マネーボイス メニュー

日米株価「格差」は続く。首脳会談で見えた急落要因、日経平均はいったん2万7000円も=馬渕治好

今週も米国株価が堅調で日本株はもたもたすると予想されます。ただし、先週の米国株が、実体経済の改善と金利低下という「でき過ぎ」の相場展開であったために、特に悪材料なく米国株価が反落する恐れは短期的にあると懸念します。もしそうなれば、実態面での好材料が乏しい日本株は、ひとたまりもありません。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2021年4月18日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2021/04/18号より

過ぎし花~先週(4/12~4/16)の世界経済・市場を振り返って

<米国株価は裏付けを伴った堅調展開、日本株は予想通りとは言え残念な不振>

先週も、総じて米国株は堅調に推移しました。その背景要因は、3月分の経済統計が想定以上に好調であったことで、裏付けのあった株価上昇だったと言えます。また、米長期金利が経済指標の強さにもかかわらず低下気味で、これは米連銀の「粘り勝ち」だったとの指摘も聞こえます。
一方日本株は、週を通じてほぼ横ばいとなり、予想通りとはいえ、冴えない動きでした。特に企業決算に対する警戒感が強く、企業が今期の収益見通しを強めに出しても、株価が売られる展開が優勢となりました。この背景には、国内での新型コロナウイルス感染症の流行に対する警戒もあったと推察されます。

※詳細解説は有料メルマガで読めます → いますぐ初月無料購読!

来たる花~今週(4/19~4/23)の世界経済・市場の動きについて

今週は、米国での企業決算発表が、これまでの金融中心から一般事業会社に広がります。日本ではまだ序盤ですが、3月本決算企業の発表が始まります。

企業収益予想値は、「過ぎし花」で述べたように、日米ともにアナリストの上方修正が優位ですが、米国の上方修正度合いに比べて、いまだに日本は見劣りします。このため、実態を踏まえると、今週も米国株価が堅調で日本株はもたもたすると予想されます。

ただし、先週の米国株が、実体経済の改善と金利低下という「でき過ぎ」の相場展開であったために、特に悪材料なく米国株価が反落する恐れは短期的にあると懸念します。もしそうなれば、実態面での好材料が乏しい日本株は、ひとたまりもありません。

<詳細解説>

今週は、米国では1~3月期の企業決算の発表が続きます。先週は金融(銀行、証券)が中心でしたが、今週からは一般事業会社の発表へと広がり、発表する社数も増えてきます。

米国のマクロ経済統計の主なものでは、4/22(木)に中古住宅販売件数、4/23(金)に新築住宅販売件数(ともに3月分)が公表予定です。今のところ、中古住宅販売件数の3月の前月比は1.1%減、新築住宅販売件数は同14.2%増と、まちまちの結果が予想されています。

「過ぎし花」で述べたように、米国ではマクロ経済も企業収益も改善傾向を明確にしており、その点からは今週も米国株価の続伸が期待されるところです。一方で、これも前述のように、先週は景気回復と金利低下といった好材料が揃い、「でき過ぎ」だったという感も強かったため、今週かどうかわかりませんが、短期的に一旦米国株価が小反落ないし上げ止まりの様相を見せるとの警戒も必要でしょう。

日本では、3月本決算企業の収益発表が増えてきます。ただ、今週はまだ発表社数が少なく、発表が本格化するのは来週以降です。

日本ではまだ景気や企業収益の先行きに対する警戒感が完全にはぬぐえず、残念ながら今週も日本株は米国株に劣後しそうだと懸念します。特に、米国株価の上昇以外に好材料が見出しにくいため、もし筆者が警戒しているように短期的な米国株価の反落が生じれば、日本株の下振れ度合いはかなり大きくなる恐れがあります。

