「高齢者の孤独死」は以前から深刻な問題として捉えられていますが、日本少額短期保険協会の最近の分析で、若い世代、特に男性の孤独死の発見が遅れる傾向にあるなど新たな実態が明らかになりました。これを受け、マンション管理士で社会問題にも詳しい廣田信子さんは、今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、新たな孤独死問題が分譲マンションにも与えるであろう影響を指摘しています。
孤独死は高齢者だけの問題じゃない
こんにちは!廣田信子です。
人の「死」について思うとき、その「死」を誰にも気づいてもらえないことの深い深い孤独を感じてしまいます。
「孤独死」した人の魂が、自分の肉体が変化し異臭を放ってくる様子をはらはらしながら天井付近から眺め、誰かに気づいてもらいたいと、親しい人に合図を送りたいと思っても、親しい人がいなかったため、その合図は届かす、悲しい思いで部屋に留まっている様子が、思い浮かんでしまいます。心がえぐられるようです。
2019年度版の高齢社会白書では、高齢者の孤独死は過去最高となっています。長生き社会は、高齢一人暮らしが多数存在する社会です。20年後には、高齢者の半数近くが一人暮らしと言われます。ただ、高齢者の一人暮らしでは、本人もそれなりの対策を考え、親族も気をくばります。介護保険サービスを利用していたり、民生委員や地域の定期的な見守りもあって、その存在が認知されている可能性が高いので、たとえ、一人で亡くなったとしても、比較的発見が早いといいます。
深刻なのは、高齢期に達しない人の孤独死です。日本少額短期保険協会が昨年発表したレポートでは、孤独死の平均年齢は、60.8歳。4割は50歳代以下の現役世代なのです。男女比は、8:2で男性が圧倒的に多くなっています。
死亡してから発見までの日数は平均17日(前回は42日)。14日以内に発見された人数は全体の68.6%(前回は46%)となり、大幅に改善されているといいます。しかし、30日以上経過してから発見される事例も、16.5%と決して少なくはないのです。
3日以内に発見されるケースでは、女性の方が11ポイント高くなっていて、孤独死し、長期発見されない危険は、高齢かどうかに関わらず男性の方が圧倒的に高いということがわかります。
このレポートは、少額短期保険会社の家財保険(孤独死特約付き)に加入している被保険者で協力会社から提供された2015年4月~2018年2月までの孤独死のデータ2,017件の分析です。
この保険は、大家さん保護の意味合いが強い保険で、この孤独死データは、基本、賃貸住居に関するものです。というと、分譲マンションは、そこまで心配いらない…と思いたいところですが、私は逆だと思います。
賃貸で借りている場合は、大家さんがいて、多くの場合、賃貸管理会社が入っているので、家賃の滞納や隣から異臭等の苦情があれば、すぐ動きます。管理費等の滞納のように3カ月までは督促状を送るだけなんて悠長なことを言っていません。異常を感じたら部屋に入ることもできます。
しかし。分譲の場合は、専有部分には踏み入れません。私が話を聞いた中でも特に悲惨なマンションの孤独死事例も、40歳代、50歳代の方でした。
事業に失敗して、借金取りから逃げていたけど、密かに自宅マンションに戻って、そこで自殺していた…。高齢の親の家に同居していたひきこもりだった息子が、親が亡くなった後、親の残した貯金がつきたときに、外に助けを求めることもなく孤独死していた…。
分譲マンションは、所有者である住民が助けを求めないと、事情が見えにくく、干渉しにくいために、より、孤独死の危険が見えにくいのです。特に現役世代で、周囲との付き合いがなく、仕事をしていないように見える人には、高齢者と同様の気配りが必要だと思います。
管理組合として孤独死と向き合う必要性をいうとき、どうしても、理解されやすいように、孤独死は資産価値の低下を招く…という話をしますが、自分の死を誰にも気づいてもらえない「魂」の孤独を思うと、近隣に暮らすという縁があった者として、ほっておけないよね…と思うのが本音です。
孤独死は高齢者だけの問題じゃない。
分譲マンションは専有部分に干渉がしにくいために孤独死に気づきにくい。
そのことを忘れないようにしたいです。
image by: PixHound / Shutterstock.com