結局ダメージを受けるのは米国。イラン戦争の一時停戦ならずとも中国のイメージに傷がつかないこれだけの理由

 

そもそもこの戦争は『ニューヨーク・タイムズ』の記事「トランプはいかにしてアメリカを対イラン戦争へと導いたのか」にあるように、イスラエルの提案にアメリカが乗せられたのが真相のようだ。

そして米情報機関の高官らが「現実離れしている」と首を傾げ、マルコ・ルビオ国務長官も「デタラメ」と吐き捨てたイスラエルの計画は、当初の見込み通りには進まず、短期決着も政権転換も起きなかったのだ。

この時点でトランプ政権は完全に出口を見失ってしまったのである。

トランプ大統領は「どんな形でもいいから、勝ったように見えるディールを今すぐ持ってこい」とホワイトハウスで叫んだとも伝えられている。

中国が仲介外交をフル稼働させたのは、そうした行き詰まりの裏側でのことだ。

2月28日以降、王毅(中国共産党中央政治局委員兼外交部部長)は16ヶ国の外相や要人との間で20回にわたる電話会談を行い、さらに4度にわたる対面での会談をこなしたとされる。中国中東問題特使も中東地域を飛び回った。

そして最終的に中国とパキスタンとの間で「5項目のイニシアティブ」を共同で発表するに至ったのだ。

今回の一時停戦への働きかけで、中国は中東地域におけるプレゼンスの拡大と信頼の獲得に成功したと考えられている。

その理由の一つは、言うまでもなく同地域に平和をもたらそうとした努力への信頼だが、それだけではない。具体的には「イランに対して説得の言葉を持つ国」としての存在感だ。

またアラブの実力国としてのエジプトとの風通しの良いコミュニケーションだ。3月25日に王毅氏はエジプトのバドル・アブデルアーティー外相と電話会談を行い、直後に中国は「平和への一筋の曙光が見えてきた」と発信している。

そして見落とせないのはサウジアラビア及び湾岸諸国との関係だ。

いずれの国もアメリカとの関係が強いことで知られるが、今回はそれゆえに米軍基地を国内に抱えるデメリットを痛感することとなった。アメリカとの関係は重要だが、対米関係の強化がかえって自国を脅威にさらすという「巻き込まれ」が可視化されてしまったからだ。

今回の一時停戦が崩れれば、アメリカにはダメージとなるが、一貫して平和回復の姿勢を示し続けた中国のイメージが傷つくことはない。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年4月12日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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