金融政策を決定する会合としては、4/22(木)にECB(欧州中央銀行)理事会が開催されます。今回は、特に金融政策の変更はないでしょう。

Next: 今後の展開は?「台湾」が盛り込まれた日米首脳会談の共同声明



盛りの花~世界経済・市場の注目点

<「台湾」が盛り込まれた日米首脳会談の共同声明>

菅首相が、日米首脳会談のためワシントンを訪れ、4/16(金)に日米首脳会談に臨みました。首相は、現地時間で4/17(土)に米国を発っています。

公表された共同声明では、「尖閣諸島」「東シナ海」「南シナ海」と具体的な地域を挙げて、中国をけん制ないし批判しています。また、特に台湾情勢については、日米両国が「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記し、また人権問題に関して「香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する」と述べられています。

このように台湾について日米首脳会談の共同声明に盛り込んだのは、1969年の佐藤・ニクソン会談以来のことで、当時はまだいわゆる「日中国交正常化」(日本が公式に中華人民共和国を一つの中国政府と認める)の前でした。

こうして日本を米国の同盟国として、共同で中国に厳しく対するべきだ、と共同宣言でうたわれた背景には、もちろん、米国の明確な意思があります。しかし日本側は、確固たる展望を持って、この事態に臨んでいるのでしょうか。

「みんなニコニコ平和に仲良くしましょう」「事態が悪化したら、黙って態度を明確にせず、穴に隠れて何か月かじっと静かにしていれば何とかなる」という姿勢で日本が済ませられるような状況ではなくなってきている、という認識が必要でしょう。

米国とともに、日本が中国に対して、人権問題や領土的野心にきっぱりと否定的な姿勢を示すことが求められている現状であり(求められていなくても、日本自身の意思でそうすべきだと思いますが)、それが日本の中国関連のビジネスに悪影響を与え、日本の経
済や企業収益に打撃になる、ということは、かなりありそうです。

筆者は、すぐに中国が台湾に軍事侵攻する、などと予想しているわけではありませんが、日本が対中姿勢を厳しくすれば、日本製品の不買運動が中国で起こったり、現時点で中国が豪州に対して、銅鉱石などの輸入通関を意図的に遅らせて嫌がらせをしている、という観測が浮上していますが、それと同様のことを、日本に対して中国が仕掛けてきたりすることはありえます。

その際に日本政府が、「企業のことは企業に任せた」として、何らの支援策(中国以外の国向けの輸出支援や、国内経済の刺激策など)も取らないで放置することが憂慮されます。また、中国での日本企業の生産に支障が生じた場合に、企業の調達先を切り替えることを、日本政府が積極的に助けることをしない恐れも感じられます。

今、日本の株価の頭が重い背景に、日中関係の悪化を内外の投資家が懸念している面がある、というより、そうなった場合に日本政府も日本企業の経営もただおろおろするだけ、という事態を投資家が心配しているように、感じられて仕方がありません。

中期シナリオ結論

主要国の株価は、長期上昇基調にあると考える。ただし、2月辺りまでの株高は急速過ぎたため、短期的には主要国の株価がまだ下押しする恐れが残っている。

<短期展望~2021年4月まで>

2月までの株高は、勢いだけが頼みの、危ういものであった。それは主要国の株価全般でも行き過ぎがあったし、物色に偏り(歪み)があり、米国ではGAFAをはじめとするグロース株(成長株)やナスダック銘柄ばかりに買いが集中しており、日本では日経平均がTOPIXに対して大いに買われていた。また、米国株より日本株の上昇力が高かった。

一方で、足元の主要国の経済指標は、昨年4~5月で大底を付けて回復基調にはあるものの、最近では回復一服、ないし反落の様相を強めていた。それと比べて、2月までの株価は行き過ぎであったと判断される。加えて日米比較では、どちらの国でも企業収益のアナリスト予想値は上方修正が続いているが、米国に比べて日本の上方修正の度合いは小幅で、日本株の優位性は正当化しにくかった。

そうした行き過ぎた株価の反落(一種の「正常化」)は、株式市場全体でも、物色面でも、2月後半から3月にかけて進んできた。ただし投資家の強弱感は様々で、大きな材料が無くても売り買いが交錯し、一本調子の株価下落とはならなかった。

