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格差・成長・財政で「三重苦」の日本はもう沈むのか?どの党も公約に掲げぬ経済復活のカギ=矢口新

いよいよ衆院選の投開票が迫るが、どの党の公約にも心は動かない。日本は格差・成長・財政の「三重苦」でこのまま沈むのだろうか?日本経済が復活するには、1988年以前の税制に戻すしかないと私は考えている。(『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2021年10月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

心が動かない総選挙

衆院選は今週末10月31日(日)に投開票が行われる。

政治が自分たちの生活を時には劇的に変えることを知っているので、国民が政治に関与できる数少ない手段である「選挙」に無関心なわけではないのだが、1週間前の日曜日になって初めて、自分が投票できる選挙区に、誰が立候補しているのかをチェックしてみた。
※参考:衆議院議員選挙2021 候補者情報 政策 公約 -衆院選- NHK

なぜ、ギリギリまで知ろうとしなかったのかと言えば、テレビなどで目にする各党の党首たちの言動に、心を動かされるものがなかったからだ。

人に動かしてもらわなければ、心は動かないのか?勝手に自分たちの生活をこれ以上悪くされてもいいのか?そんなわけはないのだが、どこか違うのだ。

単年度での財政均衡がスタートライン

ダイヤモンド・オンラインに、「総選挙で求められる“まともな”政策論」というものがあった。そんな私の気持ちを代弁してくれる個所だけを、抜粋して引用する。

新型コロナパンデミックの中で行われる今回の総選挙の争点は、傷んだ経済をどう立て直すか、そして疲弊した国民生活をどう支えるかだ。

とりわけ、コロナ禍で改めて浮き彫りになった格差の問題をどう解決するのか、格差を生んだ一因でもある経済政策をどう変えるのか、そしてそれらの対策の財源確保を含め、すでに巨額の赤字を抱えている財政をどう立て直していくのか、それぞれ深く関係する「三つの基本問題」で、責任ある政策論争が求められる。

今回の総選挙に向けての各党の公約でも、コロナ対策、経済対策、さまざまな対策がそれぞれに掲げられてはいる。

しかし率直に言って、各党そろって「ばらまきのオンパレード」といわざるを得ない。

「大型補正」「○○兆円の経済対策」「減税・免税」「給付金・手当」、果ては「全国民月10万円のベーシックインカム」と、バラマキとしかいいようがない。

PB黒字化目標の凍結を言い出す政党もあり、コロナ対策ということにすれば「何でもあり」状態だ。

※参考:格差と成長と財政の「三重苦」、総選挙で求められる“まともな”政策論 | 政策・マーケットラボ – ダイヤモンド・オンライン(2021年10月19日配信)

PBとは、プライマリーバランス、単年度での財政均衡だ。

まずは、単年度で黒字化して、それから徐々に累積した財政赤字を減らしていく、いわばスタート地点だ。

歴代の政権は、PB黒字化目標を数年度先に置き続けてきたが、絵に描いた餅であることが周知の事実になってきているので、とうとう凍結を言い出す政党が出てきたのだ。

上記のコラムは、そのことに批判的だが、口先だけの目標を言い続ける政党と、どちらが正直なのかは分からない。

実は、私自身は、格差と成長と財政の「三重苦」の解決策を提案している。

Next: 格差・成長・財政の「三重苦」は解決できる



格差・成長・財政の「三重苦」は解決できる

私は、格差と成長と財政の「三重苦」の解決策を提案している。

そして、政治に無関心なわけではない証として、日本が置かれた状況を分析し、「三重苦」の原因を特定して、それを排除すれば日本は良くなるとした。

また、意見ではなく、グラフ化されたデータで、事実だけを知るために、問題集も作成した。

今週末の選挙にどう向かうか、その判断の手掛かりとして、新著の問題集の「案内」を以下に引用する。

このままでは「三重苦」は悪化し続ける。選挙で誰にも投票しないことは、結果的にその状態を受け入れることになる。何事も、諦めたらお終いだ。

私自身は、消去法で、入れたくない人から順に外して、残った人に入れるつもりだ。

税制を変えれば財政収支は黒字化する

以下、私の新著『日本が幸せになれるシステム問題集: 日本経済の病巣を明らかにするための57問』(著:矢口新/刊:Kindle Edition)より引用する。

*****

2021年秋、日本に新しい政府と、新しい議会が誕生しました。政治家たちは国民の支持を得ようと、多くの公約を致しました。

とはいえ、そうした政治家たちが理想を語れば語るほど、その政策を資金面で支える財源が必要となります。

日本も多くの国と同じように、コロナ対策の一環として大量の資金を供給しましたが、その原資はやはり借金です。とはいえ、ほとんどの政治家たちは巨額の政府債務を忘れたかのように、財源については触れようとはしません。

