ドイツが中国に急接近。隠しきれなくなってきたEUの焦燥感

 

ドイツは、中国に向かう

トランプ・アメリカに敵視されるドイツ。困ったドイツは、アメリカのライバル中国に接近しようとしています。

保護主義や孤立主義を鮮明にするトランプ氏に対し、共に自由市場主義を進めてきた欧州ではいらだちや戸惑いが広がる。トランプ氏が中国批判も展開する中、メルケル独政権のガブリエル副首相兼経済・エネルギー相(現外相)は米国が中国やアジアと「貿易戦争」を始めるなら、「欧州とドイツはアジアと中国に合わせた戦略が必要だ」と訴え、中国との連携強化を示唆した。
(同上)

中国との連携強化を示唆した」。実を言うと、この動きは、今に始まったことではありません。オバマ時代から始まっていた。その証拠が、2015年3月の「AIIB事件」です。アメリカの制止を完全無視して、欧州の大変多くの国が中国主導「AIIB」への参加を決めました。「火付け役」はイギリスでしたが、ドイツも先を争って裏切った

実をいうと、中国側もこのような変化を察知しています。「トランプはナショナリストで、グローバリストの国際金融資本やEUから嫌われ
ている」。それで習近平は1月、ダボスで、「グローバリズム絶対支持宣言」をした。結果、「トランプより習近平の方がマシかもしれないぞ!」という雰囲気になってきている。(中国の脅威に怯える日本人は、「国際金融資本やEUのエリートは、なんとナイーブなのだろう!どうせだまされるだけなのに!」と思いますが。彼らは尖閣、沖縄、南シナ海と関係ないので、中国を「安全保障上の脅威」と認識していないのです)。

中国は習近平国家主席がスイス東部で開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に初出席し、グローバル化の推進を訴え、会場に集まった経済界の要人らの喝采を浴びた。「中国接近」を念頭に置くのはガブリエル氏だけでもなさそうだ。
(同上)

変化の激しい時代、日本は…

というわけで、現状の世界の構造をみると、トランプ・アメリカは、ロシアと和解したいが、敵に阻止されている。彼は、中国と対立したいが、敵に阻まれている。トランプ・アメリカは、日本、イギリスを味方につけている。トランプ・アメリカは、ドイツを中心とするEUと対立している。それで、ドイツは、アメリカのライバル中国に接近している、となります。

しかし、現在の世界情勢は、1930年代並に変化が激しいです。1930年代、日本はフラフラしていた。そして日中戦争が始まった1937年、アメリカ、イギリス、ソ連、中国、4大国を全部敵にまわしていた。要するに日本は、「孤立したから負けた」のです。

その教訓を活かして、日本は、「味方を増やす戦略を進めていく必要があります。

  1. アメリカとの同盟関係をますます強固にする。
  2. インドとの関係をますます強化していく。
  3. ロシアと和解することで、中ロ関係を弱体化させる。
  4. 台湾、ベトナム、フィリピン、オーストラリアなどとの関係をさらに強化していく。
    その上で
  5. 中国を挑発しない。

80年前とは違い、日本はいいポジションにつけています。しかし、油断は大敵です。

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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