Google日本元社長が考察。AIの登場で「事業分割」危機を免れるも、AIに事業モデルを破壊されるグーグルが進むべき道

 

なお、クローム売却という是正措置が検討されていることを受け、米AI新興企業のパープレキシティが、345億ドル(約5兆円)でのクローム買収に名乗りを上げていました。もちろん、パープレキシティにそれだけの買収資金があるわけではありませんから、彼らの買収提案がどこまで本気だったかについてはさまざまな見方が出ていました。

しかし、生成AIの登場により、パープレキシティ、オープンAI、マイクロソフトなどは生成AIを使った検索サービスを開始していて、グーグル検索の市場を脅かしています。

もちろん、グーグルもジェミニを検索エンジンに統合していますが、これによってユーザーが検索結果のサイトに行く機会が減って広告収入の減少を招き、自らの首を絞めることにもなっています。さらに、データの外部共有を義務付ける今回の決定は、AI検索を手掛ける競合他社に有利に働くことになります。

そのような意味では、今回の司法判断は、AI検索でグーグルと競合できる企業を育てることを重視して独占の是正を図ろうとしているものともいえ、「グーグル分割」というような強制介入よりもフェアな判断だと思います。

グーグルにとっては、当面、事業分割という最悪の事態は回避できたものの、今後、米政府(司法省)との和解に向けて歩み寄るのか、あるいは控訴審で再度争うのかの判断が求められることになります。

また、AIそのものの開発競争で優位に立つだけでなく、長く一人勝ちを続けてきた検索連動広告に依存した従来の事業モデルから、AIを活用した新たな事業モデルへの転換が迫られています。

(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年9月5日号の一部抜粋です。メルマガ限定記事を含む全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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