【2-3.海峡で積み上がる既成事実】
イランが回答を検討している間に、ホルムズ海峡の周辺では、船への攻撃や被害の報告が増えました。ただし、個々の事案における攻撃の主体は、確認されたものと分かっていないものが混在しています。
ロイター通信は7日、9月28日から10月5日までの1週間に、原油、LNG、LPGのタンカーへの攻撃が少なくとも12件あり、開戦以来、週単位で最も多くなったと報じました。翌8日には、海峡を通る船の数が7月下旬以来の低い水準に落ち込んだと伝えています。
11日には、英国の海事当局が一日に複数のタンカーへの攻撃を報告し、米海事専門誌マリタイム・エグゼクティブによれば、オマーンのソハール沖で被弾したタンカーでは2人が行方不明になりました。ロイター通信によれば、13日には一日で4隻が攻撃を受けています。
アルジャジーラが英国の海事当局(UKMTO)の記録を集計したところ、10月6日から14日までに15件の事案が報告され、その多くが後半の数日に集中していました。UKMTOの記録は海上での事案の報告であり、それぞれの攻撃の主体を独自に特定したものではありません。
米軍もまた、10日にオマーン湾で、イランの港の封鎖を破ろうとしたとする貨物船を戦闘機で攻撃したと発表しました。これは米中央軍の発表で、独立した確認はありません。
イランの側の言い分を聞けば、これは米国による港の封鎖への対抗であり、「海峡を開くかどうかを決めるのは我々だ」という意思表示です。
ロイター通信は14日、イランが中間選挙を前にホルムズ海峡で「新たな戦術」をとり始めていると報じました。
時系列を確かめておくと、イランが海峡での圧力を強め始めたのは、トランプ大統領の8日の投稿よりも前のことです。ただ、米国が「11月3日までは撃たない」と自らの手を縛ったことで、イランにとっては、それまでの間、大規模な報復を恐れずに圧力をかけられる時間の窓が開きました。
期限を切った約束は、相手にその期限までの行動の自由を与えるという副作用を持つのです。
【2-4.回復の数字と、その翌週】
皮肉なことに、国際エネルギー機関(IEA)が14日に公表した月報は、9月の数字としては明るい内容でした。
湾岸の産油国からの9月の原油輸出は日量1,390万バレルで、前の月から440万バレル増え、戦前の75%を超える水準まで戻ったのです。
サウジアラビアの原油の供給(生産量)は日量約830万バレルと、8月の約597万バレルから大きく回復しました。ホルムズ海峡を通る量も日量1,090万バレルまで増え、オマーン沖でタンカーからタンカーへ原油を移し替える動きが回復を支えたとされます。
ところが、その「回復」は、IEAの月報が出た時点ですでに過去の話になりかけていました。10月に入ってからのホルムズ海峡での攻撃の急増と、13日の東部ダーランのアラムコ本社への攻撃は、9月の数字には含まれていないからです。IEA自身も、回復は「依然として脆弱」だと書き添えていました。
IEAの月報によれば、北海ブレント原油の先物は9月の初めから約13%上がり、報告の時点で1バレル約107ドルに達していました。IEAはまた、軽油の不足が2027年まで続くおそれがあると指摘しました。
この「軽油」という言葉が、今週、ワシントンとモスクワを結び付けることになります。
この記事の著者・島田久仁彦さんの新創刊メルマガ








