大規模災害や通信障害のたびに課題とされてきた「通信の途絶」。その解決策として、日本の主要通信4社が連携する「JAPANローミング」が、2026年4月にいよいよ始動します。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは今回のメルマガで、その意義と現実的な限界について整理しています。
紆余曲折あった「JAPANローミング」がついに始動。関係者の苦労が偲ばれた「緊急通報の折り返し」
NTTドコモ、KDDIと沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイルは大規模災害時や通信障害発生時に他社のネットワークに接続できる「JAPANローミング」を4月1日に開始する。
2022年7月に発生したKDDIの大規模通信障害時に「他社にローミングできればいいのでは」なんて、メディアが軽はずみに発信したこともあってか(大いに反省)、総務省で導入に向けた検討が進んだ。
「みんな同じスマホを扱っているのだから、簡単でしょ」と思ったのも束の間、警察や消防、救急の緊急通報は「発信者に折り返し電話することが必須」ということがわかり、「こりゃ、技術的に困難かも」と暗礁に乗り上げた。
実際、某社長は「ローミング、やりたくないなぁ」とぼやいていたこともあった。
しかし、関係各所の地道な作業、調整によってなんとか実現にこぎつけた。JAPANローミングの導入に向けて携わった方々には本当に頭が下がる思いだ。
オンラインの説明会では「スターリンクがあるから、JAPANローミングなんて不要なのでは」という質問が飛んだ。その回答としては「JAPANローミングは緊急通報など音声通話サービスを提供できる点が、衛星との直接通信との大きな違い」とのことであった。
確かにスターリンクの直接通信サービスについてはMWCの基調講演で案内があったが、現在のKDDIに加えて、今年、日本では2社、追加になることが明らかになっている。
楽天モバイルはAST社なので、この2社というのはNTTドコモとソフトバンクなのは明らかだ。
3社でスターリンクとのダイレクト通信を提供すれば、大規模災害時や通信障害時でも何とかなるように思えるが、当然のことながら衛星なので、空が見える場所しか使えないという弱点が存在する。
また、いま指摘されているのが「スターリンク一本槍でいいのか」という点だ。
確かに利便性の高いスターリンクであるが、非常時の通信を海外企業のイチサービスだけに頼るというのも不安でしかない。
だからといって、日本企業がスターリンクに対抗とまでいかなくても同等の衛星通信サービスをいまから提供できるかと言えば、まず無理であろう。
そんななか、日本の通信会社が揃い、万が一の時でも手を取り合って、国民の通信インフラを確保するという取り組みが実現できたのは、本当に素晴らしいことのように思える。
できれば、JAPANローミングが発動しない平和な日々が続いてくれることを祈るばかりだし、万が一、大規模災害や通信障害が発生した時に、JAPANローミングがうまく発動しなくても、目を瞑るぐらいの気持ちでいたい。
なんせ、どんな状況が訪れるのか全く予想できないし、その際、4社それぞれのネットワークがどういった稼働状況にあるかも、現段階では皆目見当もつかない。
事前に「緊急通報がちゃんとつながるか実験してみる」というわけにもいかない。
とりあえず、「うまく稼働したらラッキーかも」程度の、温かい目で見ることにしようと思う。
この記事の著者・石川温さんのメルマガ
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