驚異的なのは、この変化がわずか2年ほどの短期間に急速に起こったということ。一旦この仕組みが提供されると、誰もが便利さに飛びつき、一気に普及してしまったとのことです。
米国でApple Payがスタートしたのは5年前ですが、使っている人はそれほど多くないし、使えないところもたくさんあります(私自身もApple Payで支払うのは10回に1回ぐらいです)。日本にもSuicaに代表される「電子マネー」が長い間存在していますが、未だにトランザクションの75%は現金だそうです。
つまり、中国の「電子マネー」は、米国と日本を一気に抜き去っただけでなく、他の国が「未来社会のあるべき形」として描いていたキャッシュレス社会を、短期間に実現してしまったのです。色々と理由があると思いますが、米国ではクレジットカード会社が必死の抵抗を試みるでしょうから、難しいと思います。
ちなみに、中国の電子マネーには簡易ローンの仕組みまでついており、審査なしで、スマートフォンからその場でお金を借りられるようになっています。それまでの電子マネーの使い方が審査代わりになっているそうで、使えば使うほど、借りられる額は多くなるそうです。私の知り合いの家族と一緒に夕食を食べている時にこの話題になったのですが、彼の奥さんが「私は12,000元(約20万円)まで借りられる」と自慢げにスマートフォンの画面を見せてくれたのが印象的でした。
私自身もWeChatを使ったペイメントを試したかったのですが、(あらかじめ元に換金しておいた)現金をアカウントに追加する方法が見つからず、今回は断念しました。
ちなみに、彼女によると「最近の若い人たちは、外食もしないし、家で料理もしない」と嘆いていました。食事の配達サービスが便利になりすぎて、出前を頼むのが当たり前になっているそうです。中国の出前サービスは、レストランとは独立した第三者がサービスとして行なっていますが、利用者が増えるにつれ、彼らの力が強くなり、「配達料金はレストランが負担、一皿から注文が可能」が当たり前になっているそうです。
そのため、「青椒肉絲はこの店、小籠包はあの店」のように店をまたいだ注文まで可能になってしまい、家から一歩も出ずに夜を過ごすライフスタイルが、独身の人たちにとって、当たり前になりつつあるそうです。先週号で、日本で「ひきこもりライフスタイル」が当たり前になるかも知れないと書きましたが、同じことが中国でも起こりつつあるのです。