明けましておめでとうございます。いよいよ2022年の相場がスタート。今年の為替展望、トレード戦略について解説していきますので、どうぞよろしくお願いします。(ゆきママ)
2022年は中央銀行が「インフレとどう向き合うか」が焦点
為替の長期予想は難しいですし、まず当たらないというのが定説ですが、それでもここ数ヶ月の焦点となるテーマはほぼ確定しています。
ズバリ、“インフレ”ですね。
ちょっと前までは、デフレは経済のがんのような扱いで、各国ともにデフレ脱却に全力を尽くしていましたが、インフレになったらなったで、かなり中央銀行を慌てさせています。
それもそのはずで、単純なインフレというわけではなくて、背景にはコロナの感染拡大によるサプライチェーンの混乱、輸送や人員不足がボトルネックとなって、短期的に急上昇し、かつ見通しにくいという状況になっています。
これに各国の中央銀行がどう対応し、いかにコントロールするかが為替相場、ひいてはマーケット全体の値動きを決めることになるでしょう。
米ドル高・円安・ユーロ安は完全に織り込み済み
米国の11月消費者物価指数が前年同月比で39年ぶりの上昇となるなど、急激なインフレの高まりを受け、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は一転してテーパリング(緩和縮小)を早め、金利の引き上げを表明しています。
その一方で、日本銀行は現状維持の緩和的スタンスを維持していますし、ECB(欧州中央銀行)も同様で、まずは静観の構えです。
なので、2022年の金融機関の為替見通しは「米ドル高・円安・ユーロ安」という予想でほぼ完全に一致していますし、上半期は特にその傾向が強いです。
しかしながら、ユーロは過去最高レベルに売られていますし、あまりにも織り込みが強いので注意が必要でしょう。
市場参加者全員が同じ方向を見ているということは、その反動も強まることになります。
Next: 2022年に有効なトレード戦略は?手を出すと危険な通貨も
まずは「ユーロドルの戻り売り」「米ドル円の押し目買い」が良さそう
これらを踏まえたうえで、具体的なトレード戦略です。
やはり、しばらくは「ユーロドルの戻り売り」を試しつつ、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢悪化、米中対立激化など、地政学的リスクの高まりを受けて円高になるなら、「米ドル円の押し目を狙う」というのが良さそうです。
まずは基本に忠実に、大きな流れには逆らわないトレードが良いでしょう。
ただし、ユーロに関しては売られ過ぎであること、ECBの緩和姿勢が織り込まれ過ぎているため、特にECBの政策スタンスには注目しておきましょう。変化があった場合には、急激に巻き戻されてユーロ高になる可能性があります。時期的には下半期は特に警戒したいです。
やはりインフレの激流に晒されているのは欧州も例外ではなく、例えばガス価格は過去最高値を更新し、昨年から10倍以上の価格となっています。
市場の価格がそのまま転化されるわけではありませんが、既にガスや電気料金が前年から2倍以上になっている国も珍しくなく、エネルギー価格の高騰によるコスト増で、ほぼすべての生産品の価格が上昇することは間違いありません。実際、欧州では肥料価格が高騰し、野菜なども値上げされています。
この欧州のインフレが一過性に終わるとは思えず、どこかでECBの政策スタンスが大きく変わる可能性は十分ありますから、日々のインフレ動向、ECB関係者(ラガルド総裁、レーン理事兼チーフエコノミストら)の発言には注意しておきましょう。
トルコリラには絶対に手を出すな
原油価格が上昇しているため、資源国通貨である加ドルや豪ドル、NZドルはまずまず強いことが想定されます。特にカナダとニュージーランドは、中央銀行も引き締め方向で動いていますから、両方が一致すればまずまず買える、強い通貨になることが想定されます。
一方、危険な通貨、下手をすると紙クズになってもおかしくないのがトルコリラで、すでに新規取引を停止するFX会社もあるほどです。
エルドアン大統領がインフレを放置し続けた結果、トルコリラ安が止まらない状況となっています。インフレとは、お金の価値が下がる、結果として物価が上がることですが、適切なインフレを保つために中央銀行は腐心しているわけですが、エルドアンが介入し、利上げさせないことで今の惨状となっています。
あまりのトルコリラ安を受け、「リラ建て預金の価値を政府が保全する」と発表し、一時的に反発する場面もありましたが、結局は売られています。
いずれにせよ、根本的な問題はインフレにあり、エルドアン大統領が利上げをせずに低金利政策を継続するとしている時点で、トルコリラ安のトレンドは変わらないでしょう。
しかも、対外債務を抱える新興国にとっては、米ドル高も重しになります。債務のほとんどは米ドル建てですから、米ドル高になれば実質的に債務が増加し、返済負担が増えることになります。当然ですが、財政も悪化します。
コロナで財政余力が全くない上に自国通貨リラ安が止まらない、そして米ドル高で返済負担増で財政は一段と悪化、さらに損失補填で自転車操業状態と、完全に詰んでると思います。
もはやトルコリラは崩壊のパターンに入っているとも言えるので、絶対に買ってはいけません。ただ、売れるかというと値幅的に取れて最大で9円ですから、取引停止やアップサイドのリスクまで含めると売るのも難しいでしょう。触ってはいけない通貨です。
Next: 「高利回り」の甘い誘惑。ブラジルレアルにも絶対に手を出すな
ブラジルレアルの高利回りに騙されるな
また、ブラジルはトルコほど対外債務はないので米ドル高には強いですが、やはりコロナ禍による巨額の財政出動で財政は大きく悪化し、長期債利回りが急上昇したことから、国債の発行を短期債に集中させ、かなりの自転車操業状態となっています。
新興国通貨は安く、初心者の方だとスワップポイントなどに惑わされて、ついつい手を出してしまいますが、ブラジルレアルも買ってはいけない通貨なので、ご注意いただければと思います。
以上、2022年の相場展望でした。
やはり、今年も言えるのは基本に忠実に取り組むことが重要です。証券会社の宣伝に煽られて、トルコリラやリラ建債券に手を出してしまった人は、いまごろ真っ青になっていると思います。こういった落とし穴で大損しないようにしていきましょうということで。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年1月6日)
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による