なお、クローム売却という是正措置が検討されていることを受け、米AI新興企業のパープレキシティが、345億ドル(約5兆円)でのクローム買収に名乗りを上げていました。もちろん、パープレキシティにそれだけの買収資金があるわけではありませんから、彼らの買収提案がどこまで本気だったかについてはさまざまな見方が出ていました。
しかし、生成AIの登場により、パープレキシティ、オープンAI、マイクロソフトなどは生成AIを使った検索サービスを開始していて、グーグル検索の市場を脅かしています。
もちろん、グーグルもジェミニを検索エンジンに統合していますが、これによってユーザーが検索結果のサイトに行く機会が減って広告収入の減少を招き、自らの首を絞めることにもなっています。さらに、データの外部共有を義務付ける今回の決定は、AI検索を手掛ける競合他社に有利に働くことになります。
そのような意味では、今回の司法判断は、AI検索でグーグルと競合できる企業を育てることを重視して独占の是正を図ろうとしているものともいえ、「グーグル分割」というような強制介入よりもフェアな判断だと思います。
グーグルにとっては、当面、事業分割という最悪の事態は回避できたものの、今後、米政府(司法省)との和解に向けて歩み寄るのか、あるいは控訴審で再度争うのかの判断が求められることになります。
また、AIそのものの開発競争で優位に立つだけでなく、長く一人勝ちを続けてきた検索連動広告に依存した従来の事業モデルから、AIを活用した新たな事業モデルへの転換が迫られています。
(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年9月5日号の一部抜粋です。メルマガ限定記事を含む全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)
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