「人口が減少する日本で不動産賃貸業は成り立つのか?」。不動産投資について取材を受けるときによく質問されますが、人口減少そのものは賃貸市場には影響がないと見ています。さらに現状では不動産価格が下がる理由を見つける方が困難です。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)
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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。
「人口が減少する日本で不動産賃貸業は成り立つのか?」の答え
先日、FIRE(ファイナンシャルインデペンデンス、リタイヤアーリー)のひとつの手段としての「不動産投資」について取材を受けました。
それにしても毎回よく質問されるのが、「人口が減少する日本で不動産賃貸業が成り立つのか?」という懸念です。
まず誤解してはいけないのが、人口減少、つまり死亡している人の多くは高齢者であり、彼ら高齢者のほとんどは持ち家だという点です。
賃貸物件に住んでいる人が減っているならともかく、持ち家の人が亡くなっても、賃貸市場にはそもそも関係ない人たちですから影響もないわけです。
では、高齢者の死後、その物件が賃貸市場に流れ込んで供給増を招く可能性についてですが、これもかなり低い。
いまの高齢者の世代はまだまだ戸建て志向ですが、戸建ては地方郊外にあり、首都圏でも駅から離れていますから、賃貸物件としては人気がない部類に入ります。
それに、親の古い戸建てを相続した人が、じゃあ古いから(お金をかけて)リフォームして貸し出そう、と考えるような人がどれほどいるのか疑問です。
また、都市部では高齢者にもマンションが人気になっていますが(段差がない、戸締りがラク、庭もなく外壁修繕も不要で管理がラク)、ではそのマンションを相続で引き継いだ人はどう考えるか。
彼ら、つまり高齢者の子どもたちもすでに自分の家を持っていることが多いでしょうから、その物件を相続しても、「貸す」という発想より「売却する」という判断をすると思います。
というのも、やはり一般の人が不動産投資や賃貸経営をやるという発想にはなかなかなりにくいからです。
つまり、どうシナリオを考えても、人口減少そのものは賃貸市場には影響がない。
都市部での単身者向け賃貸経営は手堅い
一方、毎年80万人以上の新生児が誕生し、彼らが成長して進学・就職などで家を出ると、住む場所が必要ですから賃貸需要が発生します。
大学も企業も大都市圏に集中しており、つまり求人も大都市圏に偏るため、進学にしても就職にしても都市部に出てくることになるからです。
そして、未婚や晩婚の増加で単身世帯が増えますし、独身でマイホームを買う人は多くないでしょう。つまり賃貸暮らしです。ということは、単身者の賃貸需要は今後も右肩上がりになるだろうという推測が成り立ちます。
そもそも都市部にはもう土地がほとんどなく、新規に賃貸物件を建てる余力が少ないですから、供給も限りがあります。東京23区はワンルーム条例があるため、やはりなかなか建てにくい。
なので都市部での単身者向け賃貸経営は手堅い。
Next: では、今の価格で買えるか?数年先の不動産相場を読むと…
「不動産価格はこの先、下がるのか?」
では、今の価格で買えるか?
