日経CNBCでお馴染みの岩崎日出俊氏が、金融・株式投資からキャリア・進路まで、読者からの様々な相談にズバリ回答するメルマガ『岩崎日出俊の金融サバイバル【Q&Aコーナー】』。今回はこのメルマガの創刊を記念して、連休前の注目イベントである日銀金融政策決定会合に関する読者からの質問と岩崎氏の回答を無料公開します。
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プロフィール:岩崎日出俊(いわさきひでとし)
1953年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、日本興業銀行へ入行。スタンフォード大学経営大学院で経営学修士(MBA)を取得。J.P. モルガン、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズの各投資銀行でのマネージンング・ダイレクターを経て、経営コンサルティング会社「インフィニティ」を設立。著書に『投資銀行』(PHP研究所)、『気弱な人が成功する株式投資』(祥伝社新書)、『不透明な10年後を見据えて、それでも投資する人が手に入れるもの』(SBクリエイティブ)など。日経CNBCテレビでコメンテーターを務める。
多彩な手段を残す政府・日銀、4月追加緩和の可能性は60%程度か
メルマガ読者からの質問
「今月の日銀金融政策決定会合(27日~28日)に関して、20日付でゴールドマンが従来予想を前倒しし、日銀は4月追加緩和に踏み切るとの予想を出しましたが、これをどう見ますか?」
「今後数ヵ月間の相場はどう展開すると予想しますか?」
岩崎日出俊氏の回答
上記は同じような質問なのでまとめて回答させて頂きます。
4月11日には15,751円(終値)だった日経平均株価がほぼ10日間で1,800円以上も上げ、4月22日には17,572円(終値)を付けました。この要因としては、
(1)
27日~28日の日銀金融政策決定会合で日銀は追加緩和を行うとの見方が強くなってきていること(このタイミングを逃すと次の日銀金融政策決定会合は6月16日になってしまいます)
(2)
FRBによる6月利上げがあるかもしれないとのことで円安、ドル高に振れてきていること
(3)
産油国による増産凍結交渉が決裂したにもかかわらず、WTI原油が43ドルを超えるまでに上がってきていること
(4)
中国の経済指標(どこまで信じられるか分かりませんが)にも改善が見られること
などが挙げられています。
ジム・ロジャーズ「量的緩和はとにかく買いだ」
最近日本のマスコミによく登場するジム・ロジャーズと以前一緒に食事をしたことがあります。彼は、
「実はシンプルに考えている。中央銀行による量的緩和が予想される場合はとにかく“買い”だ」
と語っていました。
海外のヘッジファンド勢のなかには、そう考えて日銀の動きを予想して売買を仕掛けてくるところも少なくありません。
ゴールドマンが従来予想(6月緩和)を前倒しした理由
そういった中でゴールドマンサックスは4月20日付のレポートで日銀の追加緩和に関するこれまでの見方を変えました。
従来、ゴールドマンは日銀による追加緩和時期を6月と想定していました。
しかし、「熊本地震による企業心理の悪化リスクの高まり」「失速する物価情勢」などを勘案、「4月27日~28日の日銀金融政策決定会合で追加緩和を行う」と従来予想を前倒ししました。
たしかにゴールドマンが予想したように今回追加緩和を見送ると、次回は6月16日。その間には5月26日~27日にG7伊勢志摩サミットが開催され、参議院選挙(7月10日投票と予想する向きが多い)もすぐ間近に迫ってきます。
すなわち、ここで追加緩和をしておかないと、この先もし相場が崩れてしまうようなことが起きたとき、6月16日では手遅れといったことにもなりかねません。
Next: 4月追加緩和の可能性は60%/今後数ヶ月の相場展開を予想する
4月追加緩和の可能性は60%、ETF買い入れ枠の増額が中心か
ということで、私も日銀が追加緩和を4月27日~28日に行う可能性は半分以上(6割くらい)あると見ています。
緩和手段としては、批判が集中したマイナス金利を拡充するよりも、ETF(上場投資信託)買い入れ枠の増額が中心になると見ており、そうなった場合は、相場は上向いていくと考えています。
問題は4月の緩和を見送った場合。その場合は、日経平均はまたダラダラと下落に向かう可能性が高くなります。
今後数ヶ月の相場展開を予想する
いずれにせよ今年は日本(7月の参議院選挙)も米国(11月8日の大統領選挙)も選挙が行われる年。
安倍政権は株価を意識して政策運営をしており、株価水準が選挙結果にも影響することから、10兆円規模の補正予算を組むとか、いざとなればいろいろな政策を打ち出してくることが予想されます。
ということで、今後数カ月の相場展開を予想すると以下のような結論になります。
(1)
金融政策(追加緩和)や財政政策(大規模な補正予算)など、政府・日銀が出来ることはまだあり、これを行わないことにはデフレ脱却は難しく、「アベノミクスは失敗した」との烙印を押されてしまう。これでは選挙結果にマイナスな影響を与えてしまうことが予想されるだろうから、参議院選までは比較的堅調な相場展開が予想される。
(2)
ただし日本経済が抱える構造的問題が解決されるわけではない。
[A] 日本の人口のうち65歳以上が3,435万人。これを仮に年金世代と称すれば、この部分の人口が全人口の27%にも達する。一方で15歳~64歳は7,659万人。この部分の世代を仮に就労可能な世代と称すれば、これは全世代の60%を占めるのみ(下記参照)。
※人口推計[PDF] – 総務省統計局(平成28年4月20日)
[B] こうしたこともあって、例えば1994年から2014年にかけての20年間で日本の一人当たりGDPは3万8800ドルから3万6200ドルへと7%ほど減少してしまった。一方で例えば米国の一人当たりGDPは2万7800ドルから5万4600ドルへと約2倍になっている。日本の一人当たりGDPは、20年前は米国よりも上だったのだが、いまでは米国の3分の2しかない(下記参照)。
※GDP per capita (current US$) – THE WORLD BANK
[C] 最近時の経済パフォーマンスの実績値も、そして予測値も、日本だけが良くない。以下はGDPの対前年比成長率(%)
2015(実績) | 2017(予想) | |
世界全体 | 3.1 | 3.5 |
米国 | 2.4 | 2.5 |
ユーロ圏 | 1.6 | 1.6 |
日本 | 0.5 | ▲ 0.1 |
以上については下記参照。
※World Economic Outlook (WEO), April 2016[PDF]
[D] 日本では全労働者に占める非正規労働者の割合は約40%に達してしまっており、この部分が貧しいままでは、本来であれば経済(そして企業業績)を牽引するであろう「個人消費」は改善しない(下記参照)。
※平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況 – 厚生労働省
Next: (3)結論:選挙後の相場は冴えない展開に戻る懸念あり
(3)
つまり日本経済が抱える構造的問題はなかなか改善されず、政府・日銀による相場テコ入れにも限界があることを考えれば、選挙を意識して相場は好転したとしても、やがては(選挙が終わってしまえば)冴えない展開へとまた戻っていってしまうことが懸念されます。
『岩崎日出俊の金融サバイバル【Q&Aコーナー】』2016年4月25日号ではこの他にも、以下のようなメルマガ読者との質疑応答やコラムを掲載しています。
トヨタのPERが8倍とひじょうに低いレベルです。なぜ?
会社の業況が良くなく周りで早期退職する人が増えました。思い切って起業しようと思いますが、どうでしょうか
世界各地からの便り:(羽田)世界でもっとも欧州ブランド製品の値段が安い場所
今月の言葉:「企業は金繰りさえついていれば破綻しない」
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