日本は世界で一番「社会主義」だと言われている。岸田首相は「新しい資本主義」を唱える前に、資本主義の基本からやり直さないと長期的ビジョンを描けないのではないだろうか。(『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』房広治)
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誰が首相になっても役人トップは変わらない?
アメリカの共和党と民主党の主張の違いは、小さな政府か大きな政府というぐらいで、どちらも資本主義が根付いている。そのため、平等よりもMeritocracy(実力主義 )で、結果次第で報酬が違うのは当たり前という考え方が浸透している。また大統領が民主党から出るか共和党から出るかで、政府の役人のトップまで入れ替わるシステムである。
ヨーロッパは、アメリカとは違い、社会主義すなわち結果平等を求める党が幅を利かせている。そして、官僚は政権政党が変わってもほとんど変わることがない。政治家が選ぶのは大臣や副大臣クラスまで。事務次官は、それぞれの官僚組織が自分たちの尺度で人選をしている。
日本が「社会主義」と言われる理由の1つが、官僚システムの中である程度、事務次官候補が決まってくることにある。そしてキャリア官僚はどこの国もそうだが、金持ちのことが嫌いである。自分たちこそがエリートで、ビジネスで成功した奴らよりも自分たちの方が大学での勉強はできたという意識が強い。
しかも、日本では、不動産バブルが弾けた後の30年間を見ると、爆発的に成功した新興企業の数があまりにも少ない。そのため、貧富の差は、ヨーロッパと比べても実は小さいのである。もちろん、この30年間に新興企業が世界的に成功した中国やベトナムよりも、貧富の差は少ない。
そのため、日本は世界で一番「社会主義」と言われるのである。
安倍元総理は経産省、岸田首相は財務省官僚を登用
最近、YouTubeを見ていると、岸田首相は資本主義が分かってない、新資本主義っていう格好の良い言葉だけで中身がないのでは……というような批判の動画を推薦してくる。
確かに金融資産に税金をかけ、富の分配を公平にするといったイメージが強すぎて、資本主義ではなく社会主義を目指しているのではないかと言われている。
これは、安倍総理時代には、経産省出身の今井氏が実権を握って、伝統的な経産省的な考え方で政策立案をしていたのに対して、岸田首相が開成高校・財務省出身官僚を登用していると言われていることにも表れている。
すなわち、財務省出身者は、どこかの段階で国の「放漫経営」に国民が気づくと、ハイパーインフレが起こり、金利が上がり、国債が暴落し、国債を大量に抱えている金融機関が潰れてしまうという悪循環を恐れているのである。
この恐れ恐れやっている政治体制と、一気にインフレになろうが、貧富の差ができようが「経済にカンフル剤を!」と言うのが40代・30代のYouTubeなどで活躍していらっしゃる若きオピニオンリーダーたちであり、国民民主党であるように、私からは見えてしまう。
面白いのは、国民民主党の玉木党首は、財務官僚出身であるにもかかわらず、伝統的な財務官僚の考えとは違うところである。インフレになる前に、コロナ禍ではまずは、大量に財政支出・金融緩和に両方をやって、全体の金持ち気分をあげて、税金で取り戻すという考えである。この方法も、早くやらないとインフレが起こってからではやりにくくなってしまう。
この日本の政府のスピードの遅さは、首相が変わっても、変わらないのが不思議でしょうがない。
Next: 帰国後の隔離生活で実感。場当たり的な岸田政権
科学的根拠のない場当たり的な岸田政権
このメルマガを書いているのは1月13日(木)である。10日の月曜日(祝日)に羽田に到着し、羽田空港に隣接するホテルで6日間隔離生活をしている。私が隔離生活をしていると聞きつけた日本人の友人が、WhatsApp(※編注:メッセンジャーアプリ)で「監獄生活はどうですか?」とご機嫌伺いをしてきた。
インターネットを見てみると、日本の水際対策について、散々な意見が並んでいる。
例えば1月11日(火)に到着した方は、なんで、こんなに空港で多くの紙を提出させるのかという、誰でも不思議に思うことを書いている。到着からホテルまで連れて行かれる行程で関わっている人の数がすごい。ホテルに到着するまで、どこに連れて行かれるか教えてもらえない。医療従事者に対しては、濃厚接触者でも毎日検査をすることで、陰性であれば、普通の生活ができているのに、帰国者は陰性が何度続いても14日隔離という矛盾、科学的な根拠のなさ……などなど、場当たり的な政府の対応、長期的な視点のない政策の変更について、かなり不満が出てきている。
今年の参院選では自民党が大勝して岸田政権が長期政権になると主要メデイアが報道しているのと、この国民のポリシーのないコロナ対策への不満が、なぜ両立しているのか。それが私にはよくわからない。
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『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』(2022年1月14日号)より一部抜粋
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