中国には「末尾に9のつく年には必ず乱や厄災が起きる」というジンクスがあることをご存知でしょうか。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長の柴田忠男さんは、そのジンクス「逢九必乱」が当てはまる今年、中国に起こり得る厄災を並べた一冊をレビューしています。
偏屈BOOK案内:福島香織『習近平の敗北 紅い帝国・中国の危機』
『習近平の敗北 紅い帝国・中国の危機』
福島香織 著/ワニブックス
末尾に9のつく年は必ず乱や厄災が起きるという、中国のジンクス「逢九必乱」がある。1919年は抗日デモと暴徒化の五四運動、1949年は中華人民共和国の建国、1959年はチベット動乱のピーク、1969年は珍宝島事件で中ソ国境戦争、1979年は中越戦争、1989年は天安門事件、1999年は法輪功弾圧、2009年はウイグル騒乱、そして2019年には何が起きるのか。起こり得る厄災を挙げてみると。
- 不動産、債務バブルが崩壊する
- 習近平に対するクーデター
- 習近平の暗殺
- 人民の反乱
- 民族や宗教による分裂
- 戦争をしかける
- 環境汚染やエネルギー問題、たとえば原発事故
- 食糧問題、少子高齢化により国力が急激に衰退
- 最大の不確定要素であり、中国にとって最大の厄災であるトランプ政権、米中貿易戦争は既に勃発、冷戦から熱戦へ転じる
2019年初頭時点で筆者は「習近平の敗北」の色は濃厚と見る。あと3か月、何が起きるかわからない。原発事故はいつか中国で起きる。IAEAの統計によれば、2020年までに世界で新たに建設される原発はおよそ130基、2030年までには300基と見込まれ、おそらくその多くは中国製になる。中国が作る原発は本当に安全なのか。世界的に原発産業が限界を感じている中で、なぜ中国だけが。
一番コストのかかる「安全」を切り捨てているからだと著者は考える。今後10年もたたないうちに、中国では100基以上の原発が稼働する予定だ。運転技術者の養成は間に合うのだろうか。着工したばかりのビルや橋がしばしば崩落し、食品工場などで従業員の悪意の毒物混入などテロ行為が起きる中国で、なぜ原発だけが完璧に製造され、安全に運転されるはずだと思えるのだろうか。
実際、中国では小さな原発事故は頻発している。もちろん報道はされない。中国で何かものすごい事故が起きるとすれば、原発事故ではないかと著者は思っている。旧ソ連の崩壊は様々な要因があるが、レベル7と言われたチェルノブイリ原発事故が一つのきっかけであったといわれている。事故対応の劣悪さが国家システムの限界を見せつけ、1991年の8月クーデターにつながったのだ。
中国は食糧危機に直面している。1959~1961の大飢饉の餓死者数は3,800万人といわれる。中国では深刻な水質汚染、土壌汚染によって農地が急激に減っている。農村の都市化で農地が潰され、農家が減った。2008年から食糧輸入国になったが、相当に危機的な状態で、ヘタをすれば社会動乱の引き金になり、体制を一撃で潰しかねない要因になる。アメリカからの輸入が止まれば亡国である。
日本は中国に対して喧嘩腰の外交ができない。過去の戦争の歴史と絡んでいるのだとすれば、それこそ中国の思う壺なので、歴史と政治はきっぱり切り離さないと中国とはまともな外交など出来ないと宣言すべきである。経済力で実力3位の日本は、このままアメリカの忠実な補佐官という立ち位置を維持していくべきだろうか。著者は、当面はいまの役目を全うすればよいと思っている。
中国は2021年に中国共産党建党100年、2049年を中国建国100年として到達目標を掲げる。2049年は中国がアメリカを凌駕して世界秩序を支配するという、野望の実現の年らしい。今後30年間に日本は、自分の国を自分で守り切るだけの国防力を備えておくべきである。今の日本人が享受している泰平は奇跡以外の何物でもない。中国で動乱は必ず起きる。あと3か月のうちかも?
編集長 柴田忠男
image by: Shutterstock.com