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バフェットも注目!安値更新中の「お菓子銘柄」は買いか?明治HD、カルビー、グリコ、森永製菓を分析=栫井駿介

いまお菓子銘柄が年初来安値を更新するほど下落を続けています。明治HD、カルビー、江崎グリコ、森永製菓は買いなのでしょうか?あのバフェットも注目するお菓子銘柄の投資妙味を探ります。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

明治、カルビー、グリコ、森永製菓……お菓子銘柄に異変?

今回はお菓子銘柄について分析したいと思います。

なぜ今、分析するのかというと、これらの銘柄がいずれも年初来安値を更新するほど大きく下落を続けているからです。

一方でこの菓子銘柄というのは、あの有名な投資家バフェットも高く評価するほどの強みを持っているところでもあります。

これらの銘柄の状況と、これからの投資の可能性について分析したいと思います。

取り上げる銘柄はお菓子を中心に販売する4つのメーカーです。明治ホールディングス、カルビー、江崎グリコ、そして森永製菓です。

明治ホールディングス<2269> 日足(SBI証券提供)

カルビー<2229> 日足(SBI証券提供)

江崎グリコ<2206> 日足(SBI証券提供)

森永製菓<2201> 日足(SBI証券提供)

なぜ下落したのか

チャートを見ていただければわかります通り、明治ホールディングスが過去1年で17%のマイナス、カルビーが19%、江崎グリコは19%、そして森永製菓24%と、いずれもかなり大きな値下がりとなっています。

これはコロナショックの頃よりも下がっているという状況です。

なぜお菓子のメーカーこんなに下がってしまうのかというと、基本的にはお菓子というと景気にあんまり関係なく安定して売れるものなので、これだけ下がるということになると、何かあるのではないかと思ってしまいます。

業績を見ますと、いずれも比較的好調で、特に過去10年に関しては、どの会社も増益を達成してきたということになります。

したがって、これらの状況からで株価は比較的高位安定していた状況だったのですが、状況が大きく変わったのが目先のコロナ禍です。

直近は2021年3月期だったり、その翌期の予想に関してみれば、いずれの会社も減益となっていることが多いです。

Next: 巣ごもり需要はどこへ?お菓子メーカーが大打撃を受けたワケ



コロナ禍でコンビニ売上が激減

ここで皆さんも疑問を覚えるかも知れません。

このようなお菓子メーカー家で過ごす時間が長くなったということで、むしろお菓子買うことが増えたのではないかと感じられる方もいるのではないでしょうか。

実際に巣篭もり商品に関しては、どのメーカーも比較的好調です。

明治だったら乳業もありますからヨーグルトですとか、カルビーのフルーツグラノーラ、それからグリコのアイスクリーム、そして森永だとホットケーキミックスなんかもありますから、これらの売り上げは非常に好調でプラスに貢献しています。

一方で、大きなマイナスとなっているのが「コンビニ需要」です。

菓子メーカーの各社は、いずれも今や主力がコンビニになっています。コンビニにどんどん新商品を出し、しかもちょっと高いプレミアム価格で売ることによって、そこそこお金のあるサラリーマンだったり、OLの人だったりをターゲットとしていました。

彼らが仕事の合間にコンビニで高いお菓子を買うことによって、実はこれらのお菓子メーカーは利益をどんどん上げてきました。

しかしコロナ禍でそもそもオフィスに出る機会というのが減ってしまいましたから、それでここにあるような小さな商品、あるいは少し高級感のある商品というのが目先売れなくなっています。

チョコレートだったり、じゃがりこ、ポッキー、ハイチュウといったところが売れなくなっています。

このプラスとマイナスがありながら、トータルではやはりマイナスという形になってしまっているところが多いです。

「定番」となったお菓子は強い

とはいえコロナが終われば一部はリモートワークも定着するのでしょうけれども、大部分の人がオフィスに戻るということが考えられるわけです。

したがって、この一時的な減収減益というのは実はあんまり問題にならないのではないかというのが私の考え方です。

各社とも、値上げによって業績を上げてきました。お菓子売り場に行っていただければわかると思いますが、売られているチョコレートとかそういったお菓子メーカーは、実はこれらの会社プラスアルファぐらいで、かなり寡占的な状況になっています。

しかも馴染みのある商品で子どもの頃から買ってきたような商品が選ばれるわけですから、なかなか他の会社にスイッチにするということがありません。

しかも、子どもの時に買っていたお菓子が大人になってもまだ馴染みのある状況で、少しお金があるということになると、プレミアムな商品が出たらコンビニで買ってみようということになるわけです。

こうやって各社が業績を伸ばしてきました。

Next: バフェットも注目するお菓子銘柄、今は割安か?



