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ビットコイン700万円突破の裏にあるもの。不動産・アート・金ほか現物資産を巻き込み主役の座へ前途洋々=高島康司

仮想通貨の急激な上昇が続いているが、このトレンドはまだまだ続きそうだ。通貨供給量の増大によるインフレ懸念が大きな理由として挙げられている。さらには、現物資産のトークン化が進んでいるので紹介したい。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)

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なぜ仮想通貨は上がり続けているのか

ビットコインを中心とした仮想通貨の上昇の勢いが強い。近い将来の全面的な大暴落を懸念する声はあるものの、投資銀行などの機関投資家を含め、相当な資金が仮想通貨の市場に流れているものと思われる。

その背景のひとつになっているのは、IMFの「SDR8特別引出権」の枠拡大を含めたアメリカなどの主要国における通貨供給量の増大である。各国が実施している巨額の経済対策がこの原因だ。

これは通貨価値下落によるインフレ懸念を生んでおり、これを回避するために仮想通貨に投資が流れていることが背景にある。

通常インフレは、通貨供給量の増大だけでは起こりにくいとされている。需要が供給量を上回る需給ギャップがあり、その状況で通貨供給量が増大した場合にインフレは起こりやすい。

いまアメリカを中心に各国が実施している経済対策の効果で、経済の急速な回復が顕著になっている。GDPの成長率は著しい。

筆者のもうひとつのメルマガにも書いたが、以下のようになっている。

   2020年 2021年
中国: 2.3%  8.4%
米国: -3.5%  6.4%
日本: -4.6%  3.3%

特にアメリカを中心に見ると、この急速な回復は次のような要因によってもたらされている。

<米国経済「急成長」の要因>

1. 巨額の経済政策
2. ウイルス接種の進展による社会活動の再開
3. 相場の上昇による消費拡大
4. FRBの金融緩和策

これは、経済の急速な回復によって需要が大きくなり、需給ギャップが生まれつつある状況を示している。経済対策実施に伴う、かねてからの通貨供給量の増大とあいまって、実際にインフレを引き起こしている。これは特にアメリカで顕著だ。

【関連】最強経済を謳歌する米国で始まった「強烈なインフレ」は世界と日本に何をもたらすか?=高島康司

もっともインフレ率が高い物品では、以下のようになっている。

鉄鋼:22%
石油製品:11%
住宅:13.4%(6月の見通し)
材木:100%から300%(地域による)

特に鉄鋼、石油製品、材木などは他の製品の原材料となるので、全体に物価水準を押し上げるインフレ要因となっている。

Next: 仮想通貨の上昇はまだ続く? 現物資産の「トークン化」が進行中



仮想通貨の上昇はまだまだ続く

このようなインフレ率の予想を越えた上昇は、構造的なデフレの状況にある日本を除き、主要各国で徐々に見られるようになっている。この動きはさらに加速する懸念さえ出てきた。

これは、法定通貨の価値が下落している状況だ。

世界の投資家はこれを嫌い、安全な現物資産に資金を移動させているのが現状である。その結果、ゴールドやシルバーなどの希少金属とともに、仮想通貨にも投資が流入している。

これが、仮想通貨の相場上昇を支えている全体的なトレンドだ。ワクチン接種の拡大によって新型コロナウイルスのパンデミックも次第に落ち着きつつある地域もあるが、主要各国政府による巨額の経済対策は、今後も継続することは間違いない。

ということでは、インフレによる通貨価値の下落を懸念して仮想通貨に投資が流れる…といういまのトレンドは、今後も継続する可能性は高い。

ビットコインを中心とした仮想通貨の上昇はまだまだ続くものと思われる。

現物資産の「トークン化」が進行中

続けて、現物資産のトークン化が進んでいるので紹介したい。

過去に当メルマガでも紹介した「NFT」は、アート作品や音楽、また「クリプトパンク」と呼ばれる絵文字のような、デジタル化されたアイテムを対象にしていた。こうしたアイテムの所有権と鑑定書をセットにしたものを、ハッキングが実質的に不可能な安全なブロックチェーンに登録し、これをオークションなどで売買するというものである。やはり「NFT」の対象はデジタル化されたアイテムが中心だ。

【関連】高額落札が続出。日本はデジタル資産「NFT」革命の大波に乗れるか=鈴木傾城

これと同じ方法を、希少金属、不動産、そして絵画や彫刻などの現物資産に適用して、それらの資産の流動化を図るのが、現物資産のトークン化という手法である。

この分野はこのメルマガの以前の記事でも紹介した「分散型金融(DeFi)」の有力な一分野となっており、現物資産の種類に応じてさまざまなプロジェクトが立ち上がっている。

現物資産のトークン化のコンセプトは、「NFT」とかなり類似している。対象となる現物資産の所有権を細かく分割してブロックチェーンに登録し、トークンを発行する。このトークンを売買することによって、分割された所有権の取引が可能になるという仕組みだ。

では、「NFT」とはどう違うのか。「NFT」の取引は、共通の決済手段であるイーサリアムが使われる。それに対して現物資産のトークン化では、それぞれの現物資産の所有権に対応した独自なトークンが発行されることになる。このトークンをやり取りすることで、所有権の移転が行われるのだ。

これが現物資産のトークン化の手法だが、これには次のようなメリットがある。

Next: 注目されつつある現物資産のトークン化、4つのメリットとは?



