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日本のコロナ急減に世界が注目、ウイルス自己崩壊説も。次の変異株と「第6波」に要警戒=高島康司

日本のコロナ感染者数は急速に減少している。このまま収束することを期待するが、世界中で次々と変異株が見つかっており、日本にも「第6波」がやってくることを否定することは難しい。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

※本記事は新型コロナウイルスに関する内容が含まれます。新型コロナウイルス感染症については、厚生労働省などの公的機関が発表する情報をご確認ください。

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世界でまだら状に広がるコロナパンデミック

日本を新型コロナウイルス「第6波」が襲う可能性について解説したい。

いま、新型コロナウイルスのパンデミックの状況は、世界の国々でまだら模様の状態になっている。

例えば、韓国では7月上旬に首都圏を中心に流行の「第4波」が始まり、新規感染者数は106日連続で1,000人を超えている。

またロシアでは、9月から感染者が急増し、14日以降は毎日3万人以上が新たに感染。20日の死者は過去最悪の1,028人にのぼった。政府によると、コロナ患者用の病床は全国27地方で90%以上が埋まり、一部では95%を超えている。

さらにイギリスでは、この1週間で感染者数が16.1%増加したことから、コロナウイルスの動向に対する懸念が高まっている。英国の感染率は人口100万人あたり620人で、近隣の西ヨーロッパやスカンジナビア諸国の約6倍にもなっている。

イギリスでは、他の国に比べ、かなり早い段階で規制を解除したことが感染再拡大の原因だと見られている。例えばデンマークでは、人口100万人あたりの感染者数が90人前後で推移しているときに規制を解除したが、イギリスでは、感染率が670人に達した時点で規制を解除している。

社会活動のあまりに早い正常化が、新たな感染拡大を招いたようだ。

なぜ日本では急速に減少したのか?

そうした状況のなか、感染が急速に収束しつつあるのが日本だ。

東京都の感染者数はピーク時だった8月の50分の1まで減少し、毎日の感染者数は3日連続で50人を切っている。19日は36人だった。また全国の感染者数も372人となった。これは2万6,000人を越えていた8月28日と比べて70分の1だ。

この感染者数の急速な減少は、多くの専門家の予想を越えている。

いま、この急速な減少の原因が議論されている。政府はワクチン接種の拡大や行動規制の効果が現れた結果だとしているが、これではこの急速な感染者数の減少の説明にはならない。

それというのも、今回のパンデミックには、それぞれ異なった変異株が主導するいくつかの感染の波があり、それらは時間が経つと勝手に収束していたからだ。

日本でワクチン接種が始まったのは4月からだが、すでにそれ以前の時期に、第1波から第3波までの波は拡大と収束を繰り返していた。

ワクチンには、感染したときの重症化リスクを抑える高い効果がある。事実、日本の死亡率は5%近かったピーク時から、いまは1.06%に低下している。死亡率の急速な低下は、ワクチン接種が進む他の国々でも同様だ。

しかし、イギリスやアメリカのように、ワクチン接種が拡大しているにもかかわらず、感染者数の増大が止まっていない国も多い。ワクチンは重症化リスクの低下には大きな効果があるものの、感染拡大を止める効果は思ったほどないというのが現実のようだ。

このような事実から見ると、「デルタ株」が主導する第5波の急速な収束の原因は、ワクチン接種の拡大ではないことになる。原因は別にある。

Next: コロナは自己崩壊する?新しい波は常に「変異株」が起こしてきた



複製エラーによるコロナウイルス自己崩壊説

すでにさまざまなところで報道されているので周知かもしれないが、まだ科学的に証明されていないものの有力な説がある。

それは、「東京大学先端科学技術研究センター」の児玉龍彦名誉教授が主張する説だ。これは、新型コロナウイルスの複製エラーの修復システムに変異が起き、これによるコピーエラーの蓄積からウイルスが自己崩壊するというものだ。この現象を「エラーカタストロフ」という。

新型コロナウイルスは一本鎖のRNAウイルスだ。RNAウイルスは複製が早く、変異種の出現ペースも早い。

しかし、これは複製エラーが発生しやすいことも意味している。多数のエラーが発生すると、これが原因でウイルスは生存できなくなり、自己崩壊が始まる。

これが「エラーカタストロフ」だ。

日本のコロナ蔓延の推移

ちなみに、日本におけるこれまでの蔓延の波は、次のようになっている。

第1波(2020年2月~5月):初期武漢株
第2波(2020年6月~9月):D614G
第3波(2020年12月~21年3月):東京・埼玉株(R.1)
第4波(2021年4月~6月):アルファ株
第5波(2021年7月~10月):デルタ株

これも見ると一目瞭然だが、それぞれの蔓延の波はウイルスの異なった変異株によって主導され、約3カ月程度でピークアウトして収束している。

ワクチン接種が始まるかなり以前から、このパターンを繰り返している。それぞれの波が収束した原因は、ワクチン接種の拡大ではなく、「エラーカタストロフ」による自己崩壊であろう。

では、なぜ特定の変異株が自己崩壊してから、新たな変異株が生まれて新たな蔓延の波を切り返すのだろうか?

児玉名誉教授によると、その原因は2つあるという。

ひとつは、海外など外部から持ち込まれる新種の変異株の蔓延、そしてもうひとつは、感染から回復した人々の体内に幹となるウイルスが残存しており、これが新たな変異株を生み出すという可能性だ。

特に第2波を主導したヨーロッパ起源の「D614G」は強力で、これが幹ウイルスになるかもしれないと児玉名誉教授は指摘している。

Next: ワクチンが効きづらい?拡散している東京・埼玉型(オメガ株)



変異して拡散している東京・埼玉型(オメガ株)

このように見ると、ワクチン接種が拡大しているので第6波は起こらず、パンデミックはこのまま収束する……と言い切ることはできないことが分かる。

日本では例外的に感染が収束しているが、海外ではいまだに感染の拡大が止まらない国も多い。

もちろんこのまま収束して欲しいが、11月頃になると新たな変異株によって第6波が発生しないとも限らない。その可能性は否定できない。

では、第6波を主導するような新たな変異株の拡散は見られるのだろうか?

いまでも多くの変異株は生まれている。その多くは世界的に拡散する前に崩壊してしまうことが多いものの、「アルファ株」や「デルタ株」のように新たなパンデミックの波を主導するものもある。

そのひとつは、「オメガ株」と呼ばれる変異株だ。これは別名、「R.1亜種」とも呼ばれ、2020年12月に東京で初めて確認された「東京・埼玉株」から変異したタイプだとされている。

「ハーバード・メディカル・スクール」の元教授で感染症の専門家であるウィリアム・A・ハセルタイン博士は、「アクセス・ヘルス・インターナショナル」の専門家とともに、この変異株を研究している。博士によると、「R.1亜種」は、「アルファ株(第4波)」や「デルタ株(第5波)」に簡単に取って代わられたが、進化してウイルス適性を獲得したことで復活し、数週間のうちにいま蔓延している「デルタ株」に取って代わる可能性があると予想している。

さらに博士は、この変異株は世界中で1万人以上が感染し、急速に拡大しているという。すでにアメリカの様々な州で検出されており、ケンタッキー州の老人ホームでは、45人の入居者と医療従事者が感染した。

そして、この「R.1亜種」は多くの独自の変異を持つという。この変異は、回復期の血清中の抗体に対する抵抗性の増加や、中和抗体に対する抵抗性の増加をもたらすので、感染者の抗体を回避する能力が高いとしている。

つまり、ワクチンの効き目も弱くなる可能性があるこということだ。

米国で見つかった変異株(B.1.630)

「R.1亜種」ほど拡大はしていないようだが、他にも危険な変異株が発見されている。

そのひとつは、「ルイジアナ州立大学」の研究者が同州で発見した「B.1.630」だ。これはまだ発見されたサンプルが少ないので、「アルファ株」や「デルタ株」といったギリシャ文字の標記がされていない。

この新しい変異株は、タンパク質の「E484Q」の変異のほか、他の変異や欠失を多く含んでおり、免疫回避性があると考えられている。いま徐々に拡大しているようで、現在全米で79以上のこれに類似したタイプが検出されている。

ロシアでも変異種が発生

また、これらと並んでロシアで発生し、ヨーロッパに拡大している変異株も注目されている。「B.1.1.523」だ。

おそらくロシアで発生したもので、これは「世界保健機構(WHO)」が公表している「現在懸念されている亜種(VOC)」に指定した変異株に共通した免疫回避能力を実現する、スパイクタンパク質の変異が組み合わされている。

この変異株は、「アルファ株」や「デルタ株」が優勢であるにもかかわらず、すでにドイツやロシアをはじめ、ヨーロッパの一部地域で急速に拡大している。また、アメリカやオーストラリアでも、この変異株の感染者の増加が報告されている。

Next: 油断できない「第6波」、私たちはどう備えるべきか?



デルタ株から変異したイギリスで流行しているAY.4.2

次に注目されているのが「デルタ株」から変異した「AY.4.2」だ。

「AY.4.2」という変異株は、イギリス国内のほぼ10%を占めており、「英国保健安全局」の説明によると、これは「デルタ株」から変異したもので、すでにイギリスでは増加傾向にあるという。専門家のなかには、「AY.4.2」の感染力はオリジナルの「デルタ株」よりも10%~15%高い可能性があると警告しており、「世界保健機構(WHO)」から「注目すべき変異体」に指定される可能性があると予想している。

「AY.4.2」は、世界中で記録されている「デルタ株」の45ある亜系統の1つだ。「AY.4.2」には、新型コロナウイルスがヒトの細胞に取り付いて侵入する際に使用するスパイクタンパク質に、「Y145H」と「A222V」という2つの変異があるのが特徴だ。

「ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン」の遺伝学研究所所長のフランソワ・バルー教授によると、「AY.4.2」でなぜ感染力が高まったのかは明らかではないという。

やはり「第6波」には注意すべき

このように、いま世界で猛威を奮っている「デルタ株」に代わる新たな危険な変異株が拡散している。免疫を回避する能力があり、ワクチンの効き目が弱いものが中心だ。

もちろん、すべての変異株が拡散するわけではない。新型コロナウイルスは変異が早い。2週間に一度程度の頻度で新たな変異株が現れると考えられているが、ほとんどは拡散することなく自己崩壊してしまう。

今回紹介したものは、生き残っていま拡散しつつあるタイプだ。そのどれも高い免疫回避能力を獲得しており、ワクチンが効き目が弱くなるタイプだ。

むろん、感染者数の減少が続き、今回の第5波のピークアウトで新型コロナウイルスのパンデミックが日本では完全に終わってほしいが、その保証はない。

日本では、第5波の「デルタ株」が自己崩壊してパンデミックが小康状態になった後、今回紹介した新たな変異株によって第6波が始まらないとも限らないのだ。

やはり、気を抜くことなく感染には最大限の注意は怠らないほうがよいだろう。新たな情報があればすぐにお伝えする。

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