こうした株価反落(正常化)の進展は、まだ不十分であり、日米等の株価は、一段の下落の余地が残っていると考える。ただし、当初の見通しに比べ、米国の財政政策、コロナ対応策、連銀の金融政策は、経済正常化に向けて想定以上に大胆に打ち出されており、ニューヨークダウ工業株指数の短期調整時の最安値は、せいぜい3万1,000ドル程度にとどまろう。

日本株についてはとりわけ想定外の好材料はないが、米国株価の堅調さが日本株もある程度支えると見込まれ、日経平均の目先の最安値は2万7,000円程度と予想する。

Next: 「3万円前後まで戻る」2021年末までの中長期展望



<中長期展望~2021年末に向けて>

経済や企業収益の回復は、かなり明確になってきた。ただし、回復基調は、これから極めて緩やかだろう。したがって、だいぶ将来までの企業収益回復を織り込んでいる株価の高さと、実体経済の低空飛行の差が、高PERという形で表れている。だから株価が基調として下落に向かうかといえば、そうではなく、市場は、上の位置で実体経済・企業収益が追い付いてくるのを待つだろう(結果として、時間をかけてPERが低下する)。主要国の財政・金融政策も、景気と株価の下支えに働いている。

2021年を通じて、主要国の株価や外貨相場(対円)は、短期的な上下の振れを繰り返しながらも、諸データに示される緩やかな世界経済の回復を踏まえながら、基調としては、持ち合いに上昇の色合いがついたような、じわじわとした株高・外貨高傾向を続けるだろう。

ただし日米の株価の先行きを比べると、米国では、大幅な企業収益予想値の上方修正幅に比べ、株価の上昇速度は緩やかで、結果として予想PERが低下傾向にある。すなわち、株価の上昇が企業収益の実力に比較して控えめな分、株価のさらなる上昇余地がある。一方日本は、企業収益予想値の上方修正幅を上回る株価上昇を示したため、予想PERが明確な低下傾向を示していない。つまり、株価の上昇は企業収益の実力に比べて行き過ぎており、今後は日本株が米国株に劣後するものと懸念される。

日経平均株価は、短期底値形成後は、年末に3万円前後まで戻るにとどまろう。ニューヨークダウ工業株指数は、年末に3万5,000ドル程度に達すると予想する。

外国為替相場については、徐々に世界経済が明るさを増す中で、外貨高・円安基調を見込む。外貨の中では、投資家のリスク回避姿勢が薄らぐと期待されることから、これまで優位であった米ドルより、ユーロや豪ドルなど、非米ドル通貨の方が、対円での上昇力が高いと予想する。

続きはご購読ください。初月無料です

理解の種~世界経済・市場の用語などの解説:ゴールデンウィーク前後の円相場

脇道の花~道草の話題:食物繊維

※この項目は有料メルマガ購読者限定コンテンツです →いますぐ初月無料購読!

※もうひとつのメルマガ『馬渕治好の週次メモ「時の花」』も好評配信中。毎週の日経平均株価と米ドル円相場の見通しを、数値を挙げて解説します。前週の見通しと実際の相場を比較し、予想が当たったか外れたかがわかるようになっています。注目される図表を取り上げる「今週の一枚」のコーナーも。登録初月(登録日から月末まで)は無料で読めますので、ぜひお試し購読をどうぞ。


※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2021年4月18日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した項目もすぐ読めます。

【関連】昨春の相場暴落から1年、フラッシュクラッシュ再来はあるか? 発生の仕組みと対策=今市太郎

【関連】「米金利上昇で株価下落」は古い?下げ相場しらぬ新人投資家が波乱要因、今後の2シナリオ=栫井駿介

【関連】ユニクロで読みとく日経平均バブルの賞味期限。ファストリ株10万円超は割高か否か?=栫井駿介

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2021年4月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」

[月額1,650円(税込) 毎週日曜日(年末年始を除く)]
最新の世界経済・市場動向をさぐる「ブーケ・ド・フルーレット」(略称:Bdフルーレット)。この代表である馬渕治好が、めまぐるしく変化する世界の経済や市場の動きなどについて、高水準の分析を、わかりやすく解説します。馬渕が登場するTVや新聞・雑誌コラムなどと合わせて、当メールマガジンも是非ご覧ください。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。