fbpx

中国オタク市場はJK制服・漢服・ロリータで回る。日本の中古制服も人気、女子が「三坑アパレル」を着る理由=牧野武文

中国の巨大オタク市場のなかにコスプレ市場があり、「JK(女子高生)制服」「漢服」「ロリータ」の3つが大きな市場に育ってきて、「三坑アパレル」と呼ばれるようになっています。JK制服の起源はもちろん日本であり、今でも日本製制服は「本場もの」として高い価値を持っています。そこで今回は、ビジネスとしての三坑アパレルを、JK制服を中心にご紹介します。

なお、誤解が起きないように確認をしておきますが、中国では男性がJK制服を買ってコレクションするということはゼロではないのかもしれませんが、ほぼ聞きません。JK制服は、女性が自分で着るために購入しています。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

【関連】中国で「わりかん保険」が大流行。治療費払い渋り防止の斬新な仕組みとは=牧野武文

【関連】中国で「無人タクシー」が日常風景へ。なぜ日本の自動運転技術は勝てない?=牧野武文

※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2021年8月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

中国の日常に溶け込んだ日本の「JK制服」

今回は、JK(女子高生)制服についてご紹介します。当メルマガの趣旨が変わってしまったわけではありません。中国のビジネスの話です。中国のオタク市場=ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)が巨大であることはみなさんよくご存知だと思います。

その中に、コスプレ市場があり、「JK制服」「漢服」「ロリータ」の3つが大きな市場に育ってきて、「三坑アパレル」と呼ばれるようになっています。坑というのは穴のことで「ハマるもの」、日本の「沼」に近い語感の言葉です。つまり、3つのハマるアパレルという意味です。

この三坑アパレルは、元々は特殊なコスプレでしたが、今ではカジュアルウェアの領域にも広がっています。漢服はパーティーなどだけでなく、部屋着としても使われますし、漢服姿で街を歩いている女性も、ちょくちょくとまでは言わないものの見かけることがあるようになりました。

JK制服はよりカジュアルウェアに進出をしています。さすがに上下きっちり制服姿にしている人はなかなか見かけませんが、制服テイストのチェック柄のプリーツ入りミニスカートを履いている女性はもはや珍しくありません。JK制服がファッションアイテムのひとつとして取り入れられたのです。

2021年になって、盲盒(ブラインドボックス)で成功したポップマートが、JK制服、ロリータ服などを製造販売する「猫星系」(ギャラクシーキャット)に数千万元の投資をしたことが発表されました。これにより、各証券会社が三坑アパレル業界を調査、分析したレポートを公表するようになっています。

JK制服の起源はもちろん日本であり、今でも日本製制服は「本場もの」として高い価値を持っています。そこで、今回は、ビジネスとしての三坑アパレルを、JK制服を中心にご紹介します。

証券会社のレポートに「JK制服研究」

このメルマガを書く時には、各種資料を集めていますが、その中で役に立つのが証券会社の業界レポートです。証券会社のアナリストが、さまざまな業界について調査を行い、その結果をまとめてレポートとして個人投資家に向けて配布をしています。もちろん、それを読んで、新たな投資をしてもらうのが目的ですが、投資家に配布するレポートなので、客観性が高いのです。

中国に限らず、世界中の企業がさまざまなレポートを公開していますが、企業によるレポートは、その背後に自社ビジネスの拡大という意図があります。ですから、自動車会社は「自動車はこんなに危険だ」というレポートは作りません。作ったとしても、その後に必ず「弊社はこんなに安全に対する取り組みをしている」という内容を追加します。企業による調査研究レポートは、その背後にある意図を割り引いて読む必要があります。

一方で、証券会社のレポートは客観性が高いと感じています。特定の業界を過度に有望に見せて投資を促したとしても、その投資が失敗に終われば、投資家はその証券会社を使わなくなってしまうからです。そのため、どこの証券会社のレポートも、ひたすら客観的な情報を積み重ね、投資判断はあくまでもご本人でお願いしますという態度で制作されています。さらに、その業界にどのようなプレイヤーがいるのか、投資関係、提携関係などの業界地図など、基礎知識は丁寧に解説をしてくれるので、中国ビジネスを知るには非常に優れた資料であることが多いのです。ぜひ、みなさんも活用してください。

ただし、当然ながらレポートは中国語で、一部、英語翻訳されたレポートがある程度です。また、レポートを読むには、証券会社の無料会員登録をする必要がありますが、厄介なことに、登録時にSMS(ショートメッセージ)によるセキュリティコード認証があるのです。携帯電話の番号を入力すると、SMSに4桁のコードが送られてくるので、それを入力することで、登録が完了するというものです。このコード認証が中国の携帯電話番号にしか対応していないところが多いのです。そういう面倒はありますが、購読ができるのであれば、かなり役に立つ資料となります。

そういう証券会社のレポートを読んでいたところ、「JK制服研究」というレポートを発見しました。開いてみたところ、基礎知識編として、細かい制服の解説がありました。セーラー服の札幌襟、関東襟、関西襟、名古屋襟の違いなど、かなりマニアックな情報が解説されているので驚きました。

しかし、レポートの主眼はそこではなく、いわゆる二次元アパレルが産業として成長をしてきて、投資対象になってきているというものでした。しかも、複数の証券会社、調査会社がJK制服に関する研究レポートを公開しています。

Next: 中国のファッションに深く浸透、成長している「JK制服」産業

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー