今年5月19日、窮地の地銀を救うための「改正銀行法」が可決。従来の法律では事業会社への出資の上限を原則5%と規制がかかっていたものが、地元の産品などの販売などの地域経済に寄与する非上場企業には、100%の出資も可能となりました。これによって地銀が優良企業を乗っ取り、“和製ハゲタカ”化する懸念が出てきています。さらには、外資が次々と買収に乗り出す危険もあります。(『今市的視点 IMAICHI POV』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2021年8月8日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
「改正銀行法」施行で地銀が巻き起こす地方経済の粛清リスク
新型コロナのことでガタついている真っ最中だった今年5月19日、これまで業務範囲が非常に限られてきた国内の銀行に、人材派遣やシステム販売などを認める「改正銀行法」が参議院本会議で賛成多数で可決・成立となりました。
ここ10年程度の業績をみても、地銀の収益は半減するといった状況ですから、何か手を差し伸べて、事業の枠組みを変えてやらなくてはならないのはわかります。
しかし、今回の銀行法の改正内容を縦横無尽に活かして、本当に立ち直れるのかということには、大きな疑問が生じます。
また新型コロナの影響で、もはや借金まみれの地方の事業者が、この改正銀行法下で本当に生き残れるのかということも、非常に心配な状況になってきました。
改正銀行法で“和製ハゲタカ”が暴れまわる?
この改正銀行法では、銀行本体や子会社が、システムの販売・登録型の人材派遣・データ分析・広告などを扱えるようになり、業務領域はかなり広くなります。
まあ、金融機関としてもうまくやっていけないのに、別業種事業を立ち上げて本当に軌道にのせて収益化できるのかという点については、相当に疑問も残るところです。
しかし、M&A(企業合併・買収)なども駆使すれば、利益ソースを拡大できる可能性もありそうで、この分野については、各社の今後の動向を見守ることになります。
問題は、事業会社への出資の上限変更です。従来の法律では事業会社への出資の上限を原則5%と規制がかかっていたものが、地元の産品などの販売などの地域経済に寄与する非上場企業には、100%の出資も可能としたこと。
これを利用すれば、融資を受けていてまったく返済の目途が立たなくなった企業については、融資の減免や利息の免除といった従来からの金融機関の支援ではなく、完全に買収して子会社化することも可能になるわけです。
支援の枠組みが多様化したと言えば、それまでですが、実はこれは和製ハゲタカファンド的な動きを加速する恐れがあり、相当危惧する声も高まりをみせつつあります。