相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で45人が殺傷された事件から、7月26日で10年が経ちました。この痛ましい事件を機に、障害のある人への私たちの「まなざし」は変わったのでしょうか。施設職員による暴力はあとを絶たず、法定雇用率が引き上げられても偏見や差別が消えたとは言えません。『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが、車椅子のコメディアン、ステラ・ヤングさんの言葉を手がかりに、障害を「個人」ではなく「社会」の問題として捉え直し、誰もが取り残されない社会へのカギを考えます。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
やまゆり事件から10年。そこに「光」はあるか?
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件は、26日で発生から10年が経ちました。
「障害と私たち」の関係性は共存の方向に向かっているのでしょうか。
障害のある人への私たちの「まなざし」は、どうでしょうか?
・・・あまり変わってない、というのが実感です。
少なくとも障害者への理解が、この痛ましい事件を機に社会に十分に浸透したとは言い切れない。もちろん公けに差別的な態度で接したり、言葉を発する人は減りました。
しかし、障害者施設職員の利用者さんへの暴力はあとを絶ちません。
また、企業が雇う障害者の法定雇用率が7月1日、2.5%から2.7%に引き上げられましたが、だからといって、障害者への偏見や差別がなくなったわけでもない。
「障害そのもの」は、何も特別なことではありません。
でも、「あなたの障害に対する意識」は、あなたを特別な存在にします。
これは本メルマガでも何度か紹介した、車椅子のジャーナリスト兼コメディアンのステラ・ヤングさんの言葉です。
彼女は2014年12月に32歳で亡くなるまで、常に「私」たちに、こう問うてきました。
何が普通で、何が普通じゃないのか。何が障害で、何が障害じゃないのか、と。
「障害者」の「障害」とはいったい何を指すのか。
「個人」の問題とされていることを、「社会」の問題とするだけで、温かな「まなざし」が増えるのではないか。
考えれば考えるほどわからなくなる。ただ、一つだけ明らかなのは、障害者の笑顔が溢れる社会は、多くの人たちの未来に光がさす社会だと思うのです。
さっといくつもの「手」が差し出される社会、「お先にどうぞ」が溢れる社会、そんな社会になれば、「障害者」という言葉も消える──。そう思えてなりません。
民間企業が実施した「中重度障がい者、高齢障がい者の就労可能性を調査」によると、回答者の58%が現在就労中だったのに対し、42%が現在非就労と回答。「職務能力」と「人間関係」の困難さが非就労者の最大の就労課題だったことがわかりました。
「人間関係」とは、まさに「私」たちの問題です。
制度や法律の枠組みを整えるだけではなく、職場だけの問題でもない。
「半径3メートル世界」の障害者と「私」がどう向き合い、どんな関係性を築くのか──。
その一人ひとりの意識のあり方こそが、誰もが取り残されない社会を創るカギなのかもしれません。
みなさんのご意見、お聞かせください。









