トヨタ自動車が初めてGMを抜いて米国自動車販売で首位となりました。しかし、過去を振り返ると喜んでばかりもいられません。米国で日本製品が目立つようになると、為替を円高に引っ張られるなど、激しく叩かれた黒歴史を思い起こさせます。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2022年1月6日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月分無料のお試し購読をどうぞ。
トヨタ、米国自動車販売で初の首位に
トヨタ自動車の2021年の米自動車販売台数が、GMを超えて初の首位となったことがわかりました。
100年近く首位の座を守ってきたGMの米国内セールスが、とうとう陥落したということで、本邦では大喜び。トヨタの株価も大きく上昇して、それを歓迎しています。
ただ、過去の本邦からの自動車輸出を巡る米国とのいざこざの歴史を知るものとしては、GMを抜いて米国販売1位がトヨタという状況を喜ばない向きも相当いそうです。
なにか良からぬことが起きないか、非常に心配になるものです。
過去にひどい制限を受けた日本車の対米輸出
80年代、日本車は米国で非常に評判が高く、対米輸出は驚くほど大きなビジネスになりました。
しかし、米国の自動車産業はこれをまったく良く思わず、デトロイトの労働者が日本車をハンマーでぶっ叩いて壊すとった衝撃的なイベントもありました。
米国の歴代政権は、日本車の対米輸出に台数上限を決めるなど、凄まじい制限を加えてきた歴史があります。
しかし、その後、日本の自動車メーカーは現地生産に尽力することで、米国で販売する自動車の大部分を米国内で生産することにしているのが実情で、状況は80年代とは大きく変化しています。
トヨタもこうした米国現地生産をいち早く実現したメーカーのひとつで、トランプ政権下では、米国での自動車生産で雇用を確保することを約束し、テキサスには巨大な工場も稼働しています。
そのため、単純に日本から自動車を輸出するメーカーではなくなっているのが現状です。
Next: レクサスほか高級車は日本から輸出。調子に乗ると為替で制裁される?
調子に乗ると為替で制裁を受ける?
ただし、レクサスのような極めて高い商品精度を要求される高級車は、依然として日本から輸出しているのもまた事実。
今さら為替レベルのことをとやかく言われて「円高」を余儀なくさせられるというのは、さすがに時代錯誤ではないかと思う次第ですが…。
果たして、バイデン政権はどう思うのかが気になります。
トヨタが首位になったというのは、米国の自動車メーカーで製造に携わる労働者にとっても、決して面白い話ではありません。
ですから、支持率が低下しつづけているバイデンがこのあたりを気遣う動きを見せると、とても嫌な状況です。
米国の民主党政権は、過去40年近く「日本」と「自民党」に厳しい対応
過去40年近く、米国の民主党政権は、日本と自民党政権にめっぽう厳しい対応をとってきています。
クリントン政権下では、本邦半導体産業をぶち壊しにされていますし、為替についても相当に厳しい要求があったことが思い出されます。
今年は寅年ですが、24年前の寅年の年には、本邦金融機関の破綻危機も手伝って、日銀はドル売り円買い介入まで行っていますが、当時クリントンは大統領としては珍しく、明確にドル安を志向していることを口にしており、背後に米国の姿があったのは間違いない状況でした。
オバマ政権でも、リーマン・ショック後は「ドル安政策」を公然と掲げて、実際にその後、円高が到来しているのが現実でした。
米国の民主党政権というのは、もっとも物を言いやすい日本に多大な要求を突きつけるというのが、もはや伝統芸になりつつあるようです。
そして、バイデン政権がドル高・円安にいちゃもんをつけることで、円高報復を受けることなどないのかどうか、ひどく気になるところです。
Next: バイデンは中間選挙を控えた大事な時期。人気取りでトヨタを潰す可能性
人気取りでトヨタを潰す可能性
トヨタの全米販売1位を別にしても、連邦債務を少しでも減らしたい米国が、中間選挙を控えてドル安を再志向してくるのは、時間の問題とも思われます。
トヨタの件が、そのちょうどいい「きっかけ」にならないことを祈りたいところです。
2月以降になってみたら、なんだかよくわからないが、やんわり円高が進むことになった……などということになると、米国の圧力を心配したくなります。
若い人たちは、この手の話をすると「本当かよ」と疑うものですが、日米の為替の歴史というのは、事程左様に政治の影響を受けるものなのだという点は、しっかり覚えておいていただきたいものです。
昔から相場に関わっている人間は、今回のトヨタの報道を見ると皆一様に「円高になるんじゃないの?」という疑問がよぎる状況です。
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2022年1月6日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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