2022年のマイホーム購入は “買い”か“待ち”か。昨年はコロナ禍の影響で土地の資産価値に動きが見られました。今年はどうか。コロナ後の日本経済の回復を見越したうえで分析しました。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。
「資産価値の高い」マイホームの探し方
マイホーム購入で皆さんが気にするのは、その物件の“資産価値”です。
マイホームは不動産投資ではないので、積極的に“儲かりたい”とは思っていないでしょう。しかし、たとえそのような方でも、できればマイホームは値下がりしてほしくない、可能なら値上がりしてほしい……と思っているのではないでしょうか。
値下がりしないマイホームを購入できれば、将来の資産になりますし、売却することで老後の資金としても活用できるため、未来の「安心」が手に入ります。
そのために重要なのは、「エリア」と「購入タイミング」の選定です。できるだけ値下がりしないエリアを選び、できるだけ割安なタイミングで購入することです。
2022年は購入タイミングとして良いのか、そして、どのエリアが良いのかについて、詳しく見ていきましょう。
地価に対するコロナの影響
まず、最初に直近の地価についてみていきます。
コロナの影響がなかった2018年から2019年までは、東名阪の三大都市圏は継続して地価は上昇していました。地方圏でもプラスのエリアも多くあり、地価は基本的には上昇傾向でした。
しかし、2020年のコロナ以降、地価は大幅に下落傾向となり、2021年でも三大都市圏でプラスマイナスゼロ成長、地方圏ではマイナス成長のままとなり、いまだ出口が見えていない状況が続いています。
2020~2021年はコロナの影響で全国的に地価は低迷していますが、この傾向は継続することが見込まれます。また、地方圏についてはコロナだけの影響でマイナス成長となっているわけではなく、人口減少が最も大きな要因ですので、たとえコロナを克服できたとしてもプラス成長の軌道に乗れるとは言いがたいでしょう。
Next: 東京・名古屋・地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)はプラス成長
エリア別(都道府県別)の地価変動
エリア別の地価変動をもう少し詳しく見ていくと、2021年の地価は、東京圏と名古屋圏はプラス、大阪圏はマイナスとなっています。あくまで統計上の推測ではありますが、大阪圏では人口に対しコロナの影響を大きく受けたため経済活動が縮小したことがわかります。
また、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)はコロナ禍にも継続してプラス成長をしているため、将来有望なエリアだといえます。
各都道府県別でみていくと、北海道、宮城県、千葉県、東京都、石川県、愛知県、福岡県、大分県、沖縄県の9都道県でプラス成長をキープ。人口比でコロナの影響を大きく受けた沖縄県では、もともとのプラス幅が4~6だったものが、1台まで下がっているものの、それでもプラスを維持しており、今後も将来有望なエリアだと考えられます。これらのエリアに住んでいる方は、今後の地価上昇に備え、早めにマイホームを購入するのが吉といえるでしょう。
逆に地価が継続的にマイナスのエリアの場合は、待てば待つほど、安くなるため、焦って買わないのが吉といえます。
Next: マンションか、戸建てか。供給数も判断基準に
マンションと戸建ての供給数
マンションを買うべきか戸建てを買うべきかというのは、マイホーム選びの永遠の質問の一つです。各家庭のライフスタイルにより、どちらが良いと一概に決めることはできないので、決着がつくことはないでしょう。
ただ、マンションと戸建てのどちらがより、買いやすいかについては、統計的観点から答えることができます。
上記の図表は、2018年から2021年までの持家(自ら建築した家)、分譲戸建て、マンションの供給数をまとめたものです。
2018年には持家、分譲戸建て、マンションの全てにおいて前年比プラスでの供給がなされていましたが、2020年にはすべてにおいて前年比マイナスとなっています。
前年比マイナスということは、市場への供給数が前年よりも減っており、買いにくくなるということです。
しかし、持家及び分譲戸建ては2021年には早々に前年比プラスとなり、供給数が回復してきています。それに対しマンションは2021年も継続的にマイナスとなっています。
2021年の着工が減っているということは、2022年に完成するマンション数も減っていくということです。すなわち今年もますますマンションは買いにくくなっていくということです。
マンションと戸建ての価格推移
需要と供給で価格が決まる市場において、マンションの供給数が減るということは、価格が上昇するということを意味します。
マンションと戸建ての価格の推移をみると、2010年を100とした場合、2021年にはマンションは163.8%も上昇しており、価格の上昇傾向は続いていることがわかります。コロナ禍においても15%以上も価格が上昇しており、年々マンションは値段が上がり買いにくくなっていくことが予想されます。
もちろん、単純に供給数だけでなく、タワーマンションなどの建設により、都心の高価格帯マンションが増加し、マンションそのもののグレードが上がっているということや、海外の投機筋による値上がりなどもありますが、住みたい場所で、欲しいグレードのマンションを見つけたら、値上がりする前に購入したほうがよさそうだといえます。
逆に、戸建てについては2010年以降、販売価格に大きな変動はなく、プラスマイナス5%程度で推移しているためマンションよりはじっくりと見定める時間がとれそうです。
Next: 「住宅ローン減税」縮小による影響も。いまは買い時か?
