圧倒的知名度を持つ人気歌手の擁立で「安全区」が「接戦」に
さて、以上の3選挙区が「全米の傾向を図る試金石」である一方で、次の2区は特殊に意味合いがあります。それは、区割りで共和党優位にしたはずが、敗戦の危機が囁かれている選挙区だからです。区割り変更の「誤算」が最も鮮明なのは、テキサス州南部のリオグランデ・バレーです。共和党は2024年にトランプ氏がヒスパニック票を大きく伸ばしたことを前提に線を引き直しました。
ところが、実際の選挙戦ではその前提自体が崩れつつあります。テキサス・サザン大学の8月の調査では、この地域3選挙区のトランプ氏支持率は36~40%にとどまり、いずれも不支持が過半数でした。ヒスパニック票のトランプ化を前提に区割りを変えたら、それが逆回転しているという可能性が指摘されているのです。
4.テキサス州28区:ヘンリー・クエヤル議員(民主、現職) vs. タノ・ティヘリナ候補(共和、新人)
共和党が「奪取」を狙った5選挙区の一つです。民主党寄りのサンアントニオ部分を切り離し、2024年にトランプ氏が勝ったイダルゴ郡を加えた結果、前回のベースですとトランプ氏の得票差は7ポイントから10ポイントへ広がりました。共和党は、民主党から転じたウェッブ郡のティヘリナ判事を「目玉候補」として擁立しました。
ところが、テキサス・サザン大学の調査ではクエヤル氏45%、ティヘリナ氏34%と11ポイントの大差で民主党現職有利になっているのです。2024年にトランプ氏に投票した人の23%がクエヤル氏を支持すると答えました。クエヤル氏は収賄罪で起訴されていましたが、昨年12月にトランプ氏から恩赦を受けたうえで、民主党員のまま出馬しました。トランプ氏は党籍変更を期待していたとされ、不快感を隠していません。
下院共和党系の最大のスーパーPAC「議会リーダーシップ基金」は10月14日、28区に予約していた300万ドル分の広告枠を引き揚げ、近隣の選挙区へ振り向けました。これは、事実上の「撤退」宣言と見られています。
5.テキサス州15区:モニカ・デラクルス議員(共和、現職) vs. ボビー・プリド候補(民主、新人)
こちらは共和党現職の選挙区で、新しい区割りによりトランプ氏の得票差18ポイントという「安全区」になったはずでした。しかし民主党は、地元で圧倒的な知名度を持つテハーノ音楽の人気歌手ボビー・プリド氏を擁立しました。同調査ではプリド氏50%、デラクルス氏45%と挑戦者が先行し、好感度でもプリド氏がプラス11、デラクルス氏がマイナス2と差がついています。
バージニア大学政治センターはこの選挙区を「共和党やや優勢」から「接戦」に変更し、共和党は、あきらめつつある28区から引き揚げた資金を、ここ15区の防衛に回さざるを得なくなりました。攻めるはずの区割りが守りの負担を増やしているという、今回の選挙の皮肉を象徴する2選挙区です。
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