映画なら史実を変えていいのか?『開戦前夜』の歴史フィクションに問われる責任

 

だが「総力戦研究所」の所長役は國村隼が演じた「板倉大道」は実在しないこととされた人物だ。若きエリートたちの判断をしばしば脅かす横暴で陰険な軍人だ。東條英機や昭和天皇がアメリカとの戦争を逡巡する人物像と描かれたのとは対照的に描かれている。ここに大問題がある。実在した研究所所長は飯村譲陸軍中将で、若きエリートたちに自由に研究をさせたからだ。この映画の核心をフィクションとして歪めたことは許されるものではない。あえて書けば歴史の捏造だ。この映画は昨年夏にNHKでドラマとして放送された内容を40分ほど長くして映画化している。

総力戦研究所の初代所長だった飯村穣中将の孫(元外交官の飯村豊さん)が、ドラマでの所長像が史実と異なり、開戦を容認するような人物として描かれたとして名誉毀損を主張。NHKや関係者を相手に損害賠償訴訟を起こし、映画の上映差し止めも求めている。製作側は「架空の人物で特定個人の名誉を毀損する意図はない」「歴史フィクションとして一般的な手法」と反論し、公開を続けている。「総力戦研究所」の所長については、フィクションの域を超えた捏造であることは言い訳できない。

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ジャーナリスト、テレビコメンテーター。立憲民主党所属の元参議院議員(2期)。出版社に勤務後、フリージャーナリストとして「朝日ジャーナル」「週刊文春」など霊感商法批判、統一教会報道の記事を手掛ける。1995年から2007年まで、日本テレビ「ザ・ワイド」に12年間レギュラー出演。2010年には民主党から立候補、参議院議員となり、北朝鮮拉致問題、差別、ヘイトスピーチ問題などに取り組む。「北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実」(集英社新書)、「改訂新版 統一教会とは何か」(大月書店)など、著書多数。

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