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5月相場は「円高株安」へ。雇用統計とISM製造業指数で見えた“調整局面”入り=角野實

相場の先を読むときには、個人的感情や願望を取り外すことが大切です。まっさらな視点で米国の最新統計データを分析すると、5月のマーケットの動きが見えてきます。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)

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※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2022年5月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。

未来予測のベースは「因果関係」

未来予測の基本は因果関係です。財布に100万円があるとき、1万円を使えば、残りは99万円になる……というような、小学生でもわかるような形にしなくてはいけないと普段から私は思っています。

つまり、「当たり前じゃないか」というような結論を、なんとなくではなく理路整然と出さなければいけないと私は思っています。自分の個人的感情や願望が未来予測に入ってしまうのは、単なる「勉強不足」だと私は考えています。

世界のどこかに必ず、今のマーケットを論理的(ロジカル)に考え、平然と明日や未来のマーケットを予測している人間はいるはずで、その辺りまでの水準に達するとストレスはないだろうと思いますので、その水準を目指しています。

最終的には、確率を100%にしたいという、できっこない目標を掲げているのですが、「その道は険し」だと思いますけど、できっこないことをやってこそおもしろいわけであって、皆ができることをやってもたいしておもしろくもないとは思います。

このメルマガを愛読していただいている皆さんも、ファンダメンタルズの見方について、「こんな風に見ればいいのか」と思う部分はたくさんあると思います。数字の流れでの確率論であるテクニカルよりも、「よほど正確に未来を読めるよね」と感じる方が多いことを、角野は願っています。

5月上旬の「指標集中日」を終えての予測

まず、雇用統計です。

出典:TRADING ECONOMICS

総就業者数は減少しています。

新規雇用人数は前月並みになりますが、これは季節調整を入れたもので、実質、失業者を合わせると総雇用人数は減っているという事実に着目して欲しいと思います。

つまり、今回の雇用統計は「新規雇用に関しては悪い」という、良いのか悪いのかの二択で言えば「悪い」と言わざるを得ません。

しかし、一方で、今までさんざんに言ったように、米国の雇用情勢は完全雇用状態にあり、これ以上の雇用増に多くを期待すべきではない、という論点もあります。

ですから、今後はインフレに見合った賃金上昇があるのか、ということが問題になります。

Next: 「悪かった」米雇用統計。5月の金利と株価はどこへ向かう?



「悪かった」米雇用統計

出典:TRADING ECONOMICS

時給は先月と比較して0.3上昇したのに対して、

出典:TRADING ECONOMICS

インフレは前月比1.2%上昇しています。

賃金が0.3しか伸びないのに対して、物価は1.2上昇すれば、生活は苦しくなります。それだけのことです。

雇用は「ドルの強弱だよ」と当メルマガで何度も言っている通り、今月のドルはドル安になる可能性が高いということです。

5月の株価はどう動く?

では、株価は「ISM製造業指数だよ」と何度も言っています。

出典:TRADING ECONOMICS

ISM製造業指数が前月と比較して下がれば、NYダウも前月と比較して下がるよ、と言っています。下がっているのですから、今月も安い可能性が高いよ、と言っているのです。

金利はどう動く?

では、金利は?

出典:TRADING ECONOMICS

4月27日から5月4日にかけて、5.37から5.36に下がっています。

金利は住宅ローン金利にリンクするという話を、上記のものと比較してあまり説明をしていませんが、資金需要の最大のものは米国でも日本でも住宅ローン需要になります。

つまり、モゲージローン金利が上昇すれば金利も上がる傾向があり、反対も然りになる傾向があると言っているのです。

金利が少し下がり始めているのですが、これはテクニカルでいえば天井保合いの可能性のあるチャートである、ということです。

Next: 米国経済は良い?悪い?統計データをもとに予測する方法



米国経済は良い?悪い?

では、GDPは?

出典:TRADING ECONOMICS

ここで、思い出してほしいのは価格の構成要因です。価格の構成というのは基本的には、(1)ドル、(2)金利、(3)GDP になるわけです。

ドルに関しては、雇用が新規雇用人数も、賃金上昇もネガティブな結果になっている、という事実に着目です。ただし、注意は、4月のインフレ指数の発表はこれから、という点です。CPIの発表によって、賃金上昇がインフレ率よりも高い場合には、ドルの価格がニュートラルになるということです。新規雇用は悪材料のまま変わりませんが、賃金上昇がネガティブからポジティブに変化する可能性もある、ということです。

株価に関しては、ISMの通りです。注意点は、月の半ばに発表されるISM製造業の先行指数とされるフィリーやエンパイア指数の通りにも株価は動くということです。

金利は、反転する可能性を念頭に置かなければいけない、ということです。

GDPは、ずっと言い続けているように、「今後も悪い」ということになります。

統計データから出た予測は「円高・金利安」

ドル円は、ドル÷円の計算式で成り立っています。ドルが安くなるということは、これを過去の経緯からさかのぼると、ドルが上昇するたびに、円が売られていたので、ドルが反転すれば円が上昇になる可能性が高い、ということになります。

