家計改善に保険の見直しは有効ですが、「見直し=別の保険に加入」と考えている人が少なくありません。保険に入る必要性から見直すことで、無駄な出費を抑えることができます。今回は、見直すべき3つのポイントをお伝えします。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。
どんなときに「保険の見直し」をする?
加入中の保険を「見直す」ということは、現在加入している保険を解約して、新しい保険に加入することだと思っている方も多くいるようです。
そこで今回は、死亡保険と医療保険を中心に、保険を見直すとはどういうことなのか考えていきたいと思います。
ファイナンシャルプランナーの私のところに、保険の見直しの相談だけでみえる方もあります。そもそも現在加入している保険を見直す時とは、どんなきっかけからでしょう。
その理由を聞いてみると、
・加入中の保険の保障に疑問を持ったとき
・加入中の保険の保険料が値上がりするとき
・家計の支出を減らしたいとき
といったようなことがきっかけになるようです。つまり、このような状況になった時に、保険の見直しを検討するということです。
私のところに保険の見直しの相談にみえた「Aさん」を例に話をすすめます。
Aさんは、ご自身が亡くなったら3,000万円の保険金が遺族に支給される。また、入院した時は、その日から最大60日間、1日当たり1万円が給付される医療特約の付いた死亡保険に加入していました。
実は契約をした時に、保険の外交員に勧められて、ほかにも数種の特約の契約もしていました。
この度、従来と保障の内容は変わらないけど、保険料が従来よりも1.5倍高くなると保険会社から連絡があったそうです。
そこでAさんは、保険料の負担が増えるのを機会にこの保険を見直したいと思い、私のところに相談にみえたのです。
契約内容を細かく把握していない人が多い
日頃、Aさんはこの保険の保障内容を、ご自身が亡くなると遺族が3,000万円もらえる。入院したら1日1万円がもらえることまでは知っていました。
契約の時に同時に加入した他の特約の内容や、今回のように保険料が高くなることは契約する時に保険の外交員から聞いたことがあるようにも思う程度で、さほど保障の内容まで重視することなく加入したようです。
実は、すべて契約時に交付された書類に記載されていることです。
ただ、Aさんのように契約時に加入しようとしている保険商品の保障内容を念入りに読むことなく勧められるままに保険に加入して、保険料が高くなるといった機会に保険を見直そうとする方もみえます。
Next: いつの間にか損してる?保険を見直すときに確認すべき3つのポイント
保険を見直すべき3つのポイント
どこの保険会社の商品でも見直すときのポイントは、基本的には、以下の3点です。
1. 死亡保険:保険金の額は保険料に見合っているか
2. 医療保険:入院給付金の額は保険料に見合っているか
3. 必要な保障のみに加入しているか
引き続き、Aさんの加入中の保険を例に「見直すポイント」を順にみていくことにしましょう。
<見直すポイントその1:死亡保険は、保険金の額は保険料に見合っているか>
Aさんは現在、保険金3,000万円の保険に加入しています。この3,000万円とはどこから算出した金額でしょうか。まず、この金額の出どころの根拠を明確にすることが必要です。
そのためにはAさんが万が一の時、公的年金の遺族年金から残された家族が何歳から何歳まで、いくらの受給を受けられるのか、事前に調べておかなくてはなりません。
その結果、遺族年金からの受給額で足りない分を補うために、民間の死亡保険に加入するのです。
今から計算して3,000万円の保険金が必要なければ、保険金の金額を減額すればよく、その場合は毎月支払う保険料も安くなるでしょう。
ただし、現在の3,000万円の保険金では足りなければ、必要な期間、保険金額を増やすことも必要になるかもしれません。この場合は他社の保険商品と比較検討して、現在の保険を解約して新しい保険に加入することになるかもしれません。
また、掛捨ての保険でなく、解約した時に解約返戻金が出る保険商品に加入していれば、現在加入中の保険を「払済み保険」にできるか検討することも必要です。
保険会社に確認して、「払済み保険」にすることができて、その場合の死亡保険金額が3,000万円より減額されるとは思いますが、その金額で残された遺族の保障が満たされるようならば、今後、保険料を支払うことなく必要な分の死亡保障を得る方法ができる「払済み保険」に見直しても良いでしょう。
なお、「払済み保険」にすると特約はすべて解約することになります。
Aさんの場合は、医療特約などの保障が解約されてしまうことには注意が必要です。今後とも医療保険に加入が必要であれば、他の策を検討しても良いでしょう。
<見直すポイントその2:医療保険は、入院給付金の額は保険料に見合っているか>
次は、医療特約を含む医療保険についてみてみます。
医療保険の保障内容としては、入院した時に1日定額が給付される入院給付金。入院中に手術を受けた時に給付される手術給付金。その他にも通院給付金といったように、保険会社各社がさまざまな商品を発売しています。
これらの保険商品の特徴としては、保障の内容が充実すれば、その分、保険料が高くなることです。
「高額療養費」という言葉をご存知でしょうか?
私たちが加入している健康保険から、主に入院した時に医療費が収入に応じた上限額を超えた場合、その超えた額を健康保険から受給してもらえる制度のことです。一般的な収入に分類される方が入院した場合、1ヶ月の自己負担額は9万円くらいになります。
Aさんが入院して1ヶ月の医療費が100万円だったとしても、自己負担は3割の30万円です。しかし、「高額療養費」の制度で1ヶ月あたりの自己負担額は約9万円で済むということです。
ただ、入院中の給食費や特別室の使用料は「高額療養費」の対象にはなりませんので、別途に負担することになります。
つまり、入院した時の負担する額の上限はおおよそわかっているので、わざわざ保険に加入しなくても良いなら医療に関係する保険商品に加入しなくても良いという考え方もできます。
もし高額な医療費がかかる時に心配という方は、安心できる必要な額分、医療保険に加入しておいても良いでしょう。
Next: 必要・不要の線引きはどうする? 無駄な保険に入らないために
<見直すポイントその3:必要な保障のみに加入しているか>
ここまで、Aさんの加入している死亡保険と医療保険を見てきました。
見てきて分かっていることは、必ずしも保険商品に加入しなくてもよく、遺族年金や高額療養費などの国の社会保障制度があるため、それでも足りない分を民間の保険に加入して補えばよいということです。
ちなみに、社会保障制度はその方の働き方にもよりますが、年金保険料は一定の年齢まで、健康保険料は生涯支払っています。無償の制度ではないのです。
契約時の年齢で保険料は大きく変化。入り直すよりも、取捨選択をしっかりすること
保険の見直しというと、現在加入している保険を解約して新しい保険に加入するイメージをお持ちの方もみえます。しかし実際には、この記事でも記述したように、現在加入中の保険商品をベースに、その方にとって一番適した保障内容に変えることも可能なのです。
多くの保険商品の特色のひとつに、同じ保障内容の保険商品でも保険料は契約時の年齢によって高くなります。
確かに家計支出を節約する手段として、また、無駄にお金を使わないために保険を見直すことは賢明なことです。ただ、必要な保障を得るのに新しい保険商品に入り直すことは得策ではないこともあると思うのです。
保険に加入する時、その保険商品でいくら填補したいのか、まずはその検討が必要です。
『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2021年5月19日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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