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横浜市長選で報道されぬ「創価学会vs共産党」組織票をめぐる泥試合。菅総理は何に敗れたのか=原彰宏

横浜市長選に自民が大敗した背景には、創価学会vs共産党の組織票合戦がありました。結果を見れば、創価学会の集票力が衰えていることがわかります。危機感を持った自民党は秋の総選挙に向けてどう動くのか?横浜市長選挙の総括をしながら、今後の展開を読み解きます。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年8月24日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

組織票「創価学会」のパワーが衰えた?

横浜市長選挙では、立憲民主党が推す山中竹春元横浜市立大学医学部教授が、候補者乱立のなか圧勝しました。

横浜市長選挙に関しては、選挙戦が始まったときに、当時の状況から「ハマのドン」藤木幸夫氏を中心にしたコラムを書きました。

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藤木氏と小此木家との関係の深さから、表面に見えていることを鵜呑みにしないで、藤木氏の組織票は小此木氏に流れ、野党陣営は「反菅体制」「反カジノ」の市民運動で戦う「組織票vs市民運動」という構図を予想していました。

しかし蓋を開けてみると、野党陣営のほうが「共産党」という組織票が下支えとなり、小此木陣営のほうが自民・公明の自主投票から個人票が支えている結果となりました。

当選した山中氏と、落選した小此木氏で「18万票の差」が開いたことは驚きです。まさに、山中氏の方に大きな組織票が動いたと言わざるを得ません。

藤木幸夫氏のハーバーリゾート協会票と共産党票に、横浜市政から菅勢力を一掃するという市民運動票が上乗せされたようです。

これは、テクニカルで言えば「創価学会組織票が、共産党に負けた」ということになります。

公明党・創価学会の集票能力の衰退、それを共産党の組織力のほうが圧倒したということで、このことは、自民党側に総選挙に向けての「危機感」が増したのではないでしょうか。

自民党・公明党の敗因

“無党派層の風”が反自民に流れたということ以上に、組織票合戦で、自公の枠組みが破れた、自公政権の地盤が崩れてきたことが、自民党にはかなりのショックだったのかもしれません。

「共産党の集票恐るべし」「創価学会が共産党に負けた」という声も聞かれます。

得票数を見れば、「山中票 < 小此木票 + 林票」となっています。
※参考:横浜市長選挙候補者別得票数 – 横浜市長選挙管理委員会

“自民党票が割れた”としても、おそらく自民党票が小此木陣営と林陣営に流れ、その両陣営の票を足して、ようやく山中陣営の票を上回り、分裂しなければ…という仮定が成り立ちますが、横浜市会(横浜だけは「市議会」とは言わないそうです。古き伝統だそうです)の小此木支持鞍替え状況から見れば、林文子市長は、かなり善戦したと言え、単純に自民党票だけを図るのは難しそうです。

林市長には、横浜経済界が付き、特にバッグの「キタムラ」社長が、かなり力を入れて林市長を推していましたからね。

横浜市経済界は、小此木・菅陣営とは、真っ向から対立していました。NHKスペシャルでは出口調査では、自民党支持者の20%が、林市長位投票したとのことです。

当然、「ハマのドン」の組織票が流れたということもあるでしょう。

なにせ2019年に藤木幸夫氏が設立した、横浜港運協会を母体とした一般社団法人ハーバーリゾート協会(YHR)には、横浜港の港運事業者244社が加盟していますからね。

とは言え、これだけの票の開きの背景には、やはり集票としての創価学会の凋落があるように思えます。

Next: 衰えた創価学会の集票力、婦人部が自民のスキャンダルに怒り?