これについては、私個人としては手を出しにくいなあ……と感じています。昔の価格を知っているから余計に、ですね。
では「不動産価格はこの先、下がるのか?」ですが、現状、下がる要素が見つかりません。
コロナで地方郊外へ転出した人もいますが、リモートで仕事が完結できるホワイトカラーなんて、職業全体のほんの一握りに過ぎません。中小企業はまず難しいでしょう。
それに、病院・小売り・物流・工場・土木建設・外食などなど、ほとんどの仕事には「現場」があります。
設計はリモートでできるかもしれませんが、リモートで家は建たないし、リモートでマッサージも歯の治療もできない。
オンラインで済む仕事はごく一部の仕事に限られるでしょう。IT関係とか、営業・コンサル・サポート・教育・メディア関係などでしょうか。
だから多くの人は、通勤(および子どもの通学に)や買い物、あるいは外食などに便利な都市圏に住む。
一方、人件費や資材価格は上昇し、建築コストも増大しています。
大手デベロッパーやゼネコンなど、膨大な数の社員の給与を払わないといけないですから、毎年建て続けないといけない。しかし赤字の値段で売るわけにもいかない。だから不動産価格も下げようがない。
建築コストが上がれば、仮に乗せる利益を削ったとしても、売り出し価格は上昇する。すでに都内では、普通の人が住宅ローンを組める金額以上に高騰しています。
本来、普通の人が住宅ローンを組めない金額になれば、買える人も減りますから物件価格は調整が入るはず。
しかし都心は供給の数が少ないことと、共働きで世帯年収1,500万円以上のパワーカップルが現状は買い支えているようです。
日銀が金利を上げれば住宅ローン金利も上がるため住宅需要は冷え込み、不動産価格は下がるかもしれません。
しかし、金利上昇で家が売れなくなる、車も売れなくなる、企業も設備投資を控える、国債の利払いも増える……という、景気に水を差し国家財政を悪化させる材料を、政府日銀が出せるかというと、それも難しい。
来年、黒田氏が退任して新しい日銀総裁がどういう政策を出すかはわかりませんが、かような理由から大幅な利上げは見込みにくい。
すると日米金利差がますます広がり、さらなる円安となり、原油や資材を含む輸入価格がさらに上昇する。
ロシアのウクライナ侵攻がいつ終わるのかわからず、長期化の懸念もある。制裁でロシア産木材が入ってこない期間が長引く。
するとますます住宅の建築コストが上がり、不動産価格が上がる。リーマン・ショックのような金融恐慌でもない限り、現状では不動産価格が下がる理由を見つける方が困難です。
Next: 価格が下がるのを待ってもチャンスは来ない。本気でFIREしたいなら?
価格が下がるのを待ってもチャンスは来ない
なので「いまは値段が高いから様子見しよう」という判断は、ただ不動産価格が上がるのを待つだけという、単にチャンスを見逃す行為にもなりかねない。
つまり、始めるなら早い方がよいということになります。
ということは不動産投資家も、現状の価格・利回りを受け入れていかなければならないということになりますかね。心理的にはなかなか難しいですが。
それに、株式投資によるFIREは、以前も当メルマガで書きましたが、非常にハードルが高い。
たとえば月10万円貯金しても、年間120万、30年で3,600万円。配当利回り4%としても、年間144万円で月額12万円ですから、余裕ある生活には程遠い。
少なくともこの2倍、年288万円、投資元本にして7,200万円分は欲しいところですが、月20万円を30年間も株式投資に回せる世帯はそう多くないでしょう。これはよほどの高所得世帯でないと難しい。
しかし不動産ならそこまでの資金は不要です。2,500万円で家賃9万円ぐらいの物件を3件購入し(利回り4%程度)、定年退職時に完済できるようにしておく。
40歳で購入なら定年の65歳まで、つまり25年返済ですが、金利1.5%として返済が月10万円。ここに管理費・修繕積立金・固定資産税を加えると、支払いは月約12万円ぐらいかかるから、3件で毎月9万円の赤字です。
しかし頭金・諸経費は各50万円くらいでほぼフルローンも可能なので、合計150万円あればいい。(このあたりは業者が付き合っている金融機関によるため、どの業者から買うかによって異なります)
これで25年後にはローンを完済でき、月27万円の収入になる。合計支出は9万円×12か月×25年=2,700万円。購入時諸経費の150万を足しても2,850万円なので、賃料・金利等の諸変数が固定だと仮定すれば、株よりもハードルが低くなります。
まあ、実際には空室や修繕があり、賃料や金利も変動しますが、株でも配当が変動するので似たリスクはあるでしょう。しかし、やはりローンという他人のお金を使って運用する方が効率が上がります。
そして、特に会社員ほど「銀行がお金を貸してくれる」という特権を持っていますから、その特権をフル活用しない手はないと思います。自営業なんてよほど業績が良くなければお金を貸してくれないですからね。
いま不動産投資を始めるとしたら何に投資すべきか?
それで取材の最後に、「午堂さんがいま不動産投資を始めるとしたら何に投資しますか?」という質問がありました。私なら――
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『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』(2022年7月4日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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