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100均が40年も「100円のまま」なのは日本だけ。最低すぎる最低賃金とデフレマインドから抜け出さないと亡国へ=原彰宏

海外展開している「ダイソー」の海外店は、原材料高騰により200円~300円と値上げしています。日本人の労働力では、100円という価格を維持できる水準だということ。40年以上もずっと100円であることは異常事態です。ここから本格化するインフレによって、日本人の生活は大きく脅かされます。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

【関連】日本の貧困層は飢えずに太る。糖尿病患者の半数以上が年収200万円未満の衝撃=鈴木傾城

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2022年1月4日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

物価も賃金も上がらない……世界に遅れをとった日本

日本では、バブル崩壊後20年以上に渡って物価が上昇せず、賃金も上昇しない景気低迷の状態が続いています。

日本の最低賃金が先進国の中でも最低の水準であること、また1人あたりGDPがお隣の韓国に抜かれているということは、いろんなところで日本経済の“ひどさ”を表すうえで用いられている表現となっています。

20年以上も経済が成長しない国って、労働者賃金が上昇していない国って、果たして「先進国」と言えるのでしょうか?

でも、その当の国である日本国民は、そのことを「不幸」だとは思っていないところがあるように感じてならないのです。

つまり、私たち日本人自身が、日本経済が“ダメ”だと実感していないように思えるのです。そのことが問題の本質のような気がしています。

「現状維持で満足」…そんな空気感さえ感じることがあります。

「常に横ばい」の日本はある意味すごい?

最近、話題沸騰のイェール大学・成田悠輔助教は「横ばい力」という謎の言葉を使って、「日本はある意味すごい」と表現しています。

変わらないことは美徳なのか…。日本人って、本当に変わることを極端に恐れる人種なのでしょうか。とにかく20年以上もの間、“何も変わっていない”のが日本という国なのです。

日本人は、生活困窮で明日食べるご飯がないほど追い詰められているわけではなく、とくに大きな夢を持たなければ“無難”に生きていくことができる社会です。そして最後は、なんだかんだ言って国が守ってくれる、会社がある限りなんとか生活ができている。そんな状況が20年以上も続いていたのです。それも、日本という国なのです。

確かに、日常生活で命の危険と向き合うことは、ほぼないですからね。

Next: 自分たちの労働環境さえ守られればいい?成長意欲のない日本人



自分たちの労働環境さえ守られれば、それでいい?

すごく嫌味な表現を“敢えて”してみますと……日本人は、世界がインターネット・インフラを整備しようが、テクノロジーをどんなに発達させようが、今の自分たちの労働環境さえ侵されなければ、そんなことはどうでも良いと考えているのでしょう。

今の労働環境が壊されることが嫌なだけで、組合や企業が自分たちの労働環境を維持さえしてくれればよいわけです。

従って、テクノロジーの発達やロボットの活躍によって自分たちの労働環境が侵されるならば、それらはむしろ「無いほうが良い」のです。

それなりに働いていれば、最低限の給料が継続的にもらえるのであれば「満足」なのですね。

この風潮がある限り、日本は何も変わらないでしょう。こんなマインド設定では、世界のテクノロイジーの流れついて行けるわけがありません。

企業の内部インフラの効率化と労働機会の問題は、バッティングするものなのでしょうか。

トヨタが内燃機関にこだわって完全にEVシフトできないのも、裾野の広い産業構造における労働者を守るためと言われているようですが、果たしてそれで良いのでしょうか。

「変わらないことが望ましい」

余談ですが、選挙行動を見れば、この仮説はうなずけてしまうのですがね。

「変わらないことが望ましい」……日本では技術革新や構造改革が進まない現状が、すべてを物語っているようにも思えます。

繰り返しますが、事実としてこの国は、20年以上も経済成長は横ばいか微増で、最低賃金は変わらず低いままでいるのです。

本当に「少子高齢化」は大変なことだと思っているのでしょうか…人口減少に危機感を覚えているのでしょうか…。

ここに来て開き直りにも見えるような、「経済成長はしなくて良い」とか「人口は増えなくて良い」という論調がもてはやされるようになってきています。「地球温暖化のために経済成長はなくて良い」というものです。

一方で、「分配は必要だ」「格差はなくせ」という主張も、強くあるようです。

デフレからの脱却を考えるうえで、この日本人のネガティブマインドを変える必要があると思います。

Next: 経済とお金の話をするのは「悪」と感じてしまう日本人



経済・お金の話を聞くのは「悪」?

それと同時に、もっと経済の仕組みを理解することが大事だと思いますね。経済を知ることから目を背けないということが必要だと思います。

「経済」と聞いただけで「悪」だと思う謎の思考、お金を稼ぐこと、お金の話をすることを頭から否定する謎のマインドは、今すぐ治すべきですね。

海外では学校教育において、経済の仕組みやお金を稼ぐ仕組み、労働のあり方をしっかりと学びます。

当然、経済を語ることはタブーでもなく、経済が「正義」の反対側にあるものではないことも理解しています。

日本ではどうしても、経済や社会の仕組みに対する基礎知識が乏しいので、人口減少の危機などが実感できないのではないでしょうか。

海外のダイソーは「100円」に非ず

ただ、適応力は優れています。

デフレ経済の申し子のような「100円ショップ」、300円以下で食べられる牛丼屋、ワンコインランチなどなど、良い意味で言えば「デフレ下で生きる知恵」とも言えそうです。