衰えた創価学会の集票力

創価学会の集票力の衰えは、これまでの選挙でも言われていたことではあります。

国政選挙における学会票は「800万票」が見込まれていたのですが、その数字は年々減っていることは事実で、今では「700万票」がやっとの状態です。

パートナーの自民党のスキャンダルに嫌気をさしているとも言われていて、そのことで創価学会婦人部が、中央の言うことを聞かなくなったということもあります。

婦人部にとって、不倫はもちろん、遠山議員のコロナ禍での銀座クラブ通いは、絶対に許せないことです。

公明党の遠山清彦前衆院議員は、プリンスの中でも「次期エース」と目された人物です。それが婦人部の怒りにより、議員の職を追われるわけですから、創価学会内部が混乱しているのもよくわかります。

沖縄では、辺野古基地反対の先方に創価学会婦人部が立っていて、まさに、中央との“ねじれ”の構図が生じています。

大阪都構想においても、公明党が小選挙区議席を守るために、大阪維新の会と手を組んだ(衆院小選挙区での候補者調整)ことも、創価学会内部では不審を生んでいます。

創価学会学会員の公明党への選挙協力という点において、微妙な温度差が生まれているようです。学会員の高齢化も、ずっと言われてはいますけどね。

野党共闘に怯える自民党

自民党は、選挙における野党共闘の恐ろしさを実感したことでしょう。

野党共闘に、あの共産党が自説を曲げてまでも協力することのパワーを、自民党は、まざまざと思い知らされたと思われます。

野党が連合の支持を受けている限り、絶対に共産党と手を組むことはない…労働組合と共産党は「水と油」「犬猿の仲」以上に仲が悪いのです。

労働組合の成り立ちで、共産党系と反共産党系があり、お互い組合員を取りあった間柄、それも壮絶な組合員争奪合戦が繰り広げられた歴史があったようです。

広島参院再選挙では、広島の「連合」が、立憲民主党議員と共産党議員が、同じ壇上に立つことを許さなかったという経緯があります。

電気労連の支持を得ている国民民主党は、共産党との選挙協力は受け入れられないと、トヨタがある愛知地区中心の国民民主党議員が、立憲民主党との合流には参加しませんでした。

それだけ共産党へのアレルギーが、連合だけでなく、保守系野党の中には強くあるのです。

竹中平蔵氏は、自身のYouTube番組で、「他野党が共産党を受け入れないので、反自民票は必ず割れるから、自民党は勝つ。共産党の存在が自民党を利する」と言っています。

この番組のタイトルが「共産党さんを応援しています」となっているところから、このYouTubeでの内容の「逆」のことが今起きようとしていることは、自民党には「恐怖」だということの裏付けになります。

それが選挙協力をする共産党が、自衛隊や天皇制を議論しない、もし連立政権が誕生したら閣外にとどまるということまで譲歩して、選挙協力をする姿勢を見せていることは、自民党にとっては「恐怖」なのですね。

とにかく、今の自公政権を終わらせる…。

その強い意志があるのは、野党第一党の立憲民主党ではない、共産党にあることが強く伺えます。

Next: 始まった自民党による分断攻勢、秋の総選挙はどうなる?



自民党による分断攻勢

自民党側も、「結局は野党共闘うまくいかない」と“たかをくくっていた”ところに、今回の横浜市長選挙結果です。

横浜市長選挙では連合の抵抗はなく、壇上で立憲民主党と共産党の議員が机を並べていました。

こうなると、自民党は、共産党を野党共闘から引き剥がすことを画策してきます。野党内にくすぶる「反共」の思いに、自民党が手を伸ばしてくるというのです。

コロナで日本が危機状態のときに、与野党の争いを超えた救国内閣を作る、つまり「大連立」を仕掛けてくる。当然、共産党抜きの保守、中道保守、リベラル連合…。

日本会議研究の第一人者で著述家の菅野完氏は、自身のYouTube番組でこう危惧しています。番組後半で「大連立」の危惧を述べています。

自民党が政権を取るためには何でもやってくることは、理解しています。かつての「自社さ連立政権」で社会党委員長を総理に担いだことが、その典型ですからね。自民党、恐るべし…です。

とにかく、共産党との野党共闘が政権交代の鍵になることは、間違いありません。というか、共産党と組まない限り、野党が政権を取ることはないということです。

郷原信郎氏の「落選運動」

出馬を取りやめた郷原信郎氏は、独自の情報と見解で「山中竹春氏は絶対に政治家にしてはいけない」と訴え続けてきました。横浜市立大学におけるパワハラ疑惑。つまり、山中氏の人間性に問題があるという、このような人が権力を持つことの「危うさ」を強く訴えていました。

同時に、横浜における「菅勢力の一掃」を主張され、当然、小此木氏が市長になることも「許さない」という立場を取られています。

とりわけ「コロナの専門家」を全面に出して選挙戦を戦ってきた山中竹春氏は、果たして本当に「コロナの専門家」なのでしょうか。あくまでも「データサイエンス」という分野での研究者であって、医療の臨床現場に立つ人ではありません。

この「コロナの専門家」というフレーズへの横浜市民の期待は、当然、新型コロナ感染対策の成果であり、それは目に見えて感染者が減るということにあります。

今後、横浜市において、感染者数が激減する対策を持っているのか、医療崩壊を招くことがないような対策が取れるのか。そして、それができなかった時の責任をどうするのか…。山中市の選挙戦での主張は、非常にリスキーなフレーズに思えます。

郷原氏の「落選運動」はネット上で展開されていましたが、果たして効果はあったのでしょうか。

選挙結果を見るうえでは、厳しいと言わざるをえませんが、ネット活動があらゆる層に浸透するものではないことはよくわかりました。また、郷原氏の思いと選挙民の意識レベルの差というか、リテラシーの差というものは、拭えないままであったことも否めません。

東京都民ではありますが、圧倒的票で小池都知事を再選させるのですからね…。

個人的には、山中竹春氏を擁立した立憲民主党の姿勢、とりわけ江田憲司氏の擁立に向けた動きに、非常に懸念を持っています。

横浜DeNAベイスターズ初代球団社長である池田純氏を擁立する経緯、それを断った池田氏の言い分が、ダイアモンドオンラインに掲載されています。それを読む限り、「上から目線」の昭和の政党の匂いで、権力と札束でねじ伏せる江田憲司氏のやり方に、非常な嫌悪感を覚えます。
※参考:さいたまブロンコス代表の退任から横浜市長選挙出馬の噂まで、その真相と真意について話します | 池田純のプロスポーツチーム変革日記 | ダイヤモンド・オンライン(2021年6月26日配信)

山中氏の本当の戦いはこれからだと思います。横浜市会での立憲民主党議席は「20/86」です。立憲民主党は、最後まで山中竹春新市長を支えることができるのか。危ういものだと感じます…。

Next: 野党が自民に擦り寄りも?水面下で進む大連立の動き



小池と二階が組む?水面下で進む大連立の動き

あちこちで、横浜市長選挙の総括が報じられています。菅総裁の求心力が問われるという内容のものが多く、ほんとうに国会議員は選挙のことしか考えていないのだなと感じます。

これで、地方の自民党議員を中心に、何らかの動きが見られるかもしれません。なにせいまの自民党は、創価学会票がなければ、絶対に当選しないのですからね。

おそらくどこも報じないでしょうが、水面下での「大連立」の動きが加速しそうで、それでも実現の可能性は極めて低いでしょうが、野党側からも、自民党にすり寄る動きもあるようです。

自民党「宏池会(岸田派)」を切り取るという動きもあるそうです。小池都知事と二階派が組んで、そこに前原氏や立憲民主党の野田グループなどが合流するという話もあるとかないとか。自民党見限りですか…。まあ、間違いなく国民民主党は乗っかるでしょう。

あくまでも噂の話で、もう選挙までは時間がないですからね。任期満了なら、たしか11月30日に投開票がずれ込めるとか。石破さんは、総選挙自民党大敗後の総裁選に出るとかでないとか…。

政権交代となると、間違いなく「森・加計・桜」の真相解明に乗り出し、黒塗り書類はすべてオープンにされ、安倍前総理は窮地に追いやられるので、「大連立」でもなんでも、政権だけは自民党は手放さないでしょう。

自公維新で過半数を取れるかどうか。立憲民主党内の切り崩し、党内では「枝野・福山降ろし」が進んでいるとか……なにやっているのでしょうね。

まあ、日本は無政府状態なので、私たちひとりひとりが自立するしかないわけで、間違いなく次の選挙は、私たち国民が試されているのだと理解しましょう。

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