「総裁選出馬」にこだわり過ぎ自民党から追い出される羽目に
世耕氏の復党をめぐっては、高市首相が強く期待していたという報道が見受けられた。昨秋の総裁選で、党外にありながら旧安倍派の参院議員に働きかけ、高市支持票を取りまとめてくれた恩義もあり、9月の党役員人事・内閣改造で、官房長官など要職に起用するのではという憶測も飛び交うほどだった。
その背景にあったのは、党内の警戒感だ。少数与党の参院で、あえて野党とのパイプを誇る石井準一氏を参院幹事長の座から追いやった高市氏が、参院対策の切り札として世耕氏の復活を望んでいるとしたら、まさにそれは今の参院自民党に風穴をあける動きだ。反発の声がさざ波のように広がった。
2023年10月、世耕氏は参院本会議の代表質問で、当時の岸田首相に対し、得意満面にリーダーのあるべき姿を説いた。
私が考えるリーダー像は、決断し、その内容をわかりやすい言葉で伝えて、結果について責任を取るという姿です。
岸田首相に自説を滔々と語り聞かせる姿は、あたかも自分こそが総理にふさわしいと言わんばかりだった。
世耕氏は「政治家である以上、トップを目指していきたい」とメディアに語り、政権奪取への野望を隠そうとしなかった。
だが、前途には大きな壁が立ちはだかっていた。地元・和歌山に君臨する二階俊博元幹事長という存在だ。世耕氏が総理への道を切り開くため衆院への鞍替えをめざしていたが、区割り変更で和歌山県の衆院小選挙区が3区から2区に減少。しかも、世耕氏が出馬をもくろむ新2区は大部分が二階氏の地盤である。世耕氏の衆院進出を阻止するため、後継者が決まるまでは二階氏自身が議席を守り続ける姿勢を見せていた。
そこに、異変が起きた。派閥パーティー券の販売をめぐる裏金事件の発覚だ。世耕氏の政治団体では2018年からの5年間に計1,542万円の不記載が判明し、24年4月に離党勧告処分を受けた。「離党勧告」は「除名」に次ぐ2番目に厳しい処分だ。たしかに参院のトップとしての責任は重い。世耕氏は離党に追い込まれた。
二階氏も裏金事件にからんでいた。不記載額が3,526万円にのぼり、東京地検特捜部に自身の秘書と二階派の元会計責任者が立件された。
その二階氏が24年3月25日、次の衆院選には出馬しないと表明した時、筆者は「岸田首相と取引したのではないか」と当メルマガに書いた。
二階氏を党が処分すれば、宏池会の会長だった岸田首相自身も、処分を免れるわけにはいかなくなる。宏池会の元会計責任者の有罪が確定していたからだ。二階氏だって、離党勧告だの党員資格停止だの、晩節を汚すようなレッテルをはられたくはない。
二階氏が自ら身を引き、岸田首相は処分を見送る。そして、次期衆院選の公認候補選定は二階氏の意思を尊重する。誰かが仲に立って、そのように話をまとめ、あの二階氏の記者会見をプロデュースした。世耕氏はその取引の犠牲になって、離党勧告処分を食らったのではないか、と。
世耕氏は自民党の参院幹事長として強い影響力を誇っていた。かつての青木幹雄氏のように、世耕氏が参院のドンとして長く君臨する道を選ぼうと思えば、できなくはなかったかもしれない。衆院へ鞍替えして総裁選に出馬するという野心にこだわり過ぎたために、岸田首相からも、二階元幹事長からも疎まれ、とうとう自民党から追い出される羽目になってしまった。
この記事の著者・新 恭さんを応援しよう