バフェットも注目するお菓子銘柄

実はこのお菓子というのは、あの有名な投資家であります、ウォーレン・バフェットも非常に高く評価しています。

ウォーレン・バフェットの保有銘柄の中には、ハーシーズチョコレートだったり、シーズキャンディという会社が含まれています。

いずれもアメリカでちゃんと根を張っているお菓子メーカーということになりまして、バフェットもこれらの消費財に好んで投資する傾向があります。

なぜかというと、さきほど説明した通り、一度馴染んで市場で高いシェアを取り続ければじわじわとでも値上げをしていって、消費者はあまり疑うことなく買い続けるという状況を作り上げることができます。

お菓子銘柄は「投資妙味アリ」?

実際、日本でもステルス値上げといって、値段は変わらないけれども量が少し減っていたりといったような状況で実質値上げが行われている、あるいは消費増税に合わせて、それに上乗せして値上げをするというような状況も起きています。

これから同じことが起きると考えられますので、基本的には長期的に目線で見れば、私はこれらの菓子メーカーに関してポジティブな見方をしています。

もっとも値段を2倍に上げたりするようなことはできませんし、日本の消費市場というのも急に大きくなることはありませんから、これらの銘柄が少しでも株価が下がって安くなった時に買っておくというのは、堅実な投資方針としては望ましいのではないかという風に考えます。

今は割安か?

そこで、これらの会社が今割安なのかどうかということについて、着目してみたいと思います。

目先のPERに関してみれば、明治が14.4倍、それからカルビーが18倍、江崎グリコが22倍、それから森永が14倍という数字になっています。

市場の平均がおよそ15倍ということですから、平均から前後しているような感じになっているのですが、ただこれらの会社の安定性だったり、成長性が評価されて一時期は20倍から25倍ぐらいで評価されていた時期もありました。

そう考えると評価によってはそれぐらいまで上昇する可能性というのも十分にありますし、そもそも業績は比較的安定しているので、下落リスクも小さく見ていられる状況ではないかと思います。

Next: 特に将来性のある企業は?バリュー投資家の見立て



特に将来性のある企業は?

グリコに関しては少し高いですし業績を見ましても、いま手間取っている部分もありますので、あえてここに投資することはないのかなという風に思いますけれども、その他の会社に関してはやはり比較的堅調な推移を辿っています。

カルビーは、実は東日本大震災の時に上場したのですけれども、この会社は海外戦略が結構上手くいっていて、それで業績を伸ばしてきたというところもあって、一時期はPER30倍ぐらいで評価されていました。それが18倍ですから、本当に今後も海外でも伸ばし続けられるとしたら、かなり買い頃なのではないかという気がします。

明治も高い時はPER30倍ぐらいあったのですが、今はどの会社も過去5年でPERに関して最も低いレベルの水準になっています。

したがって確実に伸びるとまでは言いませんが、事業の安定性やこれからの値上げなどによる成長余地というのを考えたら、悪い状況ではないのではないかと思います。

最も大切なのは、こうやって数字だけを見てざっくり買うということではなくて、その会社が今後どういう戦略を取ろうとしているのか、どういう強みがあるのかというのを分析して、そしてさらには自分が好きなお菓子を作っていたらなお良いかも知れません。

そういった中で自分が「これだ!」と思える企業が出てきたら、最終的にはもう一度株価水準を見極めて、それで十分に安いと思えるのだったら、いま買っておくというのはありだという風に考えます。

長期投資で大切なのは、こうやって事業を分析することです。そして株価が高いか安いかを判断して、しっかりと安い時に買う。一度買ったら、あとはじっくりと見守る。この3つが大切です。

ぜひこのやり方を磨いて、長期投資に励んでみてください。

(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)


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image by:SarahJaneJ / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2021年7月7日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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