戦争もアンダーコントロールなのか? 安保法会見への7つの疑問

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2.「戦争に巻き込まれない」?

「米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にない」というのは、明らかな嘘で、まさに白を黒と言いくるめようとするものである。集団的自衛権を解禁するということは、「不戦の誓い」を破棄して「米国の戦争に巻き込まれるようにする」という以外の何物でもなく、もし本当に米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にないのであれば、そもそも大騒ぎしてこの法制を作る必要がなかったことになる。法制の根本的な趣旨を真逆に言い換えてしまうのでは、国民にこれからこの国が直面するであろうリスクを納得させ自衛隊員に相応の覚悟を求めることなど到底不可能になる。安倍は

自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは決してない。

 

IS(イスラム国)に関しては、我々が後方支援をすることはない。今まで行っている難民や避難民に対する食糧支援や医療支援などの非軍事的な活動を引き続き行っていることになる。

と言ったが、そもそも湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争で米国から協力を求められて、いちいち特措法を作って対応した経験を踏まえて、それでは面倒だから「国際平和支援法」という恒久法を立てていつでも直ちに米国の要請に応じられるようにするのが今回の法制の1つの柱である。今までよりも遙かに「米国の戦争に巻き込まれ」易くしようとしているのに「絶対にない」とどうして言い切れるのか。

「いや後方支援だけで、戦闘には加わらない」と言うのかもしれないが、戦場に前線と後方を峻別する垣根がある訳ではなく、後方支援も立派な戦闘参加行為であるというのは世界常識。こんなことを言っているのは日本だけで、「ウチは後方支援だけですから」と言っていれば敵は自衛隊を攻撃対象から外してくれるなどと思うのが狂っている。補給路を叩くのはむしろ戦争の常道である。

また、ISについては後方支援さえもしないと決めているようだが、今は慎重に直接参入を避けている米国が、いよいよどうにもならなくなって軍事介入し、日本に協力を求めてきた場合はどうなるのか。少なくとも法制案にはそれを断る理由は用意されていない

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【「7つの疑問」の3~7】
3.「後方支援は危険でない」?
4.「どういう脅威に対処」?
5.「中国は仮想敵ではない」?
6.「厳格な歯止めがある」?
7.「一国のみで安全を守れない」?

image by: 自由民主党

『高野孟のTHE JOURNAL』Vol.186より一部抜粋

【Vol.184の目次】
1.《INSIDER No.785》
支離滅裂ですよ、安倍さん──「安保法制」記者会見への7つの疑問

2.《FLASH No.097》
整合性も普遍性も見えない大阪都構想──日刊ゲンダイ5月14日付から転載

3.《CONFAB No.185》
閑中忙話(2015年05月10日~16日)

4.《SHASIN No.164》付属写真館

著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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