米国では、インフレになるとすぐに価格に販売価格を引き上げます。日本では販売価格を上げないで人件費を削ります。

デフレ経済の申し子「100円ショップ」は、客離れを恐れ、値上げに踏み切れない日本企業の実態を如実に示しているといえます。

海外展開している「ダイソー」の海外店は、原材料高騰により200円~300円と、値上げしています。

そもそもは労働者の最低賃金の問題

そもそも労働者の最低賃金が違うのかもしれません。

日本人の労働力では、100円という価格を維持できる水準だということ。40年以上もずっと100円であることは異常事態です。

米国では、物が買えない人は切り捨てられます。物が買えない人のために低価格を維持するという発想はありませんが、一方で、人件費はインフレとともに引き上げられます。モノの値段の変化は市場原理に任せ、インフレは賃金で調整します。

というか、インフレになると賃金を引き上げないと生活が苦しくなります。賃金を上げなくても労働者が確保できるという仕組み自体が、問題ではないでしょうか。

日本でデフレがこれだけ続くのは、販売価格を引き上げないことが企業努力のように思われているところがありはしないでしょうか。そのしわ寄せは人件費にきているような気がします。

そのことが、労働賃金が上がらない要因にもなっているでしょう。つまり、価格競争でしか、企業が生き残れない産業構造になっているのです。

付加価値を付ける販売競争に転化してこなかった労働生産性を追求した業態変化をとってこなかった労働者維持のために効率的な社内インフラに力を注いでこなかった…。

ようは「何もしてこなかった」と言えます。

Next: お金が消費に回らない……。流動性の罠にはまったアベノミクス



社内インフラの大革命「DX」の時代へ

「DX」という、社内インフラ大革命が起きようとしています。

かつて経団連は、DX推進だと従業員をカットしなければならないから、DXには積極的には動けないと回答する企業が多かったようです。

従業員を切らない立派な企業…。

社内インフラの効率化を求めてこなかったことが、結果として消費者価格に反映できない分、人件費にしわ寄せが来ることを、労働者側も理解していなかったようです。

流動性の罠にはまったアベノミクス

そんな産業構造を変えるよりも、無理やり消費を促進しようとしたのが「アベノミクス」でした。

「デフレからの脱却」を掲げたアベノミクスですが、異常とも思える大規模な金融緩和で市場にお金を供給したものの、そのお金は消費に回らない「流動性の罠」に陥っているのも、日本独特のマインドなのかもしれませんね。

金持ちがよりお金を使うことで、経済全体が動き社会が潤うというお金の循環「トリクルダウン」は起きなかったようです。シャンパンタワーのような現象は、起きなかったのです。

貧富によらず「将来不安のために貯蓄しておこう」という気持ちがあるのです。政府が年金制度や医療制度を抜本的に見直すことをせず、若い世代を中心に老後に不安を抱えさせている状況では、「貯蓄から消費」の流れを作ろうとしても、皆がそれに従うわけがありませんよね。

政府が長期ビジョンを見せないことが、日本では消費が喚起できない状況につながっているのだと思います。

いったん賃金を上げると下げることができない

今の制度では、賃金を上げると、景気が悪いからという理由で下げることはできません。

企業にとっては賃金を上げる、つまり固定費を増やしても耐えられる企業体質にしなければならないわけで、そのためにも社内インフラの効率化を図る努力を行う、労働生産性を上げる、また、価格競争に陥らない付加価値戦略に切り替えることが大事だと思いますね。

富裕層自体も、その地位から脱落する数が増えて来ているそうですよ。

20年以上も何も変わらない状況事態を良しとするメンタルは、やはり教育のあり方に問題があるようにも思えてなりません。

行き過ぎた市場主義(いわゆる新自由主義ですかね)の反動で、ポピュリズム的発想がもてはやされていますから、余計に経済が大事であることが受け入れられない状況になっているのかもしれませんね。

Next: 多面的な角度から見られる日本が賃金上昇できない固有の理由



色々な角度で見られる賃金上昇しない日本固有の問題

ここまで「マインド設定」の話に固執しました。あくまでも「Opinion」です。

労働者賃金が上がらないのは企業のせいだという論が多く、企業が内部留保金を溜め込んで抱えているとか、株主還元のために従業員賃金を犠牲にしているという論調もあります。

誰が悪いという犯人探しではないような気もします。

企業が収益が上がる体質改善をしてこなかった。労働者側の意識も変えなければならない、賃金を下げてはいけないというルールや解雇規制などの制度問題…。

いろんな角度から見て、日本固有の問題が内在していると思います。

とにかく2022年の日本社会の大きな課題だと言えます。議論は大いにすべきです。

デフレから脱却しないことが、賃金が上がらない要因でもあります。

インフレで訪れる生きづらい世の中

インフレになって初めて賃金は上がりますからね。

そのメカニズムは経済の基本ですから、ぜひ学んでください。感覚だけでなく、印象で語るのではなく、基本を学ぶことは大事です。

難しいから、ややこしから、政治や経済から目をそらすことは改めましょうよ。経済の仕組み、労働のあり方、儲けのしくみ、お金の流れ、社会保障のあり方、本当はこれらのことは、義務教育の段階で学んでほしいことなのですがね。

デフレに慣れていて、インフレは生きづらい世の中になることは理解きでます。

物価上昇は景気上昇局面では必ず起こることですが、賃金上昇は企業の努力が必要です。そのための制度による縛りも、そろそろ見直すころでしょう。

物価上昇時に賃金が上がらないことが、一番つらいですよ。

それが、2022年の一番大きな「日本の課題」だと思います…。

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image by:Tang Yan Song / Shutterstock.com

らぽーる・マガジン』(2022年1月4日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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