の目標だ」としており、これは安倍氏の実現した日米相互献花外交を、韓国と中国にも適用できればという理想論と受け止めました。そこには、大政治家への道を歩く気概すら感じます。

しかしながら、ここまでの説明は全くの本筋でありません。そうではなくて、総理自身が勝利宣言において語っているように、経済財政政策が最大の問題だと思います。実は、今回の総選挙ですが、裏では大変な事態が動いていました。それは「高市トレード」という問題です。積極経済を打ち出す高市総理に関して、更には与野党が全員で「消費減税」を語る姿を見て、国際市場は「円と債券のダブル安」を突きつけました。

一時期にはドル円が160円にタッチするとともに、40年ものの超長期国債の金利が4%を超える水準になったのです。しかも米連銀が利下げをして、日米の金利差が縮小しても、円は上がらないで下がるというモメンタムが出ていました。これは非常に危険なことです。中期的には97年のアジア通貨危機のように、あるいはギリシャやアルゼンチンのように、日本国債と日本円が暴落して、国内にハイパーインフレが渦巻く可能性が否定できなくなっていました。

その一方で、トランプ政権は「何かと利下げを渋る」連銀のパウエル議長に辞任を迫り、遂に自分の言うことを聴きそうなケビン・ウォーシュ元連銀理事を、連銀の次期議長に指名しています。ウォーシュ氏は、百戦錬磨の強者ですが、さすがに大統領の意向には逆らえずに利下げはすると見られています。

ですが、トランプ氏の要求はそれだけではありません。恐らく、ウォーシュ氏などには「ドル安」を指示していると考えられます。仮にそうだとしても、ドル安というのは金融大国アメリカとしては簡単には是認できない話です。世界のカネが集まるウォール街から、カネが世界に逃げてしまうからです。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 高市早苗はなぜ「圧勝」できたのか?厳寒の衆院選が示した“有権者の本音”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け