昨今よく報道されている、マンションの大規模修繕費用が「談合」などで不当に高く見積もられる事を懸念し、マンション管理組合でコンサルを公募したり、入札方式で工事費を決定する動きが出ていますが、実はここにも「落とし穴」があるようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、不適切コンサルの悪質な手口を暴き、その打開策を探ります。
なぜ不適切コンサルが蔓延するのか?
先日、大規模修繕工事における不適切コンサル問題に関するセミナーがありました。
講師は、不適切コンサルと戦い続けている重松マンション管理士事務所の重松秀士さんでした。
その中で、施工業者の体験談として、施工業者の方が自ら、実際に行われているコンサル主導の不適切な施工業者選定の実態について語してくれたことが、とても貴重でした。
重松さんは不適切コンサルが蔓延する背景には、管理組合の性質が大きく関わっているといいます。
理事や委員の多くは専門家ではありません。
で、大規模修繕工事に取り組むことになった時に、まず考えることは、
- 多額のお金が動くので、絶対に不正があってはならない。
- 進め方を間違って、組合員から文句を言われないように手続きを重んじなければならない。
- うまくいかなかった時に、自分たちの責任を追及されないようにしたい。
ということです。
その結果として導き出されるのは、
- 個人の恣意性を排除したいからコンサル選定は公募が一番だ。
- 管理組合のお金は無駄に使えないから、できるだけ安い設計事務所を起用するのが管理組合のため。それとは別にマンション管理士を入れるのはお金の無駄だ。
- 予算準拠主義で予算内なら高くても構わない。
- 工事に関する談合や不正を防ぐには入札方式が一番いい。
- しっかりした工事会社に発注したいから安値の業者は排除すべき。
という考え方で、ここに、不適切コンサル横行の素因があるといいます。
まず、コンサル公募の問題です。
新聞等でコンサルタントを公募すると不適切コンサルには、それをチェックして対応する専任の人がいて、手当たり次第公募に応じます。
一方、真面目な設計事務所はなかなか応募しません。営業担当がいるわけではないので、設計監理の本来の仕事がある中で、対応し切れないからです。
決算書を持って来いとか、指定の方式に従って見積もりを出せとか〇月〇日〇時にヒアリングに来いとか、本来の仕事の予定を抱えている設計事務所には負担が大きすぎる要求がなされる場合が多いのです。
では、入札方式で施工業者を決める場合の問題です。実はこれが一番談合がやりやすいのだといいます。
不適切コンサルは、自分の息のかかった施工業者だけが応募し、それ以外が応募しないように様々な公募条件を付けます。
中には、何でこんな条件が必要?と首をひねりたくなるものもあります。
で、施工業者の側も、取り仕切っているコンサルの名前を見て、ここは、どっちみち談合が成り立っていて、排除されるか、バックマージンを要求してくるんだろうと思うと、そのコンサルのグループ以外の施工会社は応募しなくなります。
それでも、果敢に談合に加わらない施工業者が応募してくることもあります。
談合は、1社でも加わらないと成立しないので、コンサルは何とかその業者を排除しようとします。
談合外の施工業者には、ヒアリングで意地悪な質問をして、印象が悪くなるよう操作したり、仕事を取らせたい施工業者には前もって質問することを教えておいて、好印象の回答が出来るようにする。
そんな印象操作はいくらでもできるのです。
で、それでも一番低い価格で応札した談合外の業者に決まりそうになると、コンサルは、管理組合に対して、「今日急いで決める事はないですよ」と言って先延ばしさせて、予定の施工業者に、それを下回る再見積もりを出させて仕事を取らせると言うようなアンフェアなこともやります。
よく言われる「後出しジャンケン」です。
低い金額を出させれられたグループ内の施工業者は、その金額の中からコンサルへのバックマージンを払わされるのですから、採算が合うはずがありません。手抜き工事に繋がることは目に見えます。
もちろん、コンサルは、上手にもっともらしい理由をつけて言うので、専門家の言うことだからと管理組合側もそれに従ってしまいます。
「あの業者はちょっと最近評判が悪いんですよ」と言うような根拠のない耳打ち情報で、管理組合を操作することもあるのです。