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FOMC前夜に「焼け野原」パウエルショックで日米株価はどう動く?利上げより重要な“QT”の手段=脇田栄一

24日のダウ平均は一時1,100ドルあまり急落し、それ以上に戻して終わる乱高下を演じた。きょう25日の日経平均株価終値は前日比457安の2万7,131円となった。ここからどう動くか。問題はFOMC&議長会見ということになるのだが、このマーケットからの突き上げ(突き下げ?)の中で、量的引き締め(QT)の具体案を発信するのか否か。利上げやその幅(25-50bp)も重要だが、ここではそれ以上に重要なQTについて解説する。

プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。

FOMC直前に「焼け野原」

連日続落が続いていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?信用軽くし維持率にはくれぐれもご注意ください。

なんて儀礼的な挨拶を軽く言える状態ではなくなってきたわけですが(失敬)、少なくとも自分は昨年から1月下旬は焼け野原(かも)と何度も連呼してきたわけです。

問題はFOMC&議長会見、ということになるのだが、このマーケットからの突き上げ(突き下げ?)の中で量的引き締め(資産縮小、以下QT)の具体案を発信するのか否か。利上げやその幅(25-50bp)も重要だが、ここではそれ以上に重要なQTについて書きます。

NYダウ 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

発信側と受信側での認識ギャップ

議長やボードメンバー、あるいはそれを取り巻く元FOMCメンバーの発言を見ていて思うのは、彼ら自身は政策ツールを把握しているので、安心感を伝える形でQTスケジュールを発信するかも知れないが、市場参加者(ここでは簡素に投資家)はそのツールの構造を知らない。

受け取る側からすれば、「(よくわからないが)結局、QTは実行されるのか」といった結論にしか目がいかない。

つまり、金融政策とマーケットの関係によくみられる現象だが、発信側と受け取る側に認識のズレ(gap in perceptionとか)があるわけです。

これによる市場の反応を予想するのは難しい。

QT(量的引き締め)の手段は?

前回、(QTを実行するにあたって)自然償還か債券売却(持ち切りか売り切り)か、とお伝えしたが、FRBは昨年導入した常設レポファシリティ(以下SRF)をQTに活用しようとしている。

SRFとは?簡単に説明すれば、常態化していたFedのレポオペを常設化し(Standing)、取引先を拡大したもの。

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QTを実行するにあたり、2018年10月は保有証券のロールオーバーを持ち切り(償還)に変更し増額したが、マーケットを冷やす格好になった(拙著『為替の基本とカラクリがよ〜くわかる本[第2版]』7‐6「QEからQTへ」参照)。

なので今回、議長が言っているように持ち切りはない。かといって売り切り(債券売却)についても、前回お伝えしたように、マーケットはさらなる打撃を受けることになるだろう。これについては前例すらない。

そこで、今回はオペ(レポやアウトライト)ではなく、スタンディングファシリティ(ここではSRF)を活用しようというわけである。

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パウエルは発信に失敗する?FOMCで株価はどう動くか

まぁ、以下はあまりブログでは言わないことだが……オペは、入札や実施日、総額はFRBが決定する。それに対してスタンディングファシリティ(ここではSRF)は、金融機関がイニシアティブをとる、といった違いがある(金融機関側からの申請によってFRBが資金要請に応じる形になる)。

つまり、QT実行にあたってSRFを活用すれば、金融機関は手元キャッシュを抱える必要が薄れるため(保有国債がいつでも換金可能)、手厚い準備(ブタ積みね)が低くなり、超過準備(俗にいうFRBのバランスシート)が減るという目論見。

これをパウエルはどこかで丁寧・的確に発信しなくてはいけないのだが、現時点では(コミュニケーションに)失敗する可能性が高い。

前回お伝えしたように、QTに関してはマーケットの反応を考えたとき、漠然とした発信で逃げ切るしかない。高インフレが重要で、引き締めの発信をしなくてはいけないのであれば、政策金利の引き上げだけに留めておくべきだし、現在のマーケットの続落はそれを訴えている。

昨年から1月下旬は「焼け野原(かも)」と私が言っていたのは、これら上記の要因と、その他さまざまな要因を重ねた結果の発信だった。その中に、パウエルの受け身な発信(後手)あり、そう考えればマーケットの圧力に屈するのがベスト、だと言える。

金融政策も近年、金利政策と量的政策に分けて考えられていたでしょう?本当にザックリ言ってしまえば、両方、ダブルで発信してくれるな、という市場の値動きなわけで、これに議長がどう応じるか、といった話。

QTについて述べるとすれば、漠然と煙に巻くと予想。が、しかし先延ばしを重ねてFOMCのたびに毎回こんな調子ではね。また更新します(※投資は自己責任でお願いします)。

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image by:Federalreserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons

本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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