つまり、今までは「ドル>円」で、ドル÷円を計算すればその解は大きくなる、つまり円安になりました。しかし、今後は「ドル<円」になり、ドル÷円の計算の解は小さくなる、円高になるだろうな、と予測しておけばいいのです。ドルストレートも方向性が変わるよね、ということです。

株価は書いている通り、ISMの通りです。

金利は、利上げをして、先週も10年物国債が新値を取りました。しかし、住宅ローン金利と金利がリンクしているとすれば、そろそろですね。ということがある程度は見えています。

GDPは低下です。

では、これらを価格構成要因で考えていきます。

(1)ドル安、(2)金利安、(3)GDP安 となります。

それぞれ株価にとって、(1)ポジティブ(2)ポジティブ(3)ネガティブということになります。ただし、ファンダメンタルズを支配するGDPが低下傾向になりますので、戻り売りの流れは変わらないということになります。ただ、4月の下落幅よりも、緩慢になるかもしれない、ということがあります。

FRBの狙いは「バブル潰し」

しかし。一番の大元の下がる原因というのは「株価がそもそも高すぎる」ということです。

去年と比較をすればダウは5%安ですが、2年前と比較すると30%も高いのです。その間、経済は5%しか成長していない。それを考えると、この25%の埋め合わせはいつ来るか?という問題になります。

FRBはそれを緩慢に処理するために、いろいろと一所懸命にやっているだけの話で、本音は株価が適正な価格に戻ってもらいたいだけの話です。

要するに「バブル潰しをしたい」だけの話です。

Next: データから見えた事実は株価の「調整局面」



データから見えた事実は「調整局面」

このように考えていくと、来月には新たな指標が出ますので、5月はこの路線を基本にマーケットが動くと考えています。

たとえば、金利は利上げをしたのだからもっと上がるだろ、と皆さんは思っているかもしれませんし、私もそう思っている部分があります。

しかし、住宅ローン金利は高止まりしていますので、これが調整になるのか、調整して一段高になるのかはわかりません。しかし、反転の可能性はあるよね、と今までの傾向からは見えることなのです。

ここに私の相場観は一切、入っておらず、金利はたぶん、まだまだ高いよね、という一般の方とはあまり変わらない相場観をもっていますが、データから見える事実は調整、ということなので、ここにはそう記しただけの話です。

5月のマーケットも、これで皆さんにもある程度、見えてきたかと思います。

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2022年5月配信分
  • 5月のマーケットはどうなるのか?(5/9)
  • なぜ6/1からQT開始なのか?(5/7)
  • 雇用統計後のマーケット(5/6)
  • 共感のウクライナとFOMC(5/5)
  • FOMCと労働市場(5/4)
  • 黒田総裁発言の真偽とISM製造業の解説(5/3)
  • 抑止論は破綻したのか、新しい道へ進むのか?(5/2)

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2022年4月配信分
  • 連休中に全体を俯瞰してみてみよう(4/30)
  • 円安のメカニズム(4/29)
  • 4月のマーケットをファンダメンタルズからチェック(4/28)
  • 9月まで小麦の売り渡し価格維持と表明(4/27)
  • フィラデルフィア指数について(4/26)
  • FRB議長の言葉を解析する(4/25)
  • 急落の原因は円高だと思います(4/24)
  • 米FRB議長は「ドルが過熱している」と認める(4/22)
  • 客観的な事実としてドル円は金利差では動いていない(4/21)
  • 資源急落の可能性有。円安も終焉の可能性(4/20)
  • 経済ブロック化への危惧(4/19)
  • 日銀金融政策決定会合に注意(4/18)
  • 自然利子率とマーケット(4/17)
  • 円高になると思う(4/15)
  • プーチンがいうことが絶対のロシア(4/14)
  • インフレはまだまだ進行すると思います(4/13)
  • 今年のパフォーマンスは資源になるだろう、大商品の時代がやってくる(4/12)
  • 現金の価値が高まる社会(4/11)
  • どうやれば侵攻が収まるのか?(4/10)
  • なんかおかしいと感じませんか?(4/8)
  • バイデンはぼろ負けプーチン勝利(4/7)
  • ISM非製造業について(4/6)
  • ドル円のおさらい(4/5)
  • マーケットはある程度見えている、とは思います(4/4)
  • ロシアが西側同盟に楔を打つ、予定通りの行動(4/3)
  • やはり転換してきたマーケット(4/1)

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image by:kentoh/Shutterstock

角野實のファンダメンタルズのススメ』(2022年5月9日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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