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パウエルFRB議長は「テーパリングの実施時期」を声明文で明示している。豪中銀と裏で連携?=角野實

FRBのパウエル議長は、今回のFOMCで「テーパリングを開始する時期については何も決定していない」と発言。しかし、声明文をよく読めば、金融緩和縮小の時期が見えてきます。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)

※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2021年7月29日号の一部抜粋です。好評配信中!ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。

テーパリングはいつ実施する?声明文の中に答え

世界中の金融関係者と投資家が知りたいことは、具体的にテーパリングをFRBが実施するのはいつなのか?ということ。

その答えは、声明文の中にあります。

期間平均が2%となり、より長期のインフレ期待は2%でしっかりととどまるようにする。委員会はこうした結果が得られるまで、緩和的な金融政策スタンスを維持する見通しだ。

出典:FOMC声明:経済は目標に向けて進展、今後の会合でも精査続ける – Bloomberg(2021年7月29日配信)

どういうことかといえば、この前段ではFRBの目標を雇用の最大化と物価の安定と言明し、具体的にはインフレ目標が2%、期待インフレ率が2%にとどまるように政策を精査、実行していきたい、と言っているのです。

この前の文章に、インフレが一定期間2%適度に上回ることが目標とありますが、具体的に「一定期間」というのは何を指しているのかが疑問になります。

この解釈が一番の問題になるのですが、これをきちんと理解している人はほとんどいません。

この意味は、通常、経済のコンセンサスでいえば、GDPで2期連続のマイナスになった場合には不況入り、というのがコンセンサスになります。

GDPはご存知のように経済指標のキングオブキングであり、すべての指標はGDPを算出するため、ないしは経済政策を実行するための数字で、政府の経済政策はすべてGDPを基準に行われます。

GDPに偏重しすぎという批判はありますが、GDPによって政府のできることは決まります。なぜなら、成長が〇パーセントであれば、税収は〇%増えるということがわかるからです

政治家はその成長〇%によって自分のやりたい政策が実行できるのですから、成長重視になるのは当然の帰結です。

つまり、インフレの一定期間というのは、GDPに準じて2期連続(6か月間)と推測され、インフレ期間が2%を上回れば、テーパリングを行うといっているのです。

Next: 物価上昇2%が9月まで続けばテーパリングへ。米と豪は裏で通じている?



物価上昇2%が9月まで続けばテーパリング実施へ

だったら、現在の物価を見ればいいのです。

上記はFRBが物価の政策指針となる「PCEインデックス」というものであり、消費者物価指数とは若干、統計方法が異なります。ただ、それほど、消費者物価指数と数字の違いはありません。

FRBの物価上昇2%は、このPCEでは3月から2%を超えています。つまり、アメリカ国内で物価上昇が2%を超えたのは3月からで、最新の5月では、前年比で3.6と2%を大きく超えています。

つまりFRBは、2%を大きく超えているのがたんなる5月の1か月間ではなく、この状態が3月から半年間、9月まで続いたときにはテーパリングを行いますよ、と言っているのです。

ただ、物価というのは通貨安に遅れて6か月後にきますので、今は7月ですから、1月のドル安がこれからの指標に影響をしてきます。3月は大幅なドル高なので、9月に2%を超えない可能性がある、ということです。しかし、それはデータを見なければわからないよ、言っているのです。

ただし、この7月・8月に大幅に物価が上昇するのであれば、テーパリングを行うともとれる声明文になるのです。

米と豪は裏で通じているのか?国際協調との整合性

オーストラリアは、緩和の縮小を9月から行うと言明をしています。

RBA(オーストラリア準備銀行)の癖としては、危機のあとに、いの一番に金利を上昇させるが常です。緩和を縮小した結果、豪は金利上げの準備に入るのだろう…というのは、金融専門家であれば誰でも理解していなければならないことなのに、理解していない専門家の方が多いのも事実です。

今回のテーマでは、FRBが9月までの数字を見ている、ということと妙な一致をしているということに注目です。つまり、FRBとRBAの連携作業の可能性があるのです。

RBAが緩和を縮小すれば、おそらく、国際協調の中のドル高の前提条件が崩壊します。それを防ぐためには、FRBもRBAと歩調を合わせて、金融緩和の縮小を行う可能性の方が高い、と考えるのが妥当です。

この辺は、アメリカ大陸の国家群がすでにテーパリングを実質、行っていることを踏まえてもっと解説をしなければいけないことですので、後日、当メルマガで改めて。ほかに南アもテーパリングをしています。

ともかくアメリカの信義の問題で、2020年に、ドル安維持で恩恵を受けたことを2021年には、その恩恵を他国に譲るというのがアメリカの信義であり、これは履行できなければ、他国からの信用が落ちることはアメリカ自身がよく理解しているでしょう。

つまり自ら積極的に動いて、ドル安の方向にはいけない、というジレンマをアメリカは抱えていますので、このテーパリング問題は難しいのです。

Next: テーパリング前倒しに要警戒。物価指標を注視するしかない



物価指標を注視するしかない

まず、物価上昇が9月まで続いた場合、そして、物価上昇が大幅になった場合には、テーパリングは9月を前倒しして実施される可能性があり、ここは日々の物価指標を注視するほかありません。

景況感指数、つまりISMやNYやフィリーなどの景況感指数の中に含まれる物価指数は、高騰しており、このまま9月まで待っているような状況ではないよね、と個人的には感じます。

でも、FRBはFOMCにて動かないことを表明しているのですから、今後も物価指標を見るほかありません。

とりあえず、ISMの価格指標や、雇用統計の労働賃金などで、期待インフレ率を精査していくほかありません。もちろん、PCEやCPIなどもそうです。具体的にはPPIの鈍化などが先行指標になるでしょう。

言いたいことは、物価の上昇というのは喫緊の課題であり、いつ物価が吹っ飛んでもおかしくない状況にあるということです。

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  • 雇用統計はなぜ悪いのか?(7/5)
  • 経済統計とマーケット(7/2)
  • 金利の話をすこしだけ(7/1)

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2021年5月配信分
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image by:Federalreserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons

角野實のファンダメンタルズのススメ』(2021年7月29日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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