よくテレビCMやネット記事などで「つみたてNISAは初心者向き」と紹介されているのを目にします。しかし、初心者は安易に手を出さない方が良いでしょう。『教育貧困にならないために』川畑明美)
ファイナンシャルプランナー。2人の子どもと夫婦の4人暮らし。子育てをしながらフルタイムで働く傍ら、投資信託の積立投資で2,000万円の資産を構築。2013年にファイナンシャルプランナー資格を取得。雑誌を中心に執筆活動を行う一方、積立投資の選び方と積立設定までをマンツーマンで教える家計のコーチング・サービスを展開している。
つみたてNISAは初心者向きではない
私は生活費の6ヶ月分の貯金があれば、残りはすべて投資に回して良いと考えています。もちろん、その投資先は分散して、安全性を高めることは基本です。
なので、非課税枠が小さい「つみたてNISA」はあまりお勧めしていません。
家計によっては、夫はNISAを利用して、扶養の範囲で働いている妻はつみたてNISAにするなど、家族間で分けるのは良いと思います。若い世代も、月に5~10万円もは投資できませんので、つみたてNISAを利用するのは良いでしょう。
ただし、つみたてNISAを利用するうえでは、いくつかの点に注意しなければなりません。
よく雑誌やネットで検索すると、つみたてNISAは「初心者向き」と書かれているのを目にします。
つみたてNISAは、金融庁の基準を通った投資信託となっています。金融庁の基準とは、「金融機関に有利な投資信託を排除」になっているだけで、安全性が高いということではないのです。
なぜ「つみたてNISA」制度ができた?
これはNISA制度が誕生した頃に遡って、解説しなければなりません。
NISA制度ができた時に、金融機関は一斉にCMを流しました。投資が身近になるのは良いことだと思って私は見ていたのですが、NISA口座で失敗した方の相談がとても増えたのです。
多くの相談者は、金融機関でNISAをはじめたら、投資信託がマイナスになってしまった……という相談でした。勧められて購入した銘柄を見ると、手数料がたっぷり乗っているモノばかり。
他にマシな投資信託はないか、一緒にネットで調べてみると、手数料の少ない投資信託はほとんど見当たりませんでした。投資信託の手数料は、販売会社に入る手数料が実は多いのです。
鳴り物入りではじまったNISA制度ですが、フタを開けてみたら、金融機関の儲けの手口になっていたのです。
もちろん、すべての金融機関が儲けの手口に使っていたのではありません。金融庁はNISAのひどい現状を見て、自らが投資信託を選定した「つみたてNISA」を誕生させたのです。
Next: つみたてNISAに落とし穴。「やってはいけない」3つの行為とは?
つみたてNISAのラインナップは「リスクが大きい」
ここまで、つみたてNISAで購入できる投資信託は、金融庁が金融機関に都合の良い商品を排除したラインナップになった経緯をお伝えしました。
つまり、初心者にとって「リスクが少ない投資信託ではない」ということです。
つみたてNISAでは、手数料が安い下記のラインナップになっています。
・インデックス型
・バランス型
・アクティブ型
・ETF(上場しているインデックス型)
そしてインデックス型は、株式の指数に連動するものしかありません。つまり、どんな時でもトータルではプラスになるポートフォリオを組むのは難しいのです。
なので、預貯金が十分にあるのでしたら「年間40万円ならばリスクは大きくしましょう」ということなのです。つまり、初心者向けではなく「リスクは大きい」ということなんです。
生活費の6ヶ月分の貯金があれば、それ以外はすべて投資に回す。その手法は、つみたてNISAは向きません。
どうやって活用する?
では、どうやって「つみたてNISA」を活用するのがよいのか。
預金が生活費の2年分くらいあるならば、余裕資金で「つみたてNISA」を始めることです。
そして、はじめたら「20年間は売却しない」つもりで取り組むことです。少額ですが20年間の非課税期間がありますから、「複利効果」を効かせることで大きくお金を増やせるのが「つみたてNISA」の魅力です。
投資に大きな金額を回せない若い世代や、扶養の範囲内で働く方には向いています。長期で複利効果を効かせるのが、つみたてNISAのベスト投資方法ですから。
つみたてNISAで絶対にやってはいけない3つのこと
次の3つは、絶対にやってはいけません。
1)商品を頻繁に変更してはいけない
2)購入したら、売ってはいけない
3)リスクを考えずに商品を選んではいけない
この中で最も重要なのは、(3)の「リスクを考えずに商品を選んではいけない」です。商品を変更したり、売却もできませんので、最初の選び方が重要になります。
投資のリスクは、投資する国や投資する資産によって変わります。一般的には、「国内 → 先進国 → 新興国」の順、「債券 → 不動産 → 株式」の順でリスクが高くなっていきます。
債券や不動産単体の投資信託は、つみたてNISAでは購入できません。なので、自分のリスク容認度に合わせて、国内・先進国・新興国の株を選ぶとよいでしょう。
『教育貧困にならないために』(2021年4月13日・14日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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