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コロナ禍で投資を始めた人がやってはいけないこと5選。守れずに退場する投資家が続出=栫井駿介

株式市場は好調が続きます。新規参入者が増えていますので、初心者向けに「やってはいけないこと」5選をお伝えします。投資の世界では「これをすれば絶対に大丈夫」というものはなかなかありませんが、やってはいけないことは割と明白です。ぜひ心に留めておいてください。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従ことした後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

バリュー株の上昇が終わる時

株式市場は好調が続きます。特にここのところは、バリュー株への資金の流れが止まらず、相場を押し上げています。銀行株が上がっていることはその代表的な例です。

一方で、これまで好調が続いていたハイテク株・グロース株は伸びが一服しています。

金利上昇がその大きな要因ですが、金利上昇はグロース株以外にもマイナスの影響を与えます。金利が上がった方が良いのは銀行などの金融機関くらいのものです。

何が起きているのかと言えば、単純にローテーションではないかと思います。市場は常に新しいテーマを追う傾向があります。ハイテク株はもう食べ尽くしたので、他に何かないかと物色を始めたのです。中にはほとんど成長性が見られないような株も上がっています。金あまりのなせる業です。

バリューのターンがどこまで続くかはわかりません。ただ、これらの銘柄の特徴は「割安感が解消された」と感じられた時点で終わることは確かです。何年も続くものではありません。

一方、業績が伸び続ける企業であれば、ローテーションなど読む必要はなく、持っているだけで株価は上昇を続けます。私がやろうとしているのはこんな株を見つけることです。決してローテーションの流れを読むことではありません。

相場の流れが変わるとついあちこちに浮気してしまいたくなりますが、株価の動きが正確に読めるものではない以上、いつも勝てる投資はありません。

だからこそ私は、愚直に割安で成長する株を探し続けます。大切なのは目先で儲けることではなく、最後にしっかりと立っていることです。

投資初心者が絶対にやってはいけない5つのこと

この記事は多くの初心者の方も見ていますので、改めて、初心者が「やってはいけないこと」をまとめてみようかと思います。

投資の世界では「これをすれば絶対に大丈夫」というものはなかなかありませんが、やってはいけないことは割と明白です。ぜひ心に留めておいてください。

「やってはいけない」その1:イナゴ投資

普段取引の少ない銘柄に材料が出ると、突如多くの投資家が群がり、株価を押し上げることがあります。中には、意図的に材料を作り上げるためにSNS等で盛んに銘柄を叫ぶ人もいます。

しかし、いずれにしても中身に乏しい材料だったり、株価が上がりすぎたりすると、あっという間に株価は元の水準まで下がるものです。

このような銘柄に群がる多くの投資家を「イナゴ」、出来上がったチャートを「イナゴタワー」と呼びます。

瞬間的に儲ける「上手い人」、あるいは煽った張本人はうまく逃げ切れて大きな利益を手にするかもしれませんが、その他多くの「イナゴ」は損失を押し付けられる羽目になります。

特に初心者は何が起きているのかもよくわかりませんから、下がり続ける株を見てただ呆然とし、含み損だけが残るパターンが珍しくありません。

何より、単に株価が上がっているという理由だけで飛びついたり、誰かの言っていることをそのまま信じて投資するとろくなことにはならないことをよく示しています。

Next: 株価を見過ぎてはいけない/人生を破綻させる信用取引の甘い罠



「やってはいけない」その2:株価の動きにばかり気を取られる

取引を始めたばかりだと、つい自分の銘柄の損益が気になって、何度も株価をチェックしてしまいがちです。

しかし、損益を気にしたところでなんの解決にもなりません。もし下がっていて気を揉んでも、次の瞬間上がっているなんてことも往々にしてあるからです。もちろん、その逆もあります。

これを繰り返していたのでは精神が持ちません。

株価を気にして意味があるのは、秒単位で動きをチェックし、瞬時に取引を行うデイトレーダーの場合です。彼らは常に動きに集中し、反射的に取引を行います。そこまでしないと儲けられない厳しい世界だからです。

