大家「家賃払えないなら出て行け!」に対する弁護士の冷静なアドバイス

max sattana/Shutterstockmax sattana/Shutterstock
 

もしも家賃を滞納してしまったら、すぐさま部屋から退去しないといけないのか? 弁護士自らが監修するメルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』では、こういった賃貸トラブルがこじれにこじれた場合の、裁判そして強制執行に至るまでの流れを、詳しく解説しています。

家賃未納ですぐに退去しなければならない?

□相談□
知人のことなのですが、家賃を一ヶ月分滞納し、その10日後に「5日以内に支払わなければ、5日後に退去して下さい」と言われているそうです。知人は、月末まで待って欲しいと伝えたのですが、無理とのことだそうです。毎回ではないですが、二年の間に三度程滞納したようです。すぐに退去しなければならないでしょうか?(30代:女性)

□回答□
貸主側は、家賃が未納だからといって、すぐさま実力行使をして賃借人を退去させることができるかというとそうではありません。むしろ実力行使をすることで住居侵入罪(刑法130条)や強要罪(刑法223条)などの可能性すらあります。だからといって、ずっと居座り続けられるわけではありません

家賃が未納ということであれば、賃貸借契約における義務を果たしていないことになりますので、家主側は、債務不履行による契約解除をすることができます(民法601条、415条など参照)。ただ、家主側は解除をできるからといってすぐさま賃借人を追い出すことは事実上できません

これは、賃貸借契約が長期間にわたり契約関係が存続するため、契約関係にある当事者の立場をできるだけ保護しようとすること、そして、住む所を奪うことで賃借人に著しく不利益な状況が生じてしまうことに配慮しているという点があります。

解除ができる状態になった場合、おそらく家主側は次のような手順で立ち退きを迫るものと考えられます。

まず、内容証明郵便などを用いて滞納家賃の督促などを行います(内容証明郵便が、仮に後ほど訴訟に発展した場合に証拠などとして重要になるため)。

それでも退去しない場合は、家主側は債務不履行に基づく損害賠償請求として未納家賃などを請求するとともに、部屋の明け渡しを求めて裁判を起こすことになります。

多くの場合、裁判に発展すると賃借人と家主側で滞納している家賃の支払い条件や退去時期などを詰めて、「和解(裁判の当事者同士での合意)」をすることになります。

万が一、和解が成立しない場合は判決手続を経て、賃借人を退去させるための強制執行を行うことになります。こうなるといくつかの手続きを経て、執行官(裁判所の職員で、裁判で決まった手続きを執行する役目を負います。裁判所法62条、執行官法1条など参照)が、賃借人が居座っている場所を訪れて、強制的に荷物を外に持ち出すということになります。

このように家賃の未納を放っておくと最終的には強制的に住居を失うことになります。そのため、誠実に家主側と未納家賃の支払い条件について相談し、きちんと支払うことが必要になってきます。

『知らなきゃ損する面白法律講座』
わかりやすくて役に立つ弁護士監修の法律講座を無料で配信中。誌上では無料で法律相談も受け付けられます。
≪登録はこちら≫

print
いま読まれてます

  • 大家「家賃払えないなら出て行け!」に対する弁護士の冷静なアドバイス
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け