戦争もアンダーコントロールなのか? 安保法会見への7つの疑問

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5月14日、集団的自衛権の行使を可能とする「平和安全法制」の閣議決定を受け記者会見を行った安倍首相。その席上で首相は「米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にない」と強調しましたが、ジャーナリストの高野孟さんはメルマガで疑問を呈しています。そもそも「平和安全法制」という名称からしておかしい、とも。

支離滅裂ですよ、安倍さん──「安保法制」記者会見への7つの疑問

安倍晋三首相は5月14日、安保法制関連法案の閣議決定後に記者会見を開き、「不戦の誓いを将来にわたって守り続け、国民の命と平和な暮らしを守り抜く決意のもと、平和安全法制を閣議決定した」と述べ、以下その趣旨を説明した。が、その内容は支離滅裂で、全体を通じて浮き彫りになったのは、むしろ、戦後生まれのこの政治家が、戦争や戦場の実際への想像力も、国連憲章と日本国憲法の理念への理解も、戦争についての国際法の知識も欠落させたまま、不用意かつ中途半端にこの問題を扱おうとしていることの危うさだった。

1.「平和安全法制」?

まずは法案の名称についての言葉遊びである。国民によく説明して理解を求めるには、法案の名前は出来るだけ誤魔化しなしに、何をどう変更するための法律なのかをはっきりと示すことが肝心で、その意味ではこれは本来、「解釈改憲に基づき集団的自衛権を解禁して自衛隊による海外武力行使を可能にするための法制」と呼ぶべきだろう。従来、与党やマスコミは「安保法制」と呼び慣わしてきたが、これでは「安保」をどうしようというのか、内容不明で、そこで社民党の福島瑞穂が「要するに戦争がしたいんでしょ」という意味で「戦争法案」と呼んで国会が紛糾したのだが、この方がよほど「名は体を表す」に近い。安倍は会見で

米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にない。日本が武力を行使するのは日本国民を守るためだ。戦争法案などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤りだ。

と、ややムキになって述べ、これを「平和安全法制」と名付けることを宣言した。いくら何でも言葉遊びが過ぎるのではないか。民主党の枝野幸男幹事長は「戦争は大体、平和や自衛のためという大義名分でなされる。平和を強調すること自体、中身の危うさを象徴している。国民の理解を得られると思うなら、変なカムフラージュをせず堂々と訴えればいい」と批判したが、その通りである。

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