もしあなたが普通の兼業投資家なのだとしたら、彼らに勝てる可能性はほとんどないでしょう。したがって、兼業なら少なくとも数週間単位以上で取引を考えるのが得策です。

ちなみに私は数年単位の長期投資家なので、取引時間中に株価を見ることはほとんどありません。これが精神衛生上最も良いと考えます。

「やってはいけない」その3:信用取引

信用取引は、証券会社からお金を借りて、自己資金の最大約3倍までの取引を行うことです。単純に言えば、3倍の取引で利益は3倍、損失も3倍になります。

自己資金が少ない人にとっては、少しでも効率よく儲けようと考えてつい手を出してしまいがちですが、あまりおすすめできるものではありません。株の世界はそんなに簡単に儲けられるほど甘くありませんから、現物での勝ち方もわからないのに、損失が3倍になる取引を行うなんて、恐ろしい話です。

信用取引は、人間の心理と結びつくとより厄介なものとなります。損失が膨らむと、やがて自己資金が不足し「追加証拠金(追証)」が求められます。その時点で取引を解消すれば、損失は確定しますが借金が残るわけではありません。

ところが、人の心理はここで諦められないものです。損失を確定させたくないがために、無理して追証を払う投資家があとを絶ちません。やがては生活費や、消費者金融にまで手を出してしまう人もいます。こうして人生を破綻させてしまいかねないのです。

もちろん、例えばどうしても買いたい銘柄があるのに余力がない場合に一時的に使うなど、使い方によっては便利な制度でもあります。

しかし、それは投資の「いろは」をわかっているから使えるのであって、最初から楽をしようと思ってはいけません。まずは自己資金を貯めることから始めるのが得策です。

「やってはいけない」その4:空売り

空売りも信用取引の一種ですが、要するに株価の下げを予測して儲けようとする手法です。

株価が上がりすぎている銘柄を見るとつい「下がるだろう」と考えて空売りを仕掛けたくなりますが、そんなに簡単ではなりません。

なぜなら、大きく上がる銘柄にはどんどん新たな投資家が群がってきますから、その上げはかなりしつこいです。もう下がるだろうと思っても、そこから2倍になるなんてこともザラです。

これも信用取引と同様に、ヤバいと思ったらすぐに逃げることが肝心なのですが、慣れていないとなかなかできるものではありません。

さらに、空売りで怖いのは、損失に限りがないということです。現物取引なら最悪0になって終わりですが、空売りの損失は株価に上限がない以上「無限大」です。「買いは家まで、売りは命まで」という格言すらあります。

株価は企業の成績表とも言えますが、それを頑張って上げようとしているところに「下げを狙う」というのは、あまり好ましい物ではないように思います。

できれば、成績を上げることを期待していたいものです。

Next: 株ブームに乗っかるのは危険!多くの個人投資家は負けて退場する



「やってはいけない」その5:みんなが騒いでいる時に買う

「靴磨きの少年」という話があります。普段は株の話などしないような人までもが株の話をするようになったら、株価は天井が近いという格言です。

この頃には、相場が上昇して株を買った多くの人がホクホク顔になっています。それを見た多くの初心者も参入したくなるということです。

しかし、その時には株価は割高になっており、先に買った人たちは今か今かと売り時を探っているのです。

そんな時に何も知らずにやってきた初心者は、絶好の「カモ」ということになるのです。こうして新たな参入者がいなくなった時が、相場の天井になるのです。

投資を始めていきなり天井をつけ、あとは含み損となってしまったら、もうやる気が起きないでしょう。これが多くの個人投資家が「負け」で終わる最大の理由だと考えます。

もちろん、本当はそれでも諦めなかった人こそが、長い目線で見れば報われるのですが。

さて、ネット証券の口座開設は1~2月が盛況、この3月はさらに加速しているとのことです。これがさらなる上げ相場を演出するのか、はたまた「靴磨きの少年」なのか、注意深く見守っていたいところです。

もちろん、どんな時も「割安な成長株」を探すという当社の方針は不変です。


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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2021年3月22日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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