Google日本元社長が考察。AIの登場で「事業分割」危機を免れるも、AIに事業モデルを破壊されるグーグルが進むべき道

[2016-12-26],"googleplex",,Google,Headquarters,,Mountain,View,,California.,Google,Logo,On
 

独占禁止法違反で米司法省から提訴され、厳しい立場に置かれているグーグル。そんな同社を巡る司法判断が、生成AIにより「大きく方向転換」したことが報じられ話題となっています。今回のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野晃一郎さんが、グーグルが事業分割という最悪の事態を免れた経緯を紹介。さらに注目される同社の今後について考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:分割圧力を一旦回避したグーグル

プロフィール辻野晃一郎つじの・こういちろう
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

分割圧力を一旦回避したグーグル

2020年、米司法省がグーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴し、昨年8月に違反を認める一審判決を米連邦地裁が出したことについて、以前に本メルマガでも取り上げましたが、その続報です。

その後、事業分割を含めた是正措置に関する審議が続いていましたが、9月2日、連邦地裁は、グーグルは検索データの一部を競合他社と共有する必要があるものの、ブラウザーのクロームや、OSのアンドロイドを売却する必要はないという判断を示しました。これにより、グーグルは米司法省が求めていた最も厳しい是正措置を一旦回避できたことになります。

この判断を受けて、アルファベットの株価は急伸して史上最高値を更新し、9月3日の終値は230ドルを超えました。これは株主としても嬉しい動きです。

連邦地裁の裁判長は、「生成AIの出現がこの裁判の方向性を変えた」と述べていますが、グーグルも声明で「AIによって検索市場が変化していることが認知された」と評価しています。

一方で、「検索市場の独占に関する昨年の認定には依然として異議がある」との立場は崩しておらず、今回命じられたデータの共有義務についても懸念を表明しています。しかしながら、ひとまず分割の危機を回避できたこともあって強い反発を示すことはなく、データの外部共有の影響については今後精査するとしています。

さらに連邦地裁は、グーグルが、検索、クローム、ジェミニ(グーグルの生成AI)といった同社の各サービスを抱き合わせて顧客企業や消費者を縛る契約を禁止していますが、これに対して、原告の米司法省は、追加の是正策を求める可能性を示唆しながらも、「グーグルが検索独占のために用いた戦術を生成AI製品にも用いることを阻止せねばならないことを裁判所が理解した」と評価するコメントをしています。

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