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4年で80万円増!“所得ターゲット”へと転換した「アベノミクス2.0」=藤井聡

安部総理は昨年9月、新アベノミクスにて「600兆円経済の実現!」を宣言されました。これは、理論的には「NGDPターゲット」政策を宣言したことを意味します。

NGDPターゲットとは、「名目GDPターゲット」というもので、まさに、名目GDPの数値目標を立てる政策。これは「名目所得ターゲット」とも言われますから、平たく言えば、単なる「物価ターゲット」ではなく、「所得」ターゲットを宣言したということになります。なぜなら、名目GDPは、国民の様々な所得の合計値でもあるからです。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年5月10日号より
※本記事のタイトル・リードはMONEY VOICE編集部によるものです

安倍総理に勝算あり?「4年後に国民所得を約80万円増やす」宣言

600兆円経済の実現を政府が「可能」と考える根拠

現在のGDPはおおよそ500兆円。これを2020年頃(今から4年後)に600兆円にするということはつまり、「1.2倍」にするということです。

そして、現在の国民所得は一人当たりおおよそ400万円程度ですから、これを1.2倍にするということはつまり、年80万円の所得の増加を意味しています。つまり安部総理は、今から4年後に国民所得を約80万円増やすと宣言したという次第です。

そんな事は可能なのか――?と疑問に思う国民も少なくないのもしれませんが、政府は今、それは間違い無く「可能」だと考えています。

下記のグラフは、政府がその様に考えている根拠です。これは、内閣府の将来予測シミュレーション結果です。

このグラフに示したように、特に大きく景気対策しない「ベースケース」のまま推移すれば600兆円経済は実現しないのですが、順調に経済成長した「経済再生ケース」では、2020年頃にちょうど600兆円に到達することが試算されているのです!

Next: どうすれば「経済再生ケース」で成長できるのか?答えは明白



600兆円経済の実現には「財政政策」しかない

後は、どうすればベースケースではなく、経済再生ケースで、成長できるのか……なのですが、その答えは明白です。「財政政策」しかありません。

そもそも、物価ターゲットは日銀の目標で、その手段は「日銀の金融政策」でした。ですが、所得ターゲットは、(日銀の金融政策のサポートを受けながら掲げる)「政府の目標」なのです。そして、その手段はもちろん「政府による財政政策」なのです。

それは例えば、サマーズが今年の2月のフォーリンアフェアーズに掲載した、これからの経済政策を考えるうえで決定的に重要な下記論考での議論からも明白です。

長期停滞にどう向き合うか――金融政策の限界と財政政策の役割(導入部のみ)原文はこちら

彼は、(中央銀行による)「物価目標(インフレターゲット)」よりも、「NGDPターゲット(所得ターゲット)」が今、求められていると指摘。そのうえで、上記サブタイトルにも明記されている通り、「金融政策だけでは限界。だから財政政策が必要だ」と論じているのです。

つまり、「理論的」に考えるなら、NGDPターゲットを掲げた安倍内閣には今、『「財政政策をしない」というオプションは存在していない』と言わざるを得ないのです。

事実、安部総理は、このGW中のEUへの外遊を通して、各国に積極財政についての国際協調の調整を図らんと、大きく努力した様子が報道されています。

安倍首相 財政出動への協力要請、独首相 慎重姿勢崩さず – News i TBSの動画ニュースサイト 2016年5月5日付

この総理の努力の背景には、「NGDPターゲット論」があったからだと解釈することができるでしょう。その意味において、安部総理のお考えはこの点について完全に正当であると筆者は考えます。

Next: 財政政策を中心とした「アベノミクス2.0」へ。日本の命運は――



財政政策を中心とした「アベノミクス2.0」へ

いずれにせよ、総理が600兆円経済実現を宣言された今やもうアベノミクスは、「物価」ターゲットを掲げた日銀の金融政策を中心とした「アベノミクス1.0」から、日銀と協力しながら、「所得」ターゲットを掲げた政府による財政政策を中心とした「アベノミクス2.0」へと、大きく転換しているのです。

後は、海外の緊縮派の急先鋒たるドイツをはじめとした、国内外の様々な「(文字通りの)抵抗勢力」による様々な抵抗を乗り越え、600兆円経済を実現するための「財政政策」が、今、果たして本当に実施できるのか否か――日本の命運は、この一点にかかっていると言っても過言ではないと、筆者は考えます。

その方向へとわが国が歩みを進められるか否か――それは、5月下旬の伊勢志摩サミットやその後のわが国政府の政策展開、ならびに、その後の国政選挙で与党を中心とした各党が一体いかなる経済政策を主張するのか――そういったもの一つ一つを見定めることによって、少しずつ明らかになっていくでしょう。

日本経済を再生させんとする安倍総理に、そしてわが国日本に幸運が訪れますよう――心から祈念申し上げたいと思います。

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