戦場から故郷への手紙ー南方最前線から娘の風邪を心配した34歳父親編

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今年は終戦70年という節目の年。戦争体験者の高齢化が進み、国のために戦って亡くなった人の記憶も薄れるばかりとなっています。そこで今回は、無料メルマガ『≪≪<戦場から故郷への便り>≫≫』で紹介されている、戦没兵士たちが故郷の家族に宛てた手紙を紹介。安保改正で日本中が揺れる今、国を背負って戦場に散った若者たちの生の思いをお届けします。

最前線に立つ兵士たち~戦没兵士の手紙集

戦没兵士の手紙集の連載です。雪凍る北満の地で、暑熱のジャングルや孤島で、傷つき倒れ、あるいは飢え、また太平洋の底深く沈められ、はては沖縄で武器も持たず丸裸で殲滅されていった人たち。

将来ある有為の人材が戦場の露と消えた。平和国家日本70年の歩みを停めてはならない。日本は戦争しない国であってこそ存在価値がある。太平洋戦争で300万人もの人命を失った大戦争を忘れようとしている。忘れてはならない太平洋戦争、戦場に死んだ若者たちの手紙を今の日本に伝えたい。

今、時の政権により70数年前と同じ過ちが繰り返されようとしている。私たちは戦争できる国、戦争する国になる流れを何としても止めなければならない。平成生まれの若者を戦場に送り、犬死させたくない。1人が戦死すれば何十人もの身内、友達が悲しむ。相手の兵士を倒せば、相手の国でも同じことが起り敵国を恨むことになる。負の連鎖を起こしてはならない。

最前線から娘の風邪を心配する年若き父親

久子、12月25日はもうすぐです。こちらは「クリスマス」です。

 

「クリスマス」とはどんなことをするのかお父さんはまだはっきり知りませんが、お友達を招いてご馳走をして楽しく遊び、又プレゼント(おくりもの)を贈りかわしたり、まあ日本のお正月のようなものでしょう。

 

クリスマスには「サンタクロース」の白い長いひげをしたおじいさんが夜中に雪の降る中を犬に引っ張られて大きな重そうな袋をかついで、その中には子供の好きなたくさんのおみやげを持ってくると言います。これは絵本でどこかで見ましたね。しかしかしこくない子供にはおみやげをやらず、この袋の中に入れて連れて行くのでしたね。

 

この中の美しい手紙はフィリッピンで、お友達どうし招待をするあいさつ状で、まあ日本の年賀状のようなものです。これはサンタクロースのおじいさんが重たい袋をかついで犬にひっぱられてきた所です。もう1枚秀子宛に送りましたのはサンタクロースのお爺さんが時計の振り子のブランコにぶら下がってニコニコしている所です。ブランコを静かに動かしてみなさい。時計の針も動きます。お正月も近く寒いでしょう。かぜをひかぬように。

 

昭和18年12月12日 父より 久子(長女)

 

U・C 昭和19年7月28日  ニューギニアにて戦死 34歳 陸軍伍長

故郷の愛娘に書いた手紙。クリスマスのことを丁寧に説明している。

戦地にいるといえ、まだ心に余裕があるようだ。しかしお父さんは7か月後にニューギニアで亡くなる。34歳と一番脂ののってきた年齢である。

さぞ悔しく、さぞ無念だったろう。子供たちのためにやりたいことは山のようにあったろう。無意味な戦争に駆り出され、誰を恨んでニューギニアに死したのだろうか。お父さんは死ぬが、お前たちだけは平和な日本で生きてくれと思って戦っていたのではないだろうか。

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≪≪<戦場から故郷への便り>≫≫
雪凍る北満の地で、暑熱のジャングルや孤島で、傷つき倒れ、あるいは飢え、また太平洋の底深く沈められ、はては沖縄で武器も持たず丸裸で殲滅されていった人たち。戦没兵士の思いを戦後70年の今に伝えます。
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復刻アサヒグラフ昭和二十年日本の一番長い年

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