現物資産のトークン化「4つのメリット」

現物資産のトークン化には、次のようなメリットがある。

<(1)価値の大きな現物資産の流動化>

絵画や彫刻などの芸術作品、またホテルやオフィスビルなどの大きな建物などの不動産のような対象には、高額なものが多い。これらは所有権の分割はできず、一括して売買しなければならないので、これを買える投資家は限られている。そのため流動性は低い。

所有権を分割してトークン化すると、投資対象となる最小単位の金額が相当に小さくなるので、投資しやすくなる。100億円の物件も、10万の所有権に分割できれば、10万円から投資が可能だ。これで高額な物件の流動化が促進される。これによって、高額物件の市場価値は一層高まることが期待できる。これは大きなメリットだ。

<(2)取引の迅速化と円滑化>

高額の投資物件を従来の方法で取引のするためには、多くの繁雑な手続きを経なければならない。弁護士の立ち会いのもとでの売買契約書の署名や、銀行を介した現金決済などである。

ところが、高額物件の所有権を分割し、これをトークン化すると、プログラムの自動実行機能を実装したイーサリアムのブロックチェーンの「スマートコントラクト」などを使える。すると、売買契約の実行は自動化できる。さらに発行されるトークンは、スマホやコンピュータにインストールされるウオレットを介して取引されるので、所有権の移転も取引手数料なしに一瞬で行うことができる。

<(3)所有権移転の追跡可能性>

発行されたトークンの取引履歴はすべてブロックチェーンに記録される。これをハッキングし、外部から改ざんすることは実質的に不可能に近いと見なされている。このため、高額物件の所有権移転の履歴がすべて追跡可能になる。紛失や偽造の恐れがある文書による管理の必要性はない。現物資産のトークン化は、もっとも安全な所有権の記録を提供する。

<(4)国境などのバリアーの排除>

不動産などの高額物件では、国境をまたいだ投資には、さまざまな手続きが必要になる場合が多い。大抵は原地のエージェントとの契約が必要になるので、手数料もばかにはならない。もし高額物件のトークン化が可能になれば、それこそ仮想通貨を買うような容易さで、こうした物件の取引ができてしまう。これは仲介手数料の必要性もないので、取引コストは非常に安い。

Next: いままさに、現物資産のトークン化が進んでいる分野とは?



現物資産のトークン化が進んでいる分野

これが現物資産のトークン化のメリットである。次に、トークン化が進んでいるいくつかのエリアを見てみよう。以下のような分野でトークン化が進行している。

<(1)ゴールドのトークン化>

いまトークン化が進められている分野のひとつが、ゴールドである。ゴールドはあらゆる単位に分割が可能なので、所有権を分割するために使われるトークン化という手法がなぜゴールドに導入されるのか分からないという印象を持つかもしれない。しかしながら、トークン化のメリットはとても大きいのだ。

ゴールドの取引の場合、問題になるのがゴールドの安全は保管場所である。もちろん銀行の貸金庫のような施設を使うこともできるが、それなりの手数料を支払わなければならない。このようなとき、所有権をトークン化して、それをウオレットに保管すると、ゴールドを物理的に所有する必然性はなくなる。トークンによるゴールドの所有権が保証されているからだ。

<(2)不動産のトークン化>

ゴールドと並んでトークン化が期待されている分野が不動産である。土地などは小さなな単位に分割が可能なので、あえて所有権をトークン化して分割する必要性はないように思うかもしれないが、実はそうではない。不動産の取引には相当な仲介手数料がかかる。国によって異なるが、ときとして手数料は不動産価格の3%を越えることもある。これはあまりに高額な手数料だ。

そこで不動産をトークン化し、これをウオレットで取引できるようになれば、この大きな仲介手数料を削減することができる。不動産のような高額な資産では、こうしたトークン化のメリットはとても大きい。

<(3)芸術作品のトークン化>

トークン化による所有権の分割が期待されるもうひとつのエリアが芸術作品である。また、仲介者による取引手数料も要求されないので、大幅な取引コストの削減も実現できる。これで高額な芸術作品の高い流動性が実現できるので、芸術作品の市場は活性化するはずだ。

すでに稼働しているプロジェクト

これが、現物資産のトークン化の現状だ。この分野ですでに稼働しているプロジェクトをいくつか紹介しよう。

この分野の多くのプロジェクトは、さまざまな現物資産のトークン化を行い、これを販売するプラットフォームだ。したがって、現物資産をベースにしたトークンはその都度発行しているものの、プラットフォーム自体の独自はトークンの発行はしていないところが多い。また、分割した現物資産の所有権をすべてビットコインやイーサリアムのような既存の仮想通貨で販売しているところもある。

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image by:ivan_kislitsin / Shutterstock.com

ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2021年4月2日号より一部抜粋
※記事タイトル・リード文・本文見出しはMONEY VOICE編集部による

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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。

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