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日銀は本当に円安容認なのか?ドル円相場を歪める黒田政策の矛盾=角野實

円が安くなった主な要因は、一番の要因はドルが高くなったことで、2番目の要因は金利差を利用した一般投資家のドル買い円売り、日本政府、財務省の米国債購入のドル買い円売りと考えればいいでしょう。その証拠に日々の動きは米ドルが上昇した分だけ、円が下落を日々していただけの話です。そして、直近ではドルが大きく下がったので、円はその分、高くなっただけの話です。黒田日銀総裁は「円安は日本経済にプラス」という考え方を示していますが、現在の政策をみると本当に円安容認なのか疑問が出てきます。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)

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※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2022年3月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。

エネルギー価格の見通しを外しまくる黒田総裁

日銀のドル円の相場観というのは、「結局、金利差によってドル円相場は決まる」という考え方がメインになると思います。その根拠は、過去の論文などを見ていると、その考え方が蔓延しているように感じるからです。

黒田総裁は先日の会見にて、「日本経済は円安によって日本がインフレに陥る懸念は少ない」と表明をしています。

しかしながら、2014年、「原油価格はもっと上昇する」と言って追加の異次元緩和を実施しました。その直後に原油価格は大きく下落しています。

つまり、インフレの主要素であるエネルギー価格の見通しについては、ほとんど見通しを外しているのが実態です。

そもそも2013年から金融緩和を続けて、まるで結果を出していない機関の言質を信じるわけがない……というのが本音です。まるで結果を出していない、と言うと語弊がありますが、うまく行っていないのは確かなことです。

その日銀が連続指値オペを表明、結果として2014年の安値にツラを合わせるまでドル円相場は円安になりました。

ともかく金利を下げるオペを行うわけですから、金利差でドル円が決まっていると考える日銀は、円安にしたいのであろう、ということなのでしょう。

その見通しというのは日本が円安になっても、インフレの影響を受けにくい環境にある、ということなのでしょう。

この結果をみると、今後も円安が進行をする、という考えにほとんどの投資家が陥ることでしょう。

ドル円相場はシンプル。ドルの価値が下がれば円高に

ドル円相場が金利差で決まっているか否かは議論の余地があるとして、ドル円の基本というのは、「ドル÷円」の計算式によって決定するのが私は基本だと考えています。

つまり「ドル÷円」によって、上記の日銀の決定によって、今後、円の価値は下がるということになります。その一方で、ドルの価値が上昇すれば、さらなる円安が進行することでしょう。

一方で、円の下落以上にドルが下落すれば、ほとんどの投資家の期待を裏切るということに着目して欲しいと思います。

つまり、円が2%下落しても、ドルが3%下落すれば、分母の円の方が大きくなりますので、「ドル÷円」の答えの値は小さくなる。すなわち、円高になる、ということになります。

Next: ドルは安くなるのか?前年の動きにヒント



ドルは安くなるのか?

では、ドルはどうか?ということです。

ドルは2020年4月にコロナショックによって金融緩和の拡大とゼロ金利の導入を決定しています。その後、8月まで金利は低下、ドルも安くなりましたが、その後は経済の拡大によって史上最低金利をつけたのちに上昇をしています。

2021年も2020年がその動きが大きいので、4月に頭を打ち、8月底という形です。その後はインフレ懸念によって金利が高騰をしています。

マーケットの基準というのは、前年同月同日と比較して、今年はいくらの上下があるか、ということですので、去年もその幅が大きい以上、今年もその通りに動く可能性が高いということが言えると思います。

そして現在のドルは、アメリカの景気の上下動ではなく、金利の上下動で動く傾向が強いのですから、ドルの金利が4月以降に下がる可能性は極めて強いことからドルが下がる可能性は高いと論じることができるでしょう。

どうみても4月以降にドルが下がるので、円高になる可能性もあるのですから、日銀は日本経済に影響はないと判断をしているのですから、日本の金利を低く抑えることによって、円安を4月以降も促進したいという意図があるのでしょう。

しかし、黒田日銀がやったことは、最初の異次元緩和だけが「まとも」な政策であって、ほかの追加緩和やマイナス金利導入などがほとんど効果らしい効果もなく終わっています。

このことからも、その効果には相当な疑問が残ると言われても、黒田さんは否定ができないと思います。

どちらにしても、4月から円高というシナリオに少し陰が差したということを、念頭に置かなければいけません。

日本の円安というのはドルを買うという行為が永続しなければ、長続きをしない、ということも忘れてはいけません。

円安が日本経済に影響をしないと中央銀行総裁が表明しているのに、円安が進行するのは、話が矛盾していることに誰も気づいていません。

つまり、今の円安は円を売ってドルを買うというスポットの動きによって論じられているだけで、円安にて日本経済があまり影響を受けないのであれば、いずれ円は上昇するという意味になります。

いつも言う、短期的な効果と長期的な効果の区別ができていない状態になるのかな、とは思います。このような混乱の原因をつくる黒田さんがいったい何をやりたいのか。さっぱりわかりません。

内部要因的には2014年の円安のピークに指値を残していた投資家の指値が全部、入ったことになります。これは金や原油、天然ガス、この間、ご紹介したニッケルなどと同じことで、内部要因的には反落ということになります。