住宅ローン減税の縮小による影響
マイホーム購入の意思決定に少なからず影響を及ぼすのが、住宅ローン減税です。
普段、投資物件を取り扱っている不動産投資家から見ると、住宅ローン減税は、ありえないほどの優遇措置を受けられるため、必ず押さえておきたいポイントだといえます。
そして2022年、残念ながら住宅ローン減税が改正(改悪)されました。具体的には控除率がこれまでの1%から0.7%に引き下げられるとともに、新築の一般住宅の借入限度額が4,000万円から3,000万円に大幅縮小しました。また、住宅ローン減税を利用できる所得制限もこれまでの年間合計所得が3,000万円から、2,000万円以下に切り下げられました。
所得と年収は異なりますが、わかりやすく言うと年収が2,000万円以下の人しか住宅ローン減税を受けられなくなるということです。
これらの改正(改悪)により、これまでは認定住宅で最大600万円、一般住宅でも480万円の住宅ローン減税が受けられたのに対し、今後は認定住宅でも最大455万円、一般住宅で273万円しか受けられなくなってしまったのです。
この改正(改悪)の発表後、かなり多くの方が、かけこみで2021年に住宅を購入したため、2022年は需要が多少落ち込む可能性があるでしょう。
なお、この住宅ローン減税の改正(改悪)は2024年にはさらに引き下げられて、一般住宅で最大140万円までしか受けられなくなります。
一般住宅を購入予定の方はできるだけ、2022~2023年のうちに購入しておくことをおすすめします。
2022年のマイホーム購入は“買い”か“待ち”か
最後に2022年のマイホーム購入は“買い”か“待ち”かをまとめました。
まず、土地が値上がり傾向のエリアでは基本的に“買い”です。持家も分譲戸建てもマンションも土地値が上がれば値上がりしますので、今のうちに購入する方が吉とでました。
特に都心のマンションは最高値となっており、なかなか買いにくい状態です。本当に欲しい物件が出てきたら即買いしないと間に合わないでしょう。
また、改正(改悪)されたとはいえ住宅ローン減税の効果もまだまだ残っています。少なくとも2024年のさらなる改正(改悪)を受ける前に購入しておいた方がよいでしょう。
次に土地の値下がりエリアについてですが、こちらは持家及び分譲戸建てに関しては、土地の値下がりや建築コストの値下がりを期待して“待ち”と出ました。
コロナの影響で物流が滞り、木材価格も引き続き高騰しており、2022年は住宅や家具などの値上がりが見込まれています。このコロナ不況から脱却し、経済回復が進むまでこの傾向は続きますので、今すぐあせって高値で買う必要はないでしょう。
ただし、土地の値下がりエリアでもマンションについては、供給数が不足しているため、どうしても欲しい物件が出た場合は“買い”です。その場合は、仮に将来、値下がりしても良いと割り切る覚悟が必要になるかもしれません。
Next: それでも迷ったらどうする?買い・待ちの判断基準まとめ
必要なタイミングで買うのが吉
マイホームは市況のみで購入するのではなく、結婚や出産、子供の入学や本人の転職、親の介護などさまざまな理由で購入するものです。
必要なタイミングは十人十色ですので、2022年が購入タイミングだと思ったら、市況に左右されず購入しましょう。
オミクロン株が増え続けており、まだまだ気を抜くことはできませんが、感染防止対策をしっかりと行いながらマイホーム探しをしてください。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2022年1月11日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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