また、その資金は苦境の企業にも貸し出されましたが、企業の借金は誰も忘れてはくれず、その資金で業績を回復し、返済せねばなりません。

一方で、財政の立て直しは急務なのですが、財政収支が黒字化する見通しが立たないのです。なぜなら、2011年度から2020年度までの平均税収は年53.4兆円なのに対し、平均歳出は年107兆円だからです。

つまり、この10年間、総税収に匹敵する平均53.6兆円もの財政赤字を毎年出し続けているのです。

統計がある1975年度以降から2020年度までの歳出と税収の差額は総額1417.5兆円の赤字です。2020年度末の国債残高は946.6兆円です。マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール政策で、利払い費は低く抑えられていますが、それでも年間約9兆円あります。

これで、どのようにすれば財政収支が黒字化するのでしょうか?

日本の状況がより深刻なのは、その債務の巨大さだけではありません。そこまで借金しても、経済も企業業績も上向かず、税収も増えないような税制となっていることなのです。

Next: 日本経済が復活するには、1988年以前の税制に戻すしかない



日本経済が復活するには、1988年以前の税制に戻すしかない

私は政府や国際機関が提供している65のグラフデータを分析することで、1980年代までの日本が強かったのは偶然でもなければ、奇跡でもない。経済と財政をしっかりとサポートする税制だったのだと結論するに至りました。

そこで私は、日本経済が復活するには、1988年以前の税制に戻すしかないとして、2021年春に一種の啓蒙書を出版しました。
※参考:『日本が幸せになれるシステム』(著:矢口新/刊:Kindle Edition)

しかし、同じデータから、全く違う結論を導き出す人たちがいるかも知れません。また世の中には、肩書のない私(元金融機関のディーラー)の意見など、聞きたくないと言う人たちもいることでしょう。

本書では「日本が幸せになれるシステム」で取り上げた57項目のデータに関する3択問題を、読者の方々に回答して頂くことで、日本経済が置かれた状況を読者の方々自身で把握して頂くようにしています。

クイズ形式にしたのは、私見をできるだけ排除したかったこと。また、難しい経済用語もあるのでよりわかりやすく、さらに繰り返して知識が定着するようにとの思いからです。

続きはご購読ください。初月無料です

新刊情報:『日本が幸せになれるシステム問題集: 日本経済の病巣を明らかにするための57問』

この記事の著者・矢口新さんの新著『日本が幸せになれるシステム問題集: 日本経済の病巣を明らかにするための57問』(刊:Kindle Edition)が発表されました。既刊の『日本が幸せになれるシステム』では、65のグラフデータをもとに日本が衰退した要因を特定し、それを取り除くことで日本は復活できると解説。新著では、57項目のデータに関する3択問題を出題し、クイズを解きながら日本経済が置かれた状況を把握できるようになっています。ぜひお手にとってご覧ください。

『日本が幸せになれるシステム問題集: 日本経済の病巣を明らかにするための57問』(著:矢口新/刊:Kindle Edition)

