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退職金の使い道は限られている。ローン完済や資産運用に回す前に知るべき困窮リスク=牧野寿和

退職金が入ったら何に使おうかと、夢を膨らませている方も多いでしょう。しかし、実は退職金の使い道は限られています。貯金するにしても、運用するにしても、リスクと一緒に考えることが必須です。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

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プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

退職金の使い道は限られている

退職金は、人によっては生涯でまとまったお金が手元に入る数少ない機会です。

退職金が入ったら、
・どのように使おう?
・どのように貯めよう?
・少しは使って残りは貯めておこう!
など、人それぞれ思い描いているでしょう。

ところが、退職金の使い道は限られています。

そこで今回は、退職金の使い道はなぜ限られているのか? また、それ以外に使うと老後の人生はどのようになるのか? 考えてみることにします。

基本的には「老後の生活資金」のためにある

退職金は、基本的には老後の生活資金として使うものです。

老後の生活に入ってもすぐには、現役時代と比べても食費や水道光熱費などの家計支出が極端に減少することはありません。むしろ、減少した項目を探す方が難しいくらいです。

一方、収入は公的年金のほかに、人によっては勤めていた会社から企業年金や個人的に老後のために積み立てた資金を含めても、通常、現役時代より収入は減少します。

そこで、生活を維持するために減少した収入を補うために使うのが退職金です。

タンス預金はNG!退職金の保管方法

では、退職金は生涯タンスにしまって保管しておくものでしょうか?

タンスにしまっておくのは不用心ですから、金融機関に預金しておくことになります。単に預金しておけば安心だという方もいるでしょう。

しかし、単に預金しておくだけでは、もったないという考えもあります。せっかく多額の退職金をもらったのだから、また長い老後の生活のための資金であり全額をすぐに使うものではないから、少しは退職金にも働いて欲しいと思っている方もいるのです。

その中には、退職金を元本が保証されていない金融商品である株式とか投資信託などで運用してお金を増やしてみたいという方もいるでしょう。

そこで、運用するとどのくらいお金が増えるのか実際に試算してみます。

Next: 運用するといくら増える?/退職金での投資家デビューが危険な理由



退職金を運用するとどれくらい増える?

元本500万円を、ある金融商品で10年間運用して、その結果、平均して年利1%、3%、8%で運用したとします。

なお、この計算は単純に、利息を複利で計算したのみです。通常、収益について税金、そのほか金融商品取扱金融機関に諸費用の支払いが必要です。

その結果は、次の通りです。

年利1%で運用できれば、利息が52万3,111円になります。
年利3%で運用できれば、利息が171万9,582円になります。
年利8%で運用できれば、利息が579万4,625円と、元本の2倍以上になります。

ただ、一度に500万円を投資して、10年間運用した机上の成果です。

この収益を多いと思うか少ないと思うかは、ご自身のこれまでの人生と家計運営の経験から評価できるものでしょう。

リスクも一緒に考えることが必須

ここからが大事なことです。元本が保証されていないということは、利息分の金額を損する可能性もあります。

具体的に上記の例で、10年後の手元の資金は、運用が1%、3%、8%の順に損失が出た場合は、

・500万円-52万3,111円=447万6,889円
・500万円-171万9,582円=328万418円
・500万円-579万4,625円=0円

計算上は上記の通りとなり、最悪の場合、老後の生活資金が消滅してしまいます。

つまり、元本が保証されていない金融商品で運用することは収益が上がる分、損失の分も考えておく必要があるのです。

この収益と損失の範囲(ぶれ)を「リスク」と言います。

最悪の場合は、投資したお金がなくなってしまう。投資したことで家計へ悪影響を与えないよう、このリスクを容認できる資金が必要です。そのため、老後の生活での株式や投資信託の運用は難しいのです。

従って、現役の時代に元本が保証されていない金融商品で運用したことはない方が、退職金を資金に初めて運用することは、心身が衰えていく中、大変危険だと言えるのです。

退職金は貴重な現金

「退職金で住宅ローンなど借金の完済に充てたら、老後の生活はどうなりますか?」と相談にみえる方もいます。

結論を言いますと、手持ちの現金が無くなります。

ローンを繰り上げ完済した後、突発的に現金が必要になった時、カードローンなどを利用してお金を借りることができるでしょう。

問題は金利です。通常、住宅ローンの金利より間違いなく高くなります。

例えば、ある金融機関で500万円を10年返済、年金利8.0%の融資で受けたとします。返済は、毎月60,664円、利息額227万9,656円になります。

老後の生活には大きな負担となり、最悪の場合、老後破綻になりかねません。

従って、現役中の返済を老後も続けるのであれば、現役中に家計支出を減らずなどの対策をしてその生活に慣れておき、老後の生活に支障がないようにすることも大切です。

Next: いつ資金が枯渇するかわからない。退職金の使い道は限られている



支出の根拠が明らかでないと使えない

よくお聞きすることに、退職金が老後の生活資金と言っても、老後の家計収支や貯蓄額の推移が把握できていないと、退職金が将来的に枯渇しないか心配で使うことができないということです。

そこで、この問題を解決するには、ご自身またはご夫婦の家計収支や貯蓄の流れを一覧表(キャッシュフロー表)を作成することです。

その表を参考にしながら使う計画を立て使うようにすれば、安心して生活もできるでしょう。

ただし、退職金の金額も限られています。従って、ほとんど生活費に使うことになるでしょう。

退職金は現金だからこそ運用する時間的な制約や金額にも限りもあり、退職金の使い道は限られているのです。

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image by:graphbottles / Shutterstock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2021年3月10日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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