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日本株はジャクソンホールでどう動く?こつこつ上昇後の急降下が「菅おろし」まで繰り返す展開も=馬渕治好

今週の世界市場は、先週の「後処理」の様相が強いと見込みます。米国市場は、FOMC議事要旨をネタにした短期ポジション調整は完了した感があり、今週はどちらかと言えば上方向に株価が進むものと予想。それに対して日本株の立ち上がりには時間がかかる恐れがあります(大きな下振れも想定していませんが)。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2021年8月22日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

過ぎし花~先週(8/16~8/20)の世界経済・市場を振り返って

<FOMC議事録はポジション解消の口実で、米国市場は引きずらなかった。東京株式市場はトホホ市場に>

先週は、想定外に市場の材料となったものが多く、総じてはリスク回避的な投資家の姿勢が強まって、世界市場は株安・外貨安気味で推移しました。ただしそうした諸材料は、市場の明るい基調を完全に覆すようなものとは考えておらず、特にFOMC議事録については、ポジション解消の「ネタ」に使われた、という感が強いです。実際米国株価は、週末には持ち直しに入り始めています。

一方、以前からのことではあるものの、日本株の不振が目立ちます。売られ過ぎの側面が強いと考えられ、これから日本株が一段と大きく下落するというより、また底固めから上値探りを始めると見込みます。とは言っても、心理的な悲観と株価下落の相互作用が強く、東京市場はトホホ市場に堕してしまった、という感が強いです。

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NYダウ 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

来たる花~今週(8/23~8/27)の世界経済・市場の動きについて

<米国株価中心に底入れから持ち直しへ、ただし日本の株価は「賽の河原」か>

今週最も市場が注目する材料は、米国で8/26(木)から8/28(土)に開催されるジャクソンホール会合において、パウエル議長が8/27(金)に行なう講演でしょう。ただ、この時点では、テーパリング開始の時期などについて、確たることは述べないと考えます。

そうしたなか、前項の「過ぎし花」で述べたように、米国株価は再度上向きの動きを徐々に始めそうです。日本株も、いずれそうした米国株の明るい動きに追随すると見込みますが、それには時間がかかるかもしれません。日本株は、こつこつと上がっていくと、ドンと下振れし、またこつこつと上がると崩される、といった「賽の河原」状態が当面続くものと懸念します。投資家は忍耐強く、石を積み上げ続けることが、求められるのでしょう。

<詳細解説>

今週最も市場が注目するのは、米国でのジャクソンホール会合でしょう。これについては、すぐ後の「盛りの花」で詳述しますが、パウエル議長は講演でテーパリング開始について、明確なことは語らないでしょう。

他の材料としては、米国でマクロ経済統計の発表がいくつかあり、8/23(月)に中古住宅販売、8/24(火)に新築住宅販売が公表されます(ともに7月分)。欧州では、8/25(水)に8月のIFO景況感指数が発表予定です。

今週の世界市場は、こうした今週の材料で動くというより、先週の「後処理」の様相が強いと見込みます。米国市場は、「過ぎし花」で解説したような、FOMC議事要旨をネタにした短期ポジション調整は完了した感があり、今週はどちらかと言えば上方向に株価が進むものと予想しています。

それに対して日本株の懸念要因としては、8/22(日)の横浜市長選挙で、菅首相が支持する小此木氏が敗れ、来る衆議院選挙について自民党内で「菅総裁では勝ち目がない」という声が強まることで、次の総裁が誰になるかわからない、という不透明感が高まる展開です。

ただ、横浜市長選挙の結果にかかわらず「菅おろし」の声はありますので、市場にとって大きなサプライズになるとは考えにくいです。

Next: 「菅おろし」がプラスに働く?日本株の立ち上がりには時間が必要か



日本株の立ち上がりには時間がかかる恐れ

また、総裁選に高市前総務相が名乗りを上げようとの意向を示しています。

高市氏は「アベノミクスを継承する」「財政支出は柔軟に拡大する」「3本目の矢は規制緩和・構造改革より投資」(「投資」が何を指すのかは不明ですが)と語っており、そうした姿勢が海外投資家に好感「されれば」、日本株にプラスになる展開が想定されます。

ただ、日本株については、余りにも心理的な呪縛が強いです。このため、「過ぎし花」で述べたように、日本株の立ち上がりには時間がかかる恐れがあります(大きな下振れも想定していませんが)。

それまで当面は、こつこつ、こつこつと、時間をかけて何とか千円幅くらい日経平均が上がると、ちょっとした不安要因で、ドン、と900円くらいあっという間に下がる、そこからまたこつこつ、こつこつと千円くらい上がるとまたドン、と900円くらい下がる、ということを繰り返すのかもしれません。せっかく時間をかけて積み上げたものが、一気に崩壊する、というのは、あたかも賽の河原の石積のようです。

残念ながら、日本株の投資家は、しばらくは賽の河原の子供たちのように、鬼にいじめられながら、地道に忍耐強く石積みを続けざるを得ないのでしょう。お地蔵さんが助けてくれるまで、もう少し時間がかかりそうです。

中長期シナリオ結論(2021/08/22時点)

<中期シナリオ~2021年末に向けて>

経済や企業収益の回復は、かなり明確になってきた。ただし、回復基調は、これから極めて緩やかだろう。したがって、だいぶ将来までの企業収益回復を織り込んでいる株価の高さと、実体経済の低空飛行の差が、高PERという形で表れている。だから株価が基調として下落に向かうかといえば、そうではなく、市場は、上の位置で実体経済・企業収益が追い付いてくるのを待つだろう(結果として、時間をかけてPERが低下する)。主要国の財政・金融政策も、景気と株価の下支えに働いている。

2021年を通じて、主要国の株価や外貨相場(対円)は、短期的な上下の振れを繰り返しながらも、諸データに示される緩やかな世界経済の回復を踏まえながら、基調としては、持ち合いに上昇の色合いがついたような、じわじわとした株高・外貨高傾向を続けるだろう。

ただし日米の株価動向を比較すると、米国では、企業収益予想値の上方修正が急速であることに比べ、株価の上昇速度は緩やかで、結果として予想PERが総じて低下傾向にある。すなわち、株価の上昇が企業収益の改善に比較して控えめであり、その分、株価のさらなる上昇余地がある。とは言っても、米株価指数は史上最高値の更新を最近まで続けてきたため、基調としての株価上昇速度は一段と緩やかだろう(これから上昇の最終局面を形成しよう)。

一方日本株は、最近の株価下落で予想PERは低下し、割高感はない。企業収益も輸出大企業製造業中心に改善が進んでいる。ただし、「中国リスク」(幅広い分野での中国に関するリスク)や国内政治情勢などが不透明で、しばらくは一進一退から二進一退へ、といったような形となり、株価が上昇基調を明確にするにはまだ時間が必要だろう。当初は引き続き米国株が先行する株価上昇、年末が近づくにつれて日本株が挽回、という展開を予想する。

日経平均株価は、短期の底値形成を終えて、年末に3万円超えまで戻るにとどまろう。今年2/16(火)に既に付けた高値(終値で3万467.75円、ザラ場高値で3万714.52円)を今後上回るかどうかは、微妙な情勢だと判断する。また、3万円を超えられない可能性もある。ニューヨークダウ工業株指数は、年末までに3万7,000ドル前後に達すると見込む。

外国為替相場については、徐々に世界経済が明るさを増す中で、外貨高・円安基調を予想する。外貨の中では、投資家のリスク回避姿勢が薄らぐと期待されることから、これまで優位であった米ドルより、ユーロや豪ドルなど、非米ドル通貨の方が、対円での上昇力が高いと予想する。

Next: 「2022年まで」と「2023年以降」の長期シナリオは?



<長期シナリオ~2022年>

米連銀は慎重な姿勢を崩しておらず、米国の景気や株価の回復にかかわらず、量的緩和の縮小開始は2021年終わりころから2022年前半だろう。利上げ開始は2022年終わりころから2023年前半を見込む。

米マクロ経済が好調だからこそ緩和を縮小するわけであり、また縮小のペースは極めて遅いだろう。そのため、本来は、緩和縮小は大きな波乱要因にはならないはずだ。しかし、米国の企業や投資家、市場はあまりにも金融緩和に依存してきたため、金融政策の修正が大きな波乱を引き起こす恐れがある。

具体的には、以下の懸念が本格化すると考える。

1. 脆弱な米国内産業・企業の破綻
2. 米国における、社債の発行市場の好調さに依存した企業の資金調達の変調と、それが自社株買いの減退につながる恐れ
3. 世界的に、低金利による運用難でリスクをとっていた投資家が、長短金利の上昇で一気に利回り物に資金を移動する可能性と、それを材料にした株式売りなどが嵩む展開
4. 株式の信用取引や、ジャンク債(格付けの低い債券)、その他高リスク取引を拡大していた投資家の破綻
5. 米ドルに依存してきた新興国の苦境(米ドル建て債務の借り換えの困難化、米ドル高・自国通貨安を防衛するための望まない利上げなど)

このため、日米等主要国の株価は、一時的であったとしても、大きく下落する局面があるだろう。日米の主要な株価指数は、2022年は、2021年の安値を大幅に割り込むと懸念する。

<超長期シナリオ~2023年以降>

極めて長期的には、世界的な景気拡大基調が続くだろう。それを支えるのは、新興諸国を中心とした人口増であり、技術革新、新商品・サービスの開発だろう。

2022年の波乱があれば、その試練をくぐり抜け生き残ることができた企業や投資家は、極めて強いものだろう。

10年単位で展望すれば、株式等リスク資産を保有すべきだと考える。

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理解の種~世界経済・市場の用語などの解説:ジャクソンホール

脇道の花~道草の話題:ラジコ

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※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2021年8月22日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した項目もすぐ読めます。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2021年8月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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