野村ホールディングス決算について解説します。約2,500億円の損失を計上しながら、税引前利益2,307億円を稼ぐ野村の底力を示したと言えるのではないかと思います。アルケゴスの件では世間を大きく騒がせることになりましたが、野村は面白い会社になりつつあると思いますし、日本の大手金融機関の中では圧倒的に将来性があると考えています。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)
投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきかを、この記事の著者で、元証券会社社長で現在も投資の現場の最前線にいる澤田聖陽氏が解説します。視聴方法はこちらから。
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2021年5月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
損失2,500億円も底力見せた野村ホールディングスの決算
野村ホールディングスが4月27日、2021年3月期の決算を発表しました。
売上(金融費用控除後):1兆4,019億円
税引前利益:2,307億円
当期純利益:1,531億円
税引前利益の部門別内訳は以下のとおりです。
国内営業部門:923億円
アセットマネジメント(AM)部門:742億円
ホールセール(HS)部門:643億円
アルケゴスに関わる損失については、2021年3月期4Qに▲2,457億円(▲約23億ドル)を計上、2022年3月期1Qに▲約620億円(▲約5.7億円)を計上する予定です。
約2,500億円の損失を計上しながら、税引前利益2,307億円を稼ぐ野村の底力を示したと言えるのではないかと思います。
アメリカで大きく稼ぐホールセール部門
私は野村ウォッチャーであり、野村の決算は新卒で証券会社に入社したころからずっと四半期ベースで見ています(野村の決算を見ることはマーケット分析に有用だと思っています)。
2021年4Qはアルケゴス関連の損失という特殊要因によって、アメリカでのHSの収益が大きくマイナスになりましたが、4半期ベースでHSの収益を見ていると野村のHSの最大の稼ぎ場所はアメリカ(米州)ということになるかと思います。
以下は、2021年3月期の1-3Qの各地域別HSの収益です。
(単位:10億円)
1Q:米州 92.1 日本 66.4 欧州 58.8 アジア 31.4
2Q:米州 95.2 日本 58.6 欧州 33.5 アジア 33.0
3Q:米州 80.5 日本 66.1 欧州 35.8 アジア 40.7
ちなみに4Qは以下のとおりです。
米州 ▲126.0 日本 52.9 欧州 37.2 アジア 35.2
HSは大きく分けてインベストメントバンキング(IB)業務とグローバルマーケット(GM)業務に分けられます。
GM業務はフィクスト・インカム(債券、証券化商品等)とエクイティ(株式等)に分けられますが、今期については米州と欧州での債券や証券化商品で安定的に稼げています。
エクイティについても3Qまでは好調でしたが、4Qでアルケゴス関連の損失を計上することにより収益が大きく悪化しました。
IB業務では年間収益1,158億円と前期比35%増と非常に好調でした。
M&Aが活発であり、国内外の業界再編の伴うクロスボーダー案件(国境を跨ぐ案件)のアドバイザリー業務が好調だったようです。(セブン&アイの米Speedway買収など)
このようにHSは、GM業務でアメリカでの収益基盤が確立し、IB業務ではクロスボーダー案件で稼げるようになっているなど、野村はグローバルな金融機関としてのプレゼンスが明確になっていると言っていいでしょう。
Next: グローバルな金融機関に成長した野村。アルケゴス損失で評価できる面も
グローバルな金融機関に成長した野村
金融においてアメリカの市場規模は圧倒的であり、アメリカで稼げない金融機関はすべてローカルな金融機関と言っても過言ではない状況になっていると思います(特に証券業務は)。
もちろんゴールドマン・サックス(GS)やモルガン・スタンレー(MS)などのバルジブラケットと言われるアメリカを本拠とする大手金融機関にはまだ足元にも及びませんが、野村はすでにアメリカで一定のプレゼンスを確立しています。
アルケゴス損失で評価できる面も
アルケゴスの件についても、有名な投資銀行の多くが取引をしており、結果としては大きな損失を計上することになりましたが、日本の金融機関で唯一と言っていいほど深く取引しているメンバーに加わっていた野村については、逆に日本の金融機関では一番高く評価しています(GSみたいに直前で逃げられなかったところは、まだまだなのかもしれませんが)。
国内営業部門とアセットマネジメント部門は手堅く稼いでいると思います。
以前の野村のように力技で手数料を稼ぐという営業手法はもうできないので、預かり資産に対するフィーを貰うような営業になっていかざるを得ないでしょう。
また今後、国内支店は半分以下に減らすような施策になってくると思います。
フィンテック事業にも精力的
5月11日付けで、野村が千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行と4社でリモートでの金融コンサルティングサービスを提供する合弁会社を設立するというニュースが入ってきました。
参考:野村HD 地銀3行と新会社設立へ 個人資産運用をネットで助言 – NHKニュース
リテール営業は、コストの高い支店運営を減らしてDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めていくという流れにどんどんなってくるでしょう。
またLINE証券のように、ITのビックプレイヤーと組んでFintech事業も行っており、まだ収益は厳しいものの、開業1年で30万口座以上の新規口座を獲得しているようです。
Next: 日本の大手金融機関の中では圧倒的に将来性がある
日本の大手金融機関の中では圧倒的に将来性がある
かつての野村は独自で事業を行うという意識が強かったのですが、過去のネット証券(ジョインベスト証券)立ち上げの失敗などを教訓として、アライアンス戦略に切り替えています。
アルケゴスの件では世間を大きく騒がせることになりましたが、野村は面白い会社になりつつあると思いますし、日本の大手金融機関の中では圧倒的に将来性があると考えています。
中国1950年以来初めての人口減少
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- Vol.011「ソフトバンクグループ、10~12月期連結決算発表等解説」「民主党ニューハンプシャー州予備選について」(2/18)
- 2月11日発送分の修正版の発送及びお詫び(2/12)
- Vol.010「民主アイオワ州党員集会について」「公取委、楽天に立ち入り検査」等(2/11)
- Vol.009「新型コロナウイルスの感染拡大について」「ブラックストーン・グループによる国内最大の不動産投資について」等(2/4)
『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』(2021年5月11日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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