Next: ドル円を語るのにドルの分析をしないアナリストも



ドル円を語るのにドルの分析をしないアナリストも

久しぶりにアナリストからのメールをみましたが、全員、円の分析ばかりして、ドルの分析は一切しないという、結果は見なくてもわかるというような内容でした。

ドル円というのは「ドル÷円」の計算式の結果の話であり、双方の国の分析をしなければいけないのに、円ばかり分析をして、ドルが高くなる、安くなったときの分析は一切なし。これが著名な為替、FX専門家のレベルです。当たるわけがない、と私は思います。私自身も、人様のことを言えた義理ではありませんけど。

円が安くなった主な要因は、一番の要因はドルが高くなったことで、2番目の要因は金利差を利用した一般投資家のドル買い円売り、日本政府、財務省の米国債購入のドル買い円売りと考えればいいでしょう。

その証拠に日々の動きは米ドルが上昇した分だけ、円が下落を日々していただけの話です。

そして、直近ではドルが大きく下がったので、円はその分、高くなっただけの話です。つまり日本からの米国債や米国資産のドル転の円売りが枯渇したことを示したのです。

そのドルが下がった要因というのは、やはり今週末に予定されている雇用統計をにらんでのことになると思います。

今週末の米雇用統計に注目

何度も言いますが、基本は、ドルは米国の雇用にリンクをしています。FRBが「米国は好調」というのは、雇用が好調といってもよいわけですが、先週から失業保険申請者数が増加傾向になっています。FRBの法律定義の仕事は、金融の安定と雇用の拡大であり、雇用の拡大というのはイコールの関係としてドルを高くすること、ドルの信認性にあります。

ですから、貿易決済通貨として、ドルが使用されなくなりドルの信認性が下がることはアメリカにとって致命的エラーになるのですが、率先してロシアの外貨準備を差し押さえ、SWIFTから排除、何考えているのかさっぱり理解できません。

そんなことをすれば人民元やルーブルの使用率が上昇するだけの話です。そして、貿易決済にはルーブル建てを求められるとG7は拒否……とか、本当にわけがわからないことばかりやっているわけです。

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2022年3月配信分
  • 元に戻ったのだろうか?(3/30)
  • 日銀は円安容認なのか?(3/29)
  • 円安が支配するマーケット(3/28)
  • 少し未来のことを考えればなんとなく見えることがある(3/27)
  • 金利高騰中\(◎o◎)/!(3/25)
  • やっと下がった、と、大国間の戦争の歴史(3/24)
  • ようやく実質金利が上昇し始めた・・・と「円相場」の解説(3/23)
  • やはり因果関係が大事だと思います(3/22)
  • マーケットの流れ(3/21)
  • なぜ株価は上昇するのか?(3/20)
  • きのうの本日の解説を検証してみましょう(3/18)
  • 本日のマーケットの見方、を解説します・・(3/17)
  • たとえば中国最大手不動産業者エバーグランデはどうなったのか?(3/16)
  • 正念場の金融市場(3/15)
  • アメリカの凋落 ―目の前に起こっている現実を間違えてはいけませんー(3/14)
  • エネルギー価格はまだまだ高い(3/11)
  • 今の状態を整理してみましょう(3/10)
  • もっと冷静にマーケットをみるべき(3/9)
  • 無茶苦茶な経済情勢(3/8)
  • なぜ金利が大事なのか? 整理してみよう(3/7)
  • 石油ショックの意味(3/6)
  • マーケットも、考え方も偏りすぎはよくない(3/5)
  • ウクライナはオラウータンの集団行動と同じ(笑) そのほかユーロなどもりだくさん(3/4)
  • 2016年から続く「強気相場」の終了(3/3)
  • やはり3月1日はあたまになる可能性? とウクライナはやっぱり茶番(3/2)
  • 露中銀のドル使用停止の意味(3/1)

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2022年2月配信分
  • おそらく全部茶番。 ウクライナ侵攻(2/28)
  • ロシアのNATO東方拡大阻止の意味(2/26)
  • 不況が予測されるのになぜマーケットは戻ったのか? わからないときは基本に立ち返る(2/25)
  • なぜ対ロ制裁は意味がないのか?(2/24)
  • とんだ茶番劇のウクライナ情勢(2/22)
  • わからなければ少しの未来をみればよい(2/21)
  • 新しい資本主義という本を読んでみた(2/18)
  • 実質金利が上昇(2/17)
  • ロシアの侵攻懸念に関する類推はいかがでしょうか?(2/16)
  • 原油にストラドルが入ったことを確認(2/15)
  • ウクライナはどうなるか?(2/14)
  • ロシアは資源大国になろうとしている、情報錯綜のウクライナ情勢の解説(2/13)
  • インフレ助長と通貨の解説(2/11)
  • 本日はインフレ指数の発表 予測されていることは怖くない(2/10)
  • アメリカへの不安(2/9)
  • 来週からおかしくなる可能性があります(2/8)
  • ウクライナ情勢はどうなるのか? インフレの行方は? マーケットの行方は?(2/7)
  • ISM非製造業指数の解説(2/4)
  • ドルが強くなるお話しとADP雇用(2/3)
  • ISM指数の解説(2/2)
  • なぜ月の後半に株価は失速するのか?(2/1)

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image by:Asian Development Bank Wikimedia Commons [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons

角野實のファンダメンタルズのススメ』(2022年3月29日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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