トランプの不人気が共和党を直撃。物価高とイラン戦争も加わる「三重の逆風」で“既定路線”となった民主党の下院多数派奪還

 

民主党左派の「生活費」訴求は激戦区の無党派層に届くのか

さて、今年の民主党予備選では、党左派(プログレッシブ)の躍進が大きく報じられました。ただ、中道系シンクタンクのサード・ウェイの集計では、左派系団体が推した新人のうち本選に進んだのは22人、敗れたのは27人で、勝ち星の多くは安全区に集中しています。つまり、一番の焦点は、左派候補が激戦区で勝てるかどうかです。もちろん、上院ではミシガン州のエルサイード氏の戦いが注目されるわけですが、下院の場合はとりあえず、次の2候補に注目してみたいと思います。

8.カリフォルニア州22区:ランディ・ビジェガス候補(民主左派、新人) vs. デビッド・バラダオ議員(共和、現職)

中部セントラル・バレーの農業地帯で、有権者の3分の2がヒスパニック系です。共和党のバラダオ議員は2021年にトランプ氏の弾劾に賛成した数少ない共和党議員の一人で、党派を超えた支持を武器に7回中6回の選挙で民主党を退けてきた「しぶとい現職」です。

民主党の公認を勝ち取ったのは、31歳のコミュニティカレッジ講師で地元教育委員のビジェガス氏です。党本部の民主党下院選挙委員会(DCCC)が推した州議会議員を予備選で破り、AOC議員の支持も受けました。国民皆保険を掲げ、ガソリン高はイラン戦争とバラダオ氏の責任だと訴えています。バラダオ氏は相手を「混乱を招く候補」と描こうとしています。

陣営の6月の調査ではビジェガス氏48%、バラダオ氏44%でした。全米のヒスパニック系成人の間でトランプ氏の支持率が18ポイント下落したことも追い風で、左派候補が「現職キラー」になれるかが試されています。ちなみに、共和党の良識派に民主党の左派が挑む構図になっているのは、「そのような選挙区だから」です。

9.ミシガン州7区:ウィリアム・ローレンス候補(民主、新人) vs. トム・バレット議員(共和、現職)

州都ランシングを中心とする典型的なスイング区です。共和党のバレット議員は2024年、トランプ氏が1ポイント差で勝つなか約4ポイント差で当選し、クックも「接戦」に分類しています。

8月の予備選では、気候変動運動「サンライズ・ムーブメント」の共同創設者ローレンス氏が43.7%を得て、元駐ウクライナ大使のブリジット・ブリンク氏らを破りました。国民皆保険を掲げ、トレイブ議員や下院進歩派議員連盟の支持を受けています。党主流派は「勝てる候補を失った」と警戒し、予測市場では予備選直後にバレット氏の勝率が急上昇しました。

資金面でもバレット氏が630万ドル超と大きく先行しています。民主党中道派の議員連盟幹部も、この選挙区の見通しには慎重な見方を示しています。この2選挙区の結果は、左派の「生活費」訴求が激戦区の無党派層に届くのか、それとも共和党に「社会主義」攻撃の材料を与えるのかを占う試金石となります。それ以上に、こうした接戦区で民主の左派が勝ち切れるかは、例えばAOCが大統領選で通用するのかといった点の試金石になるとも思います。

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