彼が裁かれる法的根拠となり、メディアも批判する国家安全維持法(国安法)は、むしろ民主化運動によって施行が急がれたのであって、もしそれがなければ、ずっと先送りされていたのではないかと思われる。
つまり北京の支配が強まることを恐れていた香港の人々にとって完全なやぶ蛇となったのであるが、そんな矛盾を直視すれば、かえってその裏で糸を引いたとされる「外国」の存在を思わずにいられないのだ。
今回の裁判で香港の検察は「ジョシュア・ウォンが外国勢力と結託して国家安全を害した」罪を問い、本人もそれを認めている。
具体的に彼は「羅冠聰(ネイサン・ロー、元「香港衆志」主席)と共謀し2016年から2019年にかけて、少なくともアメリカに2回、ドイツに1回、イタリアに1回訪問し、欧州議会の人権小委員会にも出席し、米下院のナンシー・ペロシ院内総務(当時)や、マルコ・ルビオ上院議員(当時)と会った。また2019年7月5日から2020年5月20日にかけて、アメリカ、フランス、スイスに対し、香港警察への戦略装備や武器の供給停止を求める4つのオンライン請願を出した」という。
結果、アメリカは香港への催涙弾や群衆制御関連技術の装備供給を制限する法案を可決している。
また「(彼は)イスラエルのデジタルフォレンジックソフトウェア企業Cellebriteに対し、香港警察へのサービス提供停止を要請した」という。
法廷では、検察側が事実経過の朗読を終え、裁判官が黄之鋒に事実経過に同意するか尋ねたところ、黄は「確認する(confirm)」と回答したという。
つまり冒頭に触れたような外国勢力との結託を認めたことになる。
ジョシュア・ウォンが国安法の罪に問われるのはこれが2回目だ。
すでに「国家権力の転覆を共謀した罪」で2024年11月に懲役4年8カ月の判決を受けており、現在は服役中だ。香港国家安全維持法によれば、外国または国外の勢力と結託して国家安全を害する罪は2段階の量刑区分があり、重大な犯罪には無期懲役または10年以上の有期懲役が科せられるという。
ジョシュア・ウォンの弁護士を務める陳政龍(デレク・チャン)氏は、「被告がまだ若く、すでに6年近く服役していることを理由に、『軽度から中程度の区分の限界付近』での刑期を検討するよう求めた」という。
また「被告が、拘留中に多様な本を読み、前向きな気持ちで過ごしており、最終的には釈放されて高齢の両親の面倒を見たいと考えている」と付け加えたという。
外国勢力に利用されるのは愚かだが、年齢を考えれば厳罰が必要とは思われない。むしろ罪深いのは、若さや不満に付け込んだ外国勢力であり、無責任に煽るメディアの方ではないだろうか。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年9月6日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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