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物件価格プラス2000万円?マンション「購入後」の生涯費用をプロが試算=牧野寿和

新築マンションを購入して死ぬまで住み続ける場合、物件価格以外にも様々なコストがかかります。生涯にいくら必要になるのか? 新築マンションのチラシから試算します。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

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プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

集合住宅ならではの出費がある

マンションは集合住宅ですので、戸建て住宅に住むのとは違う点があります。

そのマンション建物全体の定期的な保守点検や修理、また物件自体の資産価値を維持するために、住んでいる間、毎月、費用を支払うことが必要です。

では、その費用の総額は、生涯、そのマンションに住み続けたら、いくらになるのでしょう?

今回は、マンションを購入したら、共同住宅に住むがために、生涯支払う費用はどのくらいなのか?を計算してみることにします。

住宅を所有したら必要な費用

マンション・戸建ての住宅に限らず、住宅を所有すると、ご自身の資産になります。

その資産を所有している間、毎年必ず、固定資産税や都市計画税を市区町村に納付します。

また、ご自宅の修繕費や、住むところによっては町内会費や自治会費の支払いも必要になるでしょう。

これらの支払いは、住宅を所有した方には、家計からの支出が必要となる費用です。

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マンション暮らしに必要な費用<年間>

では、マンションを購入して、共同住宅に住むがために、生涯、いくらぐらい必要になるのでしょう?

先日、朝刊に入っていた「新築マンション販売のチラシ」を見ながら、計算してみました。

まず、前提として、マンションの購入を考えているAさん一家がいたとします。Aさん家は、夫38歳、妻35歳、小学校4年生(10歳)・2年生(8歳)の4人家族です。

チラシのマンションを購入したとして、住んでいるあいだに、支払う必要のある項目は、次の(1)から(5)の5項目です。その費用を計算してみます。

(1)管理費(月額):1万2,910円
(2)修繕積立金(月額):8,100円
(3)駐車場代(月額・1台):1万2,000円
(4)駐輪場代(月額・1台):500円
(5)インターネット・テレビ視聴料(月額):734円

(1)から(5)を足すと、毎月3万4,244円の支払いが必要になり、1年間では41万928円の出費になります。

実際には、自家用車は2台、自転車は子どもが成長するまでは一家で3台は必要など、家庭ごとの事情によって支出は増えるかもしれません。

また、チラシには記載されていない、任意ではあるけど出費した方が近所付き合いが円滑になると考えて支払う、住むマンション特有の出費があるかもしれません。

Next: マンションにずっと住むなら、物件価格に加えて2,000万円必要?



マンション暮らしに必要な費用<生涯>

次に、Aさんがこのマンションにずっと住む場合を試算します。

厚生労働省発表の統計値から、

Aさん38歳の平均余命は、約44歳
Aさん夫人35歳の平均余命は、約52歳

つまり、

Aさんは、38歳+44歳=82歳
Aさん夫人は、35歳+52歳=87歳

まで、統計上は生存します。

Aさん家は、子どもは独立して別のところに住居を構えるとしても、少なくともAさん夫人の平均余命である87歳まで(あと52年間)は、毎年、41万928円を払い続けることになります。

実に、41万円928円 × 52年間=2,136万8,256円 を支払うということです。

ただし、駐車場はAさん夫妻とも75歳に時に、自家用車は運転しないと決めているとすると、Aさん夫人が76歳から87歳までの12年間は、以下の出費が減ります。

駐車場代1年分(1万2,000円×12カ月)で14万4,000円
12年間では14万4,000円×12年間=172万8,000円

机上ではありますが、

2,136万8,256円 − 172万8,000円 = 1,964万256円(6)

これが、Aさんの家計からの出費になるのです。

マンション暮らしに必要な費用<入居時>

さらに、手元のチラシによりますと、

(7)修繕積立基金(引渡時一括)63万2,000円
(8)管理準備金(引渡時一括)2万5,200円

上記が入居時に必要だとのこと。合計は以下になります。

(7)+(8)= 65万7,200円(9)

マンション購入前に考えておくこと

つまり、このマンションを購入すると、Aさん夫人が平均余命の87歳まで住むためには、物件の購入費以外に、

(6)+(9)= 2,029万7 ,456円(10)

の出費が必要になるということです。

小規模な戸建て住宅なら、一軒、買えそうな金額でもあります。また、この金額は、将来値上がりする可能性もあります。

しかし、Aさん家の収入も増えれば問題ありませんが、将来、年金が主な収入になった時の対策は、今から練っておくことが必要でしょう。

それにともない、現在、約2,000万円(10)の全額が手元あれば、安心して、生涯暮らせるかもしれません。これから計画的に準備して、支払っておけばよいお金でもあります。

Next: 戸建ての場合はどうなる? 住宅は一生で一番大きな買い物



戸建て住宅の場合

Aさんがマンションを購入したのと同じ時期に、Aさんと同じ38歳で、戸建て住宅を購入したBさんがいたとしましょう。

Bさんにとっても、上記マンションの修繕などにかかる費用「約2,000万円」は、まったく必要のないお金とは言えません。

例えば、自宅に駐車のスペースが確保できなければ、駐車場を借りる費用が必要になります。修繕費にしても、マンションより費用がかかる場合もあれば、少なく済むこともあるでしょう。

修繕に関して、マンションを買ったAさんは以下の費用が必要でした。

(2)修繕積立金(月額)8,100円と
(7)修繕積立基金(引渡時一括)63万2,000円

住宅購入後、30年間、Aさん68歳までに支払う修繕のために積み立てる額は、

8,100円(2)× 12カ月 × 30年間 = 291万6,000円(11)
291万6,000円(11)+63万2,000円(7)= 354万8,000円(12)

仮にBさんが自主的に、自宅の修繕費を積み立てていき、30年後にAさんの積立金額354万8,000円(12)とほぼ同等の額を積み立てたとします。

Bさんはこの金額で、戸建て住宅をどのくらい修繕可能かは疑問です。また、安価な建売住宅を購入していれば、68歳頃に建て替えが必要かもしれません。

一方で、Bさんは修繕工務店から、修繕の提案セールスを受けても、ご自身の戸建て住宅ですので、ご自身の判断で「必要ない」とまったく修繕をしない選択もできるのです。

住宅購入は生涯で一番高い買い物

今回は、マンションの費用で、生涯どのくらい費用が必要なのかを計算してみました。

戸建て住宅を購入したとしても、戸建て住宅特有な問題があります。住宅購入は、生涯で一番高い買い物、と言われている所以でもあるのです。

もちろん購入マンションや地域によって金額は大きく変わりますので、住宅を購入する時、まずは生涯の家計収支の推移を検証してみることです。

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image by:WorldStockStudio / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2021年2月17日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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