『「日本が幸せになれるシステム」問題集〜日本経済の病巣を明らかにするための57問』目次

まえがき
第一章:日本を破壊した税制
【問題01】 税率を上げても増えない税収
【問題02】 消費税収は成長率、所得税収、法人税収とトレードオフ
【問題03】 消費税は経済成長を止めた
【問題04】 アベノミクスによる成長率はほぼゼロ
【問題05】 いざなみ景気の税収面での貢献はネガティブ
【問題06】 世界経済のミラクルは、日本から中国に変わった
【問題07】 アベノミクス、真の成果は?
【問題08】 雇用形態の変容
【問題09】 世界から乖離していく日本の実質賃金
【問題10】 名目賃金のターニングポイントも消費増税と一致
【問題11】 1997年から資金供給量は11.2倍
【問題12】 日銀は「物価しか見ていない」
【問題13】 銀行の預貸ギャップが290兆円に
【問題14】 マイナス金利政策の導入
【問題15】 アベノミクスは金利市場を破壊した
【問題16】 民間から政府への所得移転
【問題17】 物価の推移
【問題18】 消費増税でディスインフレに
【問題19】 消費税では社会保障費を賄えない
【問題20】 借金頼みの財政
【問題21】 消費税導入は法人税率引下げとセット
【問題22】 法人税率引下げで得たもの
【問題23】 赤字企業も急増
【問題24】 消費税は売上から天引き
【問題25】 所得税
【問題26】 個人住民税
【問題27】 One For All, All For Oneの虚実
【問題28】 格下げ
【問題29】 膨らむ公的債務残高
【問題30】 ギリシャやイタリアは緊縮財政
【問題31】 日本は113カ国中、113位
【問題32】 純債務残高でみると?

第二章:つくられた貧富格差拡大
【問題33】 つくられた貧富格差拡大
【問題34】 貧富格差の拡大は止められる!
【問題35】 日本の税収推移
【問題36】 日本の税収構造
【問題37】 デンマークの税収推移
【問題38】 デンマークの税収構造
【問題39】 スウェーデンの税収推移
【問題40】 スウェーデンの税収構造
【問題41】 OECD内32カ国の政府支出
【問題42】 日本、デンマーク、スウェーデンの財政収支の推移
【問題43】 主要国の所得税率の推移
【問題44】 世界の法人税率の推移
【問題45】 財政黒字の国は一握り
【問題46】 通貨の価値

第三章:崩壊前夜の社会保障制度
【問題47】 日本の公的社会保障支出
【問題48】 社会保障費の内訳と財源
【問題49】 高齢者の年金依存度
【問題50】 国民健康保険
【問題51】 1人当たり医療費
【問題52】 政府の教育支出
【問題53】 社会保障関係費の推移
【問題54】 国民負担率の推移
【問題55】 ダイヤモンドになったピラミッド
【問題56】 日本人の死亡原因
【問題57】 厚生労働省の見積もり

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2021年10月配信分
  • 三重苦の日本はもうダメなのか?(10/25)
  • 現職の財務省トップが政策批判!(10/18)
  • 公平な分配は税制改革から(10/11)
  • #594 号外 日本が幸せになれるシステム問題集(10/7)
  • 米国で何百万人ものホームレスが出現?(10/4)

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  • 財源には触れない未来の日本の首相(9/27)
  • 号外 中国版リーマンショックか?(9/22)
  • 多様性を否定する社会は脆弱(9/21)
  • 米911テロから20年(9/13)
  • 最悪期の首相(9/6)

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2021年8月配信分
  • テイパリングと米株(8/30)
  • アフガニスタンとドル円(8/23)
  • コロナ対策の巧拙がその国の未来を左右する(8/16)
  • 損切りオーダーは不可欠か?(8/9)
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  • 貧富格差は税制で是正できる(6/7)

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2021年4月配信分
  • #572 号外(4/30)
  • 知ってた? 日本の社会保障制度は崩壊を避けられない(4/26)
  • 投機とマーケットメイキング(4/19)
  • 業界の慣例を鑑みれば、野村の大損失は避けられなかった?(4/12)
  • 野村はどうして2000億円を超える大損失を出したのか?(4/5)

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2021年3月配信分
  • 法定通貨とビットコイン(3/29)
  • 財政支援と、ユーロの限界(3/22)
  • 新型コロナウイルス・パンデミックの復習(3/15)
  • 米金利急騰?(3/8)
  • 最近の株価急落について(3/1)

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2021年2月配信分
  • 必要性のない技術革新(2/22)
  • ビットコインが運用資産に?(2/15)
  • 地銀再編(2/8)
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  • バブルの兆候(1/25)
  • 1人の人間でもできること(1/18)
  • 今が日本のコロナバブルの初動?(1/12)
  • 角を矯めて牛を殺すな(1/4)

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  • 2021年はESG投資が本流か?(12/28)
  • マクロ寄生とミクロ寄生(12/21)
  • 75歳以上の医療費2割負担(12/14)
  • 核科学者殺害、イラン硬化(12/7)

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image by:Matej Kastelic / Shutterstock.com

相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2021年10月25日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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