インフレ率上昇が顕著となるまで、転じて財政拡張を続ける各国政府や、大規模金融緩和を続ける各中銀が「出口戦略」という名の幕引き・焦りを演じるまで、昨日1/14の日本株のような商品市況的な動きは断続的に発生する見込みです。同時にチキンレース的な上値追いも続きます。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2021年1月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
バイデン次期大統領、1.9兆ドルの景気対策案を公表
バイデン次期大統領が1.9兆ドル(約200兆円)の「米国救援策(the America Rescue Plan)」を公表しました。
注目の個人給付金は新たに1,400ドル。12月の600ドルと合わせて2,000ドル。昨年3月にも1,200ドルの支給を行っていて、都合3回目の給付となります。
その他、以下の施策が行われます。
- 失業給付金、週400ドル
- 最低賃金、時給15ドル
- 不動産の立ち退きや差し押さえ猶予、9月末までさらに延期
- 州・地方政府援助3,500億ドル
- 初等教育支援1,700億ドル
- 新型ウイルス検査500億ドル
- 全米でのワクチン接種関連200億ドル
- 児童税額控除(子供の居る世帯への税額控除、または現金給付)、子供1人当たり3,000ドル(6歳未満は3,600ドル)
財源は米国債
一方、財源は「緊急時、かつ低金利」なので、国債増発、財政赤字拡大により確保するとのこと。米国債売り、長期金利上昇の懸念がくすぶります。
しかし、時代は世界的な大規模緩和。日銀同様、Fed(米連銀:Federal Reserve)も米国債をたくさん買っています。
その親分、ジェローム・パウエルFRB議長からして、「すぐに利上げはしない」です。目標の2%を下回る状態が続く物価上昇率にしても、「一定期間2%を上回る必要がある」としています。
実質ゼロ金利、かつ米国債等の買い入れ継続が見込まれ、長期金利上昇にも歯止め役として作用します。
結局、インフレ率が趨勢的に上昇するまで、現状が継続するという図式です。
言い換えれば、インフレ率上昇が目立ち始めたとき、長期金利だけでなく短期金利にも動意が付くことを意味します。
Next: 財政拡張・大規模金融緩和による株のチキンレースは続く
米国債市場の急変に要警戒
今は「短期金利は変わらず。長期金利は財政拡張により少し上がるかも」が市場の主軸です。このうち「短期金利は変わらず」が崩れると、米国債市場はかなりの荒れ方をします。
カタカナを使っちゃいますが、「短期・中期国債買い、長期国債売り」という「スティープニング・トレード」ポジションが傷みます。2年債や5年債の売りが目立つ展開なのですが、特に5年債売りが目立ち始めると、米国債市場全体の雰囲気が一気に悪化します。
まぁ、まだ先のこと。インフレ率が本当に上がって来て初めて起こることなので、為替など他市場での心配も取り越し苦労で目先は終わります。
財政拡張・大規模金融緩和による株のチキンレースは続く
昨日1月14日、日本株は午後の取引で乱高下を演じました。金融緩和・財政拡張が株価を押し上げているものの、勢い任せの荒っぽい動きも出て来た、その典型的な例です。
何度も申し訳ないのですけど、インフレ率上昇が顕著となるまで、転じて財政拡張を続ける各国政府や、大規模金融緩和を続ける各中銀が「出口戦略」という名の幕引き、焦りを演じるまで、昨日の日本株のような商品市況的な動きは断続的に発生する見込みです。
同時にチキンレース的な上値追いも。経済成長とか利益水準とかいった、経済の基礎的な条件(ファンダメンタルズ)とはまったく関係ありません。
それだけに、行き過ぎを看過すると、単に置いて行かれる事態にも陥ります。厄介な局面です。
今回のまとめ
・バイデン次期大統領、1.9兆ドルの景気対策案を公表
・財源は米国債、「緊急だし、低インフレだし」
・インフレ率が上がるまで、財政拡張・大規模金融緩和による株のチキンレースも続く
<初月無料購読ですぐ読める! 1月配信済みバックナンバー>
※2021年1月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
- バイデン新政権も低インフレが頼り(1/15)
- 「最後に夢を見てる奴らに贈るぜ」とは言ったけど(1/14)
- self-coupの動きはなさそう(1/13)
- 株高一服の火種が増えて来ました(1/12)
- 現代版『ハムレット』、「感染拡大は株買い」(1/8)
- D.C.の混沌、単なる悪あがきというより(1/7)
- 世が世なら利上げ、米ISM製造業PMI(1/6)
- 「室井さん」の居ない日本、株価も出遅れ(1/5)
- 「アホ面」リスク軽視に憂う、DXの仰々しさ(1/4)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2021年1月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『高梨彰『しん・古今東西』』(2021年1月15日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
高梨彰『しん・古今東西』
[月額880円(税込) 毎週月・火・水・木・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
チーフストラテジストとして、年200回ほど発行していたメルマガ『古今東西』が、『しん・古今東西』としてここにリニューアル。株・債券・為替などの金融市場全般から、マクロ経済、市場心理など、「これ何?」なことを徒然なるままにお伝えします。四方山話も合わせ気軽に読めて、しかも相場を「自分で判断出来る」ようになるメルマガです。是非